第1回日本訪問-中央省庁、東日本自治体を中心とした訪問

2023年1月17日

本プロジェクトの3つのテーマについて日本での取組みを紹介するため、クリチバ関係者の日本訪問を複数回企画しています。今回、第1回となる訪日プログラムを2022年11月14日(月)から25日(金)にかけて実施。、IPPUC及びクリチバ市から派遣団員8名(IPPUC総裁を含む)が来日し、日本の関係省庁、東日本を中心とする地方自治体や都市計画・まちづくり関係の組織を訪問し、講義の受講と視察を行い、日本の都市課題に各都市がどのようなアプローチを取ろうとしているか理解を深めました。
プログラムは、上記の目的達成のため、大きく以下の2つの要素で構成されます。
・プロジェクト関係者との意見交換・議論
・日本の都市課題に対する日本政府、地方公共団体等の取組みの紹介
・クリチバ市の検討テーマ候補に対する事例紹介と適用に向けた分析、枠組みの議論
・日本国内の事例の現地視察
このため、各訪問先でIPPUCと職員との意見交換の場を設定し、双方向にとって学びのある有意義な場づくりを目指しました。

その中でも東京都渋谷区、群馬県前橋市、さいたまE-KIZUNAグローバルサミット(埼玉県さいたま市)、最終日のプログラム振り返り・今後に向けた議論の様子をお伝えします。

渋谷区および(一般社団法人)渋谷未来デザインにおけるスマートシティの取組み紹介(11月16日)

11月16日、団員は渋谷区を訪問しました。まず、渋谷区役所にて、渋谷駅周辺の街づくりや防災の取組みについて講義を頂き、老朽化による防災機能の脆弱化や”渋谷ダンジョン”と呼ばれるような多層で分かりにくい駅施設の課題に対し、官民連携でどのように街づくりを実施しているかを学びました。
講義の合間に、澤田伸 副区長に表敬し、「互いに学びあう関係を築いていこう」という言葉を頂きました。その後、渋谷における産学官連携組織である(一社)渋谷未来デザイン代表で東京大学先端科学技術研究センターの小泉秀樹 教授から、スマートシティの実装に向けた取り組みとしてバーチャル渋谷、渋谷データコンソーシアムをご紹介頂きました。
団員からは「官民連携における両者の役割分担や、民間に対するインセンティブのあり方」に関する質問があり、容積率緩和制度などに高い関心が寄せられました。また、渋谷未来デザインの講義においては「渋谷データコンソーシアムにおける民間データ取得」に関する質問が相次ぎ、民間データを活用したソリューションに関心があることが窺えました。
午後には渋谷駅周辺の再開発の実際の様子を視察し、スカイウェイやスクランブル交差点などを訪れました。渋谷の賑わいを体感するとともに、渋谷ならではの地形を生かしたまちづくりの理解を深めました。
最後の意見交換の場では、「さらに深く踏み込んで学び合いたい」等の意見が団員から出るなど、渋谷区とIPPUC相互にとっての良い学びとなりました。

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前橋市におけるスマートシティの取組み紹介(11月18日)

11月18日、団員は前橋市を訪問。冒頭で山本 龍市長を表敬しました。その後、前橋市からスマートシティの取組に関する取組の全体像をご講義頂きました。前橋市は、「まえばし暮らしテック推進事業」が2022年に「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプTYPE3)」に採択されています。当事業における大きな二本柱であるデジタル基盤の統合ID(めぶくID)と官民連携会社「めぶくグラウンド」の紹介がありました。団員からは、官民連携での取組やセキュリティに関する質問がありましたが、「デジタル市民権」、すなわち、「いつでもどこでもまちづくりに参加できる未来型の民主主義を実現するための新しいコミュニティ基盤を創るためのインフラ」となることが主眼にあり、市民に受け入れられるかを常に意識して事業展開しているとの回答がありました。
続いて、前橋市におけるアーバンデザイン・中心市街地まちづくりに関する講義がありました。前橋市の中心市街地活性化は、まずは民間中心のビジョン策定から始まり、その後、都市再生法人の設立、これを中心に利害調整を進める形で進行しているというプロセスを中心に理解を深めました。
午後は、前橋市中心市街地まちづくり・再開発の取り組みが行われている現場を視察。具体的には、白井屋ホテル、馬場川通りプロジェクト、太陽の鐘、呑龍横丁、広瀬川アーバンデザインモデルプロジェクト、まえばしガレリアなどを訪問し、前橋市の取組について、午前の座学だけでは得られなかった深い理解を得ました。全体を通して、民間企業の巻き込み方やインセンティブの設計に関する質問が相次ぎ、官民連携プラットフォームの在り方に関心が寄せられました。

