日本人専門家の出席のもと、国際セミナー「緊急災害時のこころのケア」を開催しました。

2016年6月23日

KIZUNAプロジェクトの一環として6月21日、サンチアゴ市内の内務公安省で国際セミナー「緊急災害時のこころのケア」を開催し、チリ国内で災害対策や精神保健にあたる約300人が参加。災害発生から復興までの長い期間にわたり、被災者・支援者の心に寄り添うことの大切さについて議論しました。
本セミナーは、日本とチリの2011年から二国間協力を通じて行われてきた「こころのケアのチリモデル適用化」の取組み成果をチリ国内の関係者と共有し、普及することを目的に開催しました。本プロジェクトでは、阪神淡路大震災以降、日本で積極的な取り組みが始まった災害時のこころのケアについて、日本の経験を学びながら、チリのモデルを構築することを目指しており、チリの保健省、国家緊急対策室及びチリ・カトリカ大学国立総合自然災害管理研究センターが中心になって進めています。
セミナーでは、兵庫県こころのケアセンターの加藤寛・センター長が、阪神淡路大震災から東日本大震災までの災害時の精神保健の取り組み過程を紹介し、さらに熊本地震における災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動など、最近の取り組みについても発表しました。また、大澤智子・同センター研究主幹は、被災者だけではなく、救助に当たる消防士や看護士に対するこころのケアの大切さ、さらに被災地内にいる支援者のエンパワメントの重要さについて話しました。チリ側からは、災害の記憶の伝承や、こころのケア概念の横断的な導入など、日本の研修で学んだことをどのようにチリの政策や現状に合わせてモデル化していくかについて、これまでの成果や課題が発表されました。
本セミナーには、日本・チリでの経験を各国と共有するために、エクアドル、ブラジル、コスタリカなど6カ国の保健省や災害対策に当たる関係者10人を招へいしました。他国からの参加者はセミナー翌日の6月22日には、サンチアゴ市内の国家緊急対策室と保健省を視察し、災害のモニタリングや緊急時の対応などについて説明を受けました。午後からは、国際協力開発庁で、各国のこころのケアの取り組みについて紹介し、平常時からの関係機関の連携、コミュニティへのアウトリーチ、被災者情報の扱いなどについて、チリ側関係機関を交えながら活発に意見交換するとともに、今後も連携を取りながら良好事例について共有し、お互いの絆を深めていくことを確認し合いました。

(文/写真 武田和代)

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国際セミナーで日本での取り組みについて話す加藤寛・兵庫県こころのケアセンター長。

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被災地での支援者へのこころのケアの大切さについて話す大澤智子・兵庫県こころのケアセンター研究主幹。

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チリの国家緊急対策室を視察する海外6カ国からの招へい者。

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こころのケアについて意見交換する海外6カ国からの招へい者とチリ側関係者。