プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)先進的レーダー衛星及びAI技術を用いたブラジルアマゾンにおける違法森林伐採管理改善プロジェクト
(英)Project for improving control of illegal deforestation through advanced SAR and AI technologies in the Brazilian Amazon

対象国名

ブラジル

署名日(実施合意)

2019年12月12日

プロジェクトサイト

ブラジル法定アマゾン

協力期間

2021年7月21日~2026年7月20日

相手国機関名

(和)ブラジル環境・再生可能天然資源院
(英)Brazilian Institute of Environment and Renewable Natural Resources

背景

ブラジル国は、851万平方キロメートルの広大な国土に、世界最大の熱帯林アマゾン地域を擁する森林大国であり、アマゾン流域の熱帯雨林は世界に残された熱帯雨林の約3分の1を占めている。(面積約340万平方キロメートル)。広大な森林が広がっている一方で、1990年代から2000年代初めまでの期間、年間あたりの森林伐採面積は、19,625平方キロメートルに及んでいた(北海道の面積(22,373平方キロメートル)と同程度)。このような状況下、ブラジル政府は、2008年に気候変動関連政策として、森林伐採削減面積目標を設定した。森林伐採面積減少目標値は、1996~2005年と比較して2006~2009年に40%であり、また2010~2013年及び2014~2017年の期間については、それぞれの前期間と比較して30%である。また、ブラジルが国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の目的達成に向けて提案した国別約束草案(intended Nationally Contribution:INDC)によると、温室効果ガス排出削減目標は、2004年当時の温室効果ガス排出量比較で、2025年に37%減少、2030年に43%減少である。2004年以降ブラジルは、アマゾン森林伐採防止・管理行動計画の中で、関係機関と調整しつつ活動を実施してきたことで、ブラジル法定アマゾン地域における森林伐採面積減少を実現している。

上記の目標を達成するためブラジル政府は、連邦、州、市町村の各レベルで、森林法の執行強化を進めてきた。また、2030年までにブラジル法定アマゾン地域における違法伐採をゼロとすること、そして、植生の法的抑制に起因する温室効果ガス排出に係る補償を提供するため、ブラジル政府は政策・対策を強化している。

ブラジル法定アマゾンの熱帯林は、温室効果ガス削減といったグローバルな視点だけでなく、水資源保全、生物多様性保全、持続的な自然資源利用の場としても重要である。また、ブラジル法定アマゾンの一部地域は、ブラジル国経済にとって、また、国内及び国際的な食料生産の場として非常に重要な役割を果たしている。

ブラジル法定アマゾンにおける、開発と環境保全を両立させるため、森林法では、20%までの土地の利用を許可している。利用可能な土地の生産性を最大化することが重要である一方、残り80%の土地を保全することが必要である。ブラジル環境・再生可能天然資源院(Brazilian Institute of Environment and Renewable Natural Resources:IBAMA)は、違法森林伐採活動の厳格かつ効果的な監視を通じて、この森林法を執行するという重要な役割を担っている。

広大なブラジル法定アマゾンにおける違法森林伐採検知のためには、衛星画像の活用が有効である。しかしながら、光学衛星を用いた熱帯林地域の監視は、雨期においては効果的ではない。すなわち、地表面が雲で覆われている時、光学衛星では地表面を観測できない。このような制約要因があるため、IBAMAでは、2016年のJJ-FAST(JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム)の開始以降、JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)が打ち上げた最新のレーダー衛星である陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2))のデータの利用を開始した。なお、ブラジルアマゾン地域は広大であり、違法森林伐採取り締まり活動の実施には困難が残されている。したがって、取締を行う優先・重点地点を選定し、優先的な取締を行うこと、今後伐採が発生しうる地点を早期に予測し、効果的なパトロール実施などにより未然に防ぐことが重要となっている。

