プロジェクトニュース_12

2015年3月11日

湿地保全地域セミナー開催

湿地保全のための国際条約、ラムサール条約の事務局は、その発効を記念し、2月2日を世界湿地の日としています。毎年各地でこの日を中心として様々な記念のイベントが行われています。JICAは2012年にラムサール条約事務局と技術協力協定を結んでいることから、湿地保全にも力を入れています。そのため、私たちのプロジェクトでも2月23日に世界湿地の日を祝うイベントをコスタリカ政府と共催し、また、2月24日から26日にかけて、メキシコ、ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、ドミニカ共和国から湿地保全関係者を2名ずつ招待し、コスタリカからの参加者も加え、湿地保全のための地域セミナーを開きました。
23日の記念イベントには、コスタリカ側から環境省の湿地担当副大臣と保全地域庁長官が出席、日本側からは日本大使館の木村参事官と篠崎JICA支所長が出席しました。また、「中米環境と開発委員会」事務局長、ラムサール条約事務局アメリカ担当官、パナマ共和国大使、ドミニカ共和国大使にもご列席いただきました。副大臣からは、湿地保全には地域の住民の利益と湿地の生態系を保つための「賢明な利用」を進めていくことが重要である旨、お話しがありました。
24日からの地域セミナーでは、「湿地における持続可能な生産」をテーマとし、各国からの参加者がそれぞれの湿地における持続可能な生産活動の事例を紹介しました。メキシコのコスメルという湿地では、過剰な漁獲により資源が減少したため、漁民が生業を漁業からスポーツフィッシングのガイドへと転業し釣った魚を再放流するようにしたところ、資源が回復し、また、収入の向上にも貢献した事例が発表されました。
25日には、中米で唯一の高地泥炭湿地であるトゥルベラス・デ・タラマンカ湿地を視察しました。この周辺には、南米のアンデス山脈から続く高地の低木林であるパラモという生態系の北限に当たるなど、特異な生態系が多く、中米からの参加者からも多くの質問が寄せられました。
最終日の26日には、ラテンアメリカの湿地保全に関連したJICAの事例報告と今後の方針について、JICA地球環境部の宍戸次長が報告、さらに、宮城県の蕪栗沼とその周辺水田におけるコメ栽培の事例を、日本雁を保護する会会長の呉地正行さんに発表いただき、どちらも大変な反響を得ました。その後、「湿地において持続可能な生産活動を進めていくための鍵はなにか?」という問いに対する話し合いをし、話し合いの結果を受け、最後に参加者一人ひとりからキーワードを一語で示してもらい、なぜそれがキーワードだと思うのかについて説明してもらいました。「リスペクト」、「コミュニケーション」、「参加」、「オーナーシップ」、「インクルーシブ」などの単語が、成功のためのキーワードとして出てきました。これらのキーワードは湿地保全の現場の最前線で活躍する人たちの、「知識」にとどまらない「知恵」を共有していくための言葉だと感じました。
今年は6月に南米のウルグアイで第12回ラムサール条約締約国会議(COP12)が開かれ、湿地保全がさらに盛り上がることが期待されています。

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メキシコ、中米、カリブ地域9ヵ国から集まった参加者。

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トゥルベラス・デ・タラマンカラムサール条約指定湿地にある池をバックに。

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中南米における湿地関連の協力を紹介するJICA地球環境部宍戸次長。

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「湿地における持続可能な生産活動を推進するための鍵」について話し合う参加者。