プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)保健人材継続教育制度強化プロジェクト
(英)The Project for Strengthening In-service Training System in Cambodia

対象国名

カンボジア

署名日(実施合意)

2021年8月12日

プロジェクトサイト

プノンペン都、コンポンチャム州、バッタンバン州(指導者研修およびオンライン研修は全国対象)

協力期間

2021年12月26日から2026年12月25日

相手国機関名

(和)保健省
(英)Ministry of Health

背景

カンボジアの公的保健医療サービスの提供体制は、内戦後の1990年代前半と比較し質・量ともに改善し、首都プノンペンを中心に基本的保健医療サービスの提供体制が整いつつある。この結果、5歳未満児死亡率(2000年:106、2019年:27、出生1,000対、2019)や妊産婦死亡率(2000年:488、2017年:160、出生10万対、2017)の削減等、国全体では母子保健を始めとする基礎保健指標改善の成果が上がっている。他方、病床数をはじめとする保健医療施設や、医療従事者数については、世界保健機関(以下、「WHO」)が示すユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下、「UHC」)達成に必要な水準には達しておらず、改善の見られるその他の基礎保健指標と比しても低水準とされている。人材面において、特に公的医療施設での人材不足が顕著である。人口10,000人当たりの医師数は1.4人、看護師/助産師数は9.5人であり、これらは東アジア、東南アジア地域の中低所得国平均(医師9.0人、看護師/助産師19人)から著しく少ない(2018)。加えて、プノンペンと地方との格差も大きく、特に地方における保健医療人材の確保、サービスの改善が喫緊の課題である。
カンボジア政府は「国家戦略開発計画2019-2023」において、公衆衛生の改善を重要課題として掲げており、保健医療サービスの質改善についても、重要課題達成に向けた重点事項として位置づけている。また、「第3次国家保健戦略計画2016-2020」においては、質の高い保健医療サービスの提供と公平なアクセスの確保が優先政策のひとつとして掲げられている。これらを達成するための重点的な取り組みとして、保健医療サービスへのアクセスの確保、保健インフラ・保健医療機材の整備、医療資材の安定的な供給、質・量的に十分な保健人材の確保等が挙げられている。現在、同国保健省は、WHOの支援のもと「第4次国家保健戦略計画2021-2030」を策定中であり、第3次計画を発展的に改訂する計画である。これまでの保健戦略計画は5か年計画であったが、同計画は持続可能な開発目標(以下、「SDGs」)に合わせ10か年計画となる見込みである。同計画においても、これら保健医療施設・医療機材の整備、保健人材の質・量の確保に焦点があてられることが見込まれる。
カンボジアの保健医療人材約2.5万人のうち、約1.1万人を占める看護師は、基本的保健医療サービスの提供を支える重要な役割を担っている。カンボジアでは、看護師に対する体系的な卒後研修制度がなく、各開発パートナーや国家プログラム等を通じた研修が応急的に行われており、必ずしも現場のニーズに合った内容が提供されていない。そのため、看護師養成機関の卒業後、知識や技術を更新する機会の不足、現場で指導・管理できる人材の不足、継続的なキャリア形成及び業務への意欲の維持が困難といった課題を抱えており、保健医療サービスの質改善のボトルネックとなっている。現職看護師に対する卒後研修制度の充実により、コンピテンシー(能力・スキル、行動特性)の向上をはかり、保健医療サービスの質の改善を目指すことが求められている。
本事業は、当該国における保健医療サービス提供において重要な役割を担う看護師の継続教育に焦点をあて、卒後研修制度改善による保健医療サービスの質の向上を目指すものである。

目標

上位目標

カンボジアにおいて看護師の卒後研修制度が自律的に確立され、看護人材の能力が向上する。

プロジェクト目標

看護師を対象とした卒後研修制度が強化される。

成果

1.コンピテンシーに基づいた看護師の国家卒後研修ガイドラインが策定される。
2.卒後研修ガイドラインに基づき、看護師の卒後研修計画・カリキュラムが策定される。
3.優先度の高い新研修コースが、研修方法(オンライン、対面、実技およびOJT)に合わせてカンボジア国内またはパイロット州で実施される。
4.卒後研修制度が運用されるためのモニタリングの仕組みが確立される。

活動

1-1.新卒後研修の意思決定機関であるステアリングコミティーを結成する。
1-2.公的医療施設で勤務する看護師の卒後研修のニーズ調査を行い、結果をまとめる。
1-3.看護師向けの国家卒後研修ガイドラインを作成する。

2-1.卒後研修計画作成のためのテクニカルワーキンググループ及び卒後研修カリキュラム作成のためのサブテクニカルワーキンググループを結成する。
2-2.国家卒後研修ガイドラインに基づき卒後研修計画を作成する。
2-3.卒後研修計画に基づき各研修科目のカリキュラムを策定する。
2-4.優先度の高い研修科目および研修コースを決定し、適切な研修方法を検討する。

3-1.新研修コース実施のための研修管理チームを形成する。
3-2.実施する新研修コースを決定し、そのための準備(教材作成、CPDの申請、機材や教材の支給)をする。
3-3.実技研修およびOJT研修コースを行う指導者研修の仕組みを開発し全国で実施する。
3-4.オンラインの新研修コースを全国の看護師に向けて実施する。
3-5.パイロット州で対面講義、実技研修およびOJT研修コースを実施する。
3-6.卒後研修コースのモニタリングのツールを開発し、各研修コース終了後にツールを活用したモニタリングを行う。

4-1.卒後研修カリキュラムの全体運用状況のモニタリングを実施する。
4-2.パイロット州に対する研修の実施状況を把握し、必要に応じ解決策を講じるとともに、卒後研修コースを受講できなかった看護師への対応を検討する。

投入

日本側投入

日本人専門家、研修員受け入れ、機材供与、現地経費

相手国側投入

カウンターパートの配置・人件費、プロジェクト事務所スペース・管理費用