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さいたまE-KIZUNAグローバルサミット(11月22~24日)

11月22日~24日の3日間、団員は「さいたまE-KIZUNAグローバルサミット」に参加し、脱炭素社会の実現に向けた国内外の都市の取組に関し、情報共有と意見交換を行いました。
22日にはレセプションに参加し、さいたま市長をはじめ、今回のサミットに参加される登壇者の皆様と挨拶を交わしました。
23日は、午前中に開催された3つの分科会「地域RE100の実現と地域マイクログリッドの構築」「持続可能な都市のための次世代モビリティサービス」「気候変動に適応したレジリエントな都市づくり」に団員それぞれが分かれて聴講。サステナブルな都市のために必要なエネルギー、モビリティ、気候変動適応・災害管理に関する世界の最新事例に関する理解を深めました。
午後には、分科会「公民連携によるデータ利活用型スマートシティの持続的な発展」に、IPPUCを代表してGIS CoordinatorのOscar Schmeiske氏がパネリストとして登壇。ファシリテーターの西教授や、同じくパネリストのつくば市やさいたま市、チェコ・ピルゼン市と「データ連携の在り方」や「スマートシティによるマネタイズの方法論」などの議論を交わし、日本及び世界の都市の持続的なスマートシティ化の最新事例を学びました。また分科会後には、今回の訪日プログラムでは訪問がかなわなかった自治体や団体の皆様と簡単な意見交換を実施できました。
24日にはテクニカルツアーに参加し、スマートシティ関連の様々な取組を進めてきた浦和美園エリアや、さいたま市の伝統文化である盆栽を紹介する大宮盆栽美術館を訪れました。

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プログラム振り返りと今後に向けた議論(11月25日)

最終日の25日にはプログラム全体の振り返りと今後に向けた議論をJICA本部にて実施。各訪問先での取組みのうち、参考になり得るものやクリチバ市の課題にも適用しうるものについて、高齢社会対応、災害管理(気候変動の適応を含む)、データプラットフォームの3つのテーマごとに議論してもらいました。また、今後予定している第2回日本訪問時に掘り下げたいテーマや、今後も継続的に意見交換を行いたい自治体に関する意見を聴取しました。参加者からは「文化の違いに戸惑う場面も無くはなかったが、総じて満足のいくプログラムだった」「今後、自治体の複数部署の政策立案担当者とじっくり意見交換をしたい」などの意見が上がりました。
最後にはIPPUCのAdvisor to PresidentのRicardo Bindo氏から「今回のような大変貴重な機会を頂けたことを感謝する」と述べ、JICA社会基盤部 讃井一将次長が「今後も引続きクリチバと日本の自治体との長期的な関係性構築に全力を尽くしたい」と挨拶しました。

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今回の訪日プログラムを通して得られた学びはIPPUCにとって有意義なものとなりました。
全てを記載することができずに残念ですが、他の訪問先においてもスマートかつ持続可能な都市開発のあり方について理解を深めて頂き、今後の政策提言に向けた、大きな一歩となりました。
最後に、今回の訪日プログラムでの視察を快く引き受けて頂きました自治体・各種団体の関係者に御礼を申し上げます。