中国の環境問題へ対応するための総合的な取り組み−環境にやさしい社会構築プロジェクト進捗報告−(2)

2017年3月31日

2017年3月

2016年4月より実施している「環境にやさしい社会構築プロジェクト」は、中国における環境問題への対応能力を総合的に強化するため、政策・法制度の整備促進、環境汚染防止技術の普及、市民らの環境意識の向上などを進めていくものです。現在はプロジェクト本格開始に向けた準備段階として、先行して一部の活動を行いつつ、今後5年間の優先課題など活動計画を策定しています。前号に続き、その活動内容を紹介します。

1.水環境管理の推進(12月短期専門家派遣、2月訪日研修)

中国では2013年9月の「大気汚染防止行動計画」(大気十条)に続き、2015年4月に水環境管理のための政策大綱として「水汚染防止行動計画」(水十条)を公表しました。現在は「水汚染防治法」の改正に向けて全国人民代表大会での審議が行われています。このようななか、環保センターでは水環境管理のため長期的な研究活動を行うとともに、特に重点流域の工業園区における水質保全対策をテーマとした研究を行っています。

今般、日本における政策、取組を研究することとなり、12月には環保センターにて日中の専門家ら約30名による研究会を開催しました。さらに2月には9名の中央及び地方機関の研究者が訪日し、国土交通省や環境省の職員、有識者らから国における水質保全政策、農村地域での生活排水や畜産排水対策などの説明を受けるとともに、東京都、滋賀県、川崎市、北九州市の水質管理施設や企業、研究機関などを訪問しての現場視察、国立環境研究所における研究者らとの意見交換などを行いました。

2.土壌汚染対策をテーマとした日中の環境企業交流(12月短期専門家派遣、セミナー開催)

環保センターは、研究活動や政策立案により中国における環境対策の推進を行う組織であると共に、日本及び中国の環境協力を推進するプラットフォームでもあります。

本プロジェクトでは日中企業間の環境技術交流のためのネットワーク構築に向けて、日中の環境企業による交流機会の提供や関連情報の提供などの活動を展開することとしています。12月5日には環保センターにて、中国で法制度化に向けた検討が進む土壌汚染対策をテーマにしたセミナーを開催しました(法制度化の前段として、前述の大気十条、水十条に続き2016年6月には「土壌汚染防止行動計画」(土十条)が公表されています)。セミナーには土壌汚染対策ビジネスを行う企業、大学や研究機関、政府の環境保護部門など産学官の有識者ら約80名が参加し、事業や研究成果の紹介や意見交換が行われました。

今後も、セミナーの開催などを通じて環境企業交流の機会を提供するとともに、実用的な環境技術に関する情報や日中の環境法制度などの政策情報提供のためのウェブサイトの整備なども予定しています。

3.環境意識の向上と家庭部門の環境対策の推進(8月、11月短期専門家派遣、2月訪日研修)

環境保全のためには市民の環境意識の向上や省エネや公共交通機関の利用など日常生活における環境対策の推進も重要です。中国では、学生に対する環境意識の向上のため自然の豊かな地域で体験学習をする自然学校や環境学習施設の普及、拡大を図っています。このためJICAではこれまでも環境問題を学ぶ展示施設の整備をはじめ、環境教育分野での活動支援を行ってきました。

本プロジェクトでは、中国における自然学や環境学習施設の普及に向けて、日本から専門家を招き日本の経験を紹介するとともに、中国の担当機関の能力構築に向けて日中の有識者らの交流の推進、環境意識の調査手法の研究、家庭における温室効果ガスの排出抑制に向けたプログラムの検討などを行っています。

7月には日本からの調査団を迎え、日中の有識者らによる意見交換を行い、続いて8月には環境意識調査手法について、11月には日本における家庭エコ診断活動について大学などの有識者らによる紹介、中国における適応可能性に関する検討を行いました。さらに2月には9名の環境教育担当職員らが訪日し、環境省や地方自治体の職員、大学の研究者などから環境教育に関する政策や研究、事業活動などの説明を受けるとともに、東京都、京都市、北九州市、水俣市などの環境展示施設や自然学校などを訪問しての現場視察、日本における家庭エコ診断活動の視察、自然学校や環境意識調査に関する有識者らとの意見交換などを行いました。

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土壌環境改善政策技術交流セミナー

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家庭エコ診断活動にかかる交流

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水環境管理訪日研修での視察の様子