目標

上位目標

アマゾン地域森林の保全活動が改善される。

プロジェクト目標

ブラジル法定アマゾンにおける森林伐採の検知及び予測を通じた違法伐採に係る対策・管理能力が強化される。

成果

成果1.違法伐採対策・取り締まりに関する提言が関係機関間で共有される。
成果2.リモートセンシング及び空間情報のデータベースを活用した違法森林伐採取り締まり優先地域を特定する基準が作られる。
成果3.AIを活用した改良森林伐採予測システムが運用される。
成果4.IBAMA内及びIBAMAと森林伐採データに関わる関係機関間との情報共有体制強化を通じて、森林伐採管理及び取り締まりの効率が改善する。

活動

成果1のための活動
活動1-1.違法伐採のドライバー分析および社会経済状況のアセスメントを実施する。
活動1-2.IBAMAの各局と関係機関に提供する、主要ドライバーに係る違法森林伐採対策に関する提言を策定する。
活動1-3.提言事項をIBAMA内及び他の関連機関と共有する。
活動1-4.他の関係機関や大学との協働を強化する。
活動1-5.本プロジェクトの活動内容や成果をアマゾン地域の他国および世界に普及・発信する。

成果2のための活動
活動2-1.ブラジル法定アマゾン用にカスタマイズすることを通じて、JJ-FASTの検出精度を向上させる。
活動2-2.現行のScanSAR(JJ-FAST)データよりも高解像度のデータを用いてパイロット地域において森林伐採検知を実施する。
活動2-3.リモートセンシングデータからの森林伐採検出結果に基づき、取り締まり優先順位付けのための基準を設定し、改良する。
活動2-4.活動2-1、2-2、2-3で得られた優先指標を活用して、現地検証調査を実施する。
活動2-5.上記活動を通じて得られた結果を、活動1-2の提言に反映させる。
活動2-6.SARデータの解析技術向上のための研修を実施する。

成果3のための活動
活動3-1.森林伐採予測に必要な、伐採履歴、土地利用、気象、社会経済、地理情報(河川、地形他)等のデータを収集する。
活動3-2.成果2の活動および活動3‐1を通じて収集されたデータを利用して、森林伐採予測のためのAIアルゴリズムを構築する。
活動3-3.成果2の活動を通じて得られたデータを活用し、森林伐採予測の精度検証を行う。
活動3-4.構築したアルゴリズムが森林伐採を予測したパイロット地域において、現地検証を行う。
活動3-5.上記の活動結果を活動1-2の提言に反映させる。
活動3-6.持続的森林伐採予測運用及びAIアルゴリズムの継続的改良のための技術向上研修を実施する。

成果4のための活動
活動4-1.IBAMA支部における森林伐採採取り締まり情報の活用状況を評価し、IBAMA本部と支部間の情報共有状況を評価する。
活動4-2.IBAMA本部から送られる衛星ベースの結果とIBAMA支部からのフィールド調査結果(たとえば、ドローン等を利用して得られたデータ)を統合する。
活動4-3.IBAMA支部(XX箇所)において統合した枠組みの試行的運用を実施する。
活動4-4.IBAMA支部(XX箇所)におけるデータの活用向上のための研修を実施する。

投入

日本側投入

長期専門家:a)チーフアドバイザー/森林管理、b)リモートセンシング/業務調整
短期専門家:a)SAR画像分析/処理、2)AI/プログラミング言語、3)リモートセンシング、4)その他必要に応じて派遣
2)本邦研修:日本における特定分野の研修(SAR画像分析、AI、早期警戒システム)
3)資機材の供与:ドローン、AI用コンピューター、ドローン画像解析用コンピューター、ドローン
4)パイロット地域におけるフィールド調査経費の一部を含む現地活動経費

相手国側投入

1)ブラジル人カウンターパート(C/P)の配置:プロジェクト・ダイレクター、プロジェクト・マネージャー、IBAMA本部及び支部からのカウンターパート
2)JICA専門家用の執務室の提供
3)ローカルコストの負担
4)JICAが供与した機材の維持管理経費