(和)デジタルプラットフォームを活用したルーメン微生物フローラと草地管理の最適化による牛肉バリューチェーン創出プロジェクト
(英)Project for Creation of Beef Value Chain by Optimizing Ruminal Microbiota and Grassland Management on Digital Platform
コロンビア
2022年3月25日
2022年8月12日から2027年8月11日
(和)コロンビア農業研究機構
(英)AGROSAVIA
名古屋大学
コロンビアでは畜産セクター(主に牛肉生産)が、全国の就業人口の約7%に当たる90万人以上の雇用を創出するとともに、国内総生産の1.3%を生む主要産業であり(同国統計局、2018)、国の経済発展にとって重要な役割を果たしている。コロンビア国は、生物多様性に富んだ広大な湿生環境を有し、年間を通して一定かつ十分な太陽エネルギーを享受できることから、持続可能な牧畜業を営む上で有利な農業生態学的条件が整っているといえる。
現在、同国の牛肉生産量は、国内消費を満たすのに適量な年間約75~85万トンで推移しており、輸出はロシアを中心に年間平均1~1.6万トン程度に留まっている(同国統計局、2018)が、環太平洋諸国における肉製品の需要は高く、経済戦略として牛肉輸出を増やすためにコロンビア政府は良港に近いカリブ沿岸地域等で「ミートクラスター事業」を開始した。特に、「Grass-fed牛肉」という牧草のみで飼育された牛肉が高値で取引されることから、放牧飼育に力を入れている。しかし、生産に関する情報のほとんどが紙ベースで管理されており、ミートクラスター地域における情報基盤が脆弱であり、生産現場からと畜場までを繋ぎ、輸出に必要なトレーサビリティ(ウシの生体情報や肥育時の情報等)を提供する牛肉デジタル基盤の構築が必要となっている。
コロンビアの牛肉生産のための放牧地は、全国土の1/3(3,000万ha)と広大な面積を占めているものの、放牧地1haあたりの飼養頭数は0.6と著しく低く粗放的であり、また食肉として出荷されるまでの肥育期間も40カ月と長い。この背景には、コロンビアでは、大部分が飼養頭数10頭以下の小規模農家であり、それら多くの農民は効率的に牛を飼養する十分な知識・技術を有しておらず、過放牧や乾期の餌不足など粗放的な牧草管理のため生産性が向上しない原因となっている。このため、牛自体が持つ遺伝的な形質を生かし日増体重(1日あたりの増体重)を効率的に増加させる技術や、放牧地における牧草の生育モニタリングを基盤とした乾期の飼料供給能力を向上させるための技術などの開発と普及により、農家の飼育管理技術を向上させることが求められている。
対象地域においてgrass-fed牛肉バリューチェーンが構築される。
デジタルプラットフォーム(DP)を活用したgrass-fed牛肉バリューチェーン強化のための技術基盤が確立する。
1.肉牛の生産サイクルに最適化されたユーザーフレンドリーなデジタルプラットフォーム(DP)が構築される。
2.ルーメン微生物叢の評価と増体能力の評価の統合により、育種によらないgrass-fed牛肉生産技術が開発される。
3.牛肉生産を支える草地AI管理・牧草生産技術が開発される。
4.開発されたgrass-fed牛肉生産技術の情報が、対象地域の畜産コミュニティで共有される。
1-1.肉牛生産サイクルに最適化されたシステム仕様を確定する。
1-2.統合モデルによる肥育最適化のためのDPを整備する。
2-1.ウシ交雑集団におけるルーメン微生物叢をメタゲノム解析する。
2-2.ルーメン液移植によるルーメン微生物叢定着技術および子ウシの成長促進技術を開発・検証する。
2-3.子ウシの標準生育曲線を作成する。
2-4.地域に適したルーメン微生物叢をもつ母牛の選抜と評価を行う。
3-1.地域に適合した牧草のベストミックスの選定と牧草地評価技術を構築する。
3-2.地域に適合した周年での増体を支える牧草生産・放牧管理技術を開発する。
4-1.Grass-fed認証のための体制を整備する。
4-2.ミートクラスター地域の畜産コミュニティに対して開発技術の普及を行う。
1)在外研究員(短期専門)の派遣:総括/動物生産、獣医学、情報科学、リモートセンシング、精密農業、作物モデル、土壌微生物学等の分野
2)業務調整員(長期専門家)の派遣
3)招へい外国研究員の受け入れ(短期・長期):ルーメン液の収集と分析、リモートセンシング技術、牛のトレーサビリティ、品質基準等の分野
4)機材供与:研究開発・教育活動に必要な資機材等
5)現地活動費
1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設の提供
3)現地活動費