フランス国リヨン及びグルノーブルにて第3回第三国研修を実施しました!

2022年12月7日

2022年10月9~15日にフランス国リヨンとグルノーブルで、約1週間の行程でサラエボ県交通省をはじめとするカウンターパート8名に対する第三国研修を実施しました。

西バルカン地域の公共交通分野の技術協力においては、日本の知見や経験に基づく協力に加えて、近隣の同規模の都市を有する国での知見を学ぶことも大変重要であり、今回の第三国研修は計4回(予定)のうち第3回目です。この研修では、プロジェクトのカウンターパートであるサラエボ交通省等の職員が、他国の公共交通機関の組織と運営に関する実践的な経験と知識を得ることができるようになることを目的としています。

フランスで第2の都市圏人口と公共交通網を有するリヨンでは、まずJICA専門家チームの団員の所属先でもあるSuez Consulting Mobilities社にて、フランス特有の行政構造、モビリティ関連法等について学びました。続いて、リヨン都市圏の都市計画を担当するURBALYONでは、リヨン都市圏における都市開発計画と交通開発計画を組み合わせた最近のプロジェクトとともに、特に公共交通機関が地域の都市開発に影響をもたらし発展を遂げてきたこれまでの経緯について学び、ディスカッションを行いました。

リヨンの公共交通規制当局であるSYTRAL Mobilitésにおける講義およびディスカッションと、KEOLIS社の現場視察は特に興味深いものでした。SYTRAL Mobilitésにおける講義は、当局と公共交通機関サービスの大部分を担う民間事業者であるKEOLIS社との契約、および規制当局と事業者の間の責任分担について詳細な説明があり、参加者全員にとって非常に興味深い内容でした。

一方、KEOLIS社は、サラエボの公共交通事業者と同じ課題、すなわちドライバー不足の問題に直面しています。そのため、KEOLIS社からは、SYTRAL Mobilitésとの契約に従って質の高い公共交通サービスを提供するための状況について共有がありました。さらに、KEOLIS社のデポや修理工場の視察等により、サラエボからの参加者であるCENTROTRANS社との新たなビジネス関係構築の可能性も生まれました。

また、民間事業者のみが存在するリヨンとは異なり、グルノーブルでは、公共交通規制当局(SMMAG)が、M'TAGという公営の事業者のみに公共交通の運営を委託しています。サラエボからの参加者はこの契約形態にも強い関心を持ち、M’TAGは公共交通の運営コストを賄うのに十分な収益が得られないため、モビリティ税からの財源によりSMMAGから多額の補助金を得ていることを学びました。さらにSMMAGからは、市民の足としてのケーブルカーの導入とこの特異な交通機関の開発計画の背景、そして自転車や徒歩移動を促進するための種々のイニシアチブについての説明も受けました。さらに、グルノーブル市内では、自転車やシェアサイクル施設の利用が多いことについて説明を受け、SMMAGの提供するサービスの一つであるMétrovélo(Gare Grenoble)の担当者からは、鉄道駅でのシェアサイクルの概要の説明を受けました。

特に興味深い事実として、フランスにおいては公共交通の規制当局が全ての車両とインフラを所有し、使用およびメンテナンスは、事業者に委託されている点があります。今回訪問したフランスの2都市は地形も異なり、公共交通サービスの組織と運営のアプローチも異なりますが、両都市から得られた知見は、サラエボの公共交通機関の分析と今後の展開に役立つものとなります。また、フランス側から公共交通機関、収入/支出、契約上の合意、および将来の開発計画に係る現状や実用性・洞察についての共有を受け、関係者とオープンなディスカッションを行ったことで、サラエボからの参加者とフランスの各受け入れ機関の双方が緊密にコミュニケーションを行うことができました。

サラエボ交通省等の参加者は、今回の第三国研修での研修内容を、今後のサラエボの公共交通の発展や改善に活用していく予定です。

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第三国研修の様子

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第三国研修の様子