保護区視察を通じて管理計画策定についての理解を深めました

2022年6月10日

中央および地方政府職員の保護区管理計画策定能力の強化は、プロジェクトの政策支援コンポーネントにおける重要な活動の一つです。現在、カンボジアでは70を超える保護区が設置されており、国土の41%がそれら保護区によってカバーされています。しかし、多くの保護区では、関連政府機関の能力不足により、管理計画が未だ策定されていません。このことは、保護区における持続的自然資源管理を実現する上で取り組むべき大きな課題となっています。状況の改善に向け、プロジェクトには、主に環境省職員が保護区管理計画を策定するために必要な能力を身に着けることができるよう、人材育成への貢献が期待されています。

プロジェクトでは、先進事例の経験と教訓に学ぶことが重要との考えに基づき、既に正規の管理計画が策定されている保護区の視察を行いました。その目的は、保護区管理計画の策定、実行に関する情報を収集し、プロジェクトが実施することとなる研修のカリキュラム策定に活かすことです。

第一回目の保護区視察は、2021年11月、JICA専門家および環境省陸域自然保護区保全課メコン東部担当スタッフが参加し、シェムリアップ州のプノンクレン国立公園を対象に行われました。プノンクレン国立公園は、ゾーニングは未完ながら、カンボジアで最初に管理計画が策定された保護区です。この国立公園は土地の蚕食、無秩序な土地取引、予算不足による法執行不全、追い付かない廃棄物処理等、域内の貴重な生物多様性や森林資源を脅かす様々な問題を抱えています。この視察では、当国立公園がどのように管理計画を活用しているか、どのように事業の継続に努めているかを知る一方で、彼らが抱える課題を通じて、持続的な資金確保や適切なゾーニング設定の重要性を理解することとなりました。

続いて、2022年5月に行われた二度目の保護区視察では、JICA専門家と同課スタッフはモンドルキリ州のケオセイマ野生生物保護区およびスレポック野生生物保護区を訪れました。優れた保全価値を有する両保護区は、保護区管理計画を策定するため、その準備段階から政府の承認手続きに至るまで、技術および資金の両面において国際NGOのサポート受けました。これらのNGOは、管理計画が効果的に実施されているかどうかを検証するための活動モニタリングも支援しているとのことです。保護区スタッフからは、保護区管理計画策定における大きな課題として、以下の点が挙げられました。
・準備段階において地域の関係当局やワーキンググループとの調整に時間が掛かること
・生物多様性調査、資源調査、ゾーニングを実施するための技術的、資金的支援の確保
・野生生物保護区内の土地利用を巡る地域住民との対立の調整
また、両保護区の管理計画では、詳細な活動計画および必要予算が示されていますが、予算的制約により一部の活動は実行できないでいるという話も聞かれました。さらに、ケオセイマ保護区では、強力な法的根拠であるゾーニングが正式に承認されていないため、違法な土地蚕食に対する法執行に限界があるという問題も顕在化しています。

二度にわたる保護区視察を終えた今、本活動の次の段階として、訪れた保護区が経験した課題や教訓を踏まえながら、保護区管理計画策定能力強化のための研修カリキュラム作りを進めたいと考えています。

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プノンクレン国立公園事務所

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プノンクレン国立公園スタッフへのインタビュー

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勇壮な滝と渓谷を目当てに多くの観光客がプノンクレン国立公園を訪れます

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ケオセイマ野生生物保護区事務所のメインゲート

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ケオセイマ野生生物保護区に設置された案内板

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スタッフへのインタビュー(ケオセイマ野生生物保護区)

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スレポック野生生物保護区事務所のメインゲート

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スタッフへのインタビュー(スレポック野生生物保護区)

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スレポック野生生物保護区の事務所は2014年に日本の無償資金協力で建てられました