プロジェクト概要

プロジェクト名

大アビジャン圏都市開発マスタープラン実施促進プロジェクト

対象国名

コートジボワール

署名日(実施合意)

2020年10月30日

協力期間

2021年6月7日から2024年6月6日

相手国機関名

建設・住宅・都市計画省

背景

コートジボワール国の旧首都アビジャン市は、国全体の1/4に当たる約505万人(国家統計協会、2014年国勢調査より)の人口を抱え、域内生産は国内のフォーマル経済の8割近く(世界銀行、2018年)を占める、同国最大都市かつ産業・経済の中心である。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)域内最大規模の港湾であるアビジャン自治港を擁し(2018年、バルク貨物取扱量による/アビジャン自治港(PAA)活動報告書より)、国内各都市に繋がる幹線道路・鉄道・空港等の交通網の起点であることに加え、ブルキナファソ等内陸諸国への玄関口、ガーナ・トーゴ・ナイジェリア等沿岸諸国に続くアビジャン~ラゴス回廊の一角としても重要な役割を担っている。
アビジャン市では、1928年以降都市の成長に応じた計画策定が数次に亘り行われ、1960~70年代の「象牙の奇跡」と呼ばれる年率8%の急速な経済成長を遂げた時代に多くの道路・鉄道・港湾等のインフラが整備された。しかし1999年から2011年に亘る長年の政治的危機・国内の分断により、計画的なインフラ投資や市街地整備が行われないまま人口が急増し(1998年:338万人→2014年:505万人、いずれも国勢調査)、市街地の無秩序な拡大や各種インフラの老朽化・サービス低下、容量不足等の課題を抱えている。更に政治的危機の終結後、同国では年率7%近い経済成長、年間約2.5%の人口増加率で復興を遂げつつあり、アビジャン市の人口も2050年には1,071万人へと倍増するとの推計も存在する(Global Cities Institute, 2014)。これらの変化に対応するためには、交通や都市のユーティリティーサービス(上下水道、廃棄物収集等)供給の効率性を高め、環境負荷を抑えた都市構造を形成しつつ、急増する人口を収容していく必要がある。
2013年から2015年にかけて、JICAは「大アビジャン圏都市整備計画(Schéma Directeur d’Urbanisme de Grand Abidjan:SDUGA)策定プロジェクト」を実施し、2030年を目標年次とする大アビジャン圏(アビジャン自治区を構成する13コミューン(市)、周辺6コミューン及びその周辺の郡を含む)の都市マスタープラン・都市交通マスタープランの策定を支援した。同マスタープラン(以下、「SDUGA」と表記)は2016年に政府承認を受けた後に政府・援助機関等に広く活用され、提案された都市交通分野の優先案件の多くの実現に繋がっている。
他方SDUGAに沿って都市開発を進めていく上で、複数の課題が顕在化してきている。一点目として、計画全体レベルでの組織横断的な調整メカニズムの不在が挙げられる。SDUGAでは実施に係る中央省庁、州、コミューン等を巻き込んだ計画管理機構の設立が提言されているが、SDUGAの政府承認後4年が経過した現在も実現されていない。このためSDUGAでは土地利用・交通についてはセクター別の空間計画が検討されたが、更に他の都市インフラセクター(上下水道・廃棄物等)のネットワーク・施設配置計画等との調整も必要とされている。二点目として、SDUGAで提示された都市圏全体の整備方針及び地区別の構想を具体的な地区レベルで実現するために必要な法制度、組織、計画、実施プログラム等が検討・整備されていないことが挙げられる。開発許可の基準となる詳細都市計画(PUd; Plan d'Urbanisme détaillé)の策定については他ドナーによる協力の目処が立っているが、現行では開発許可の権限を建設・住宅・都市計画省(以下、MCLU)が有しているが、今後は持続可能な都市開発管理の観点から、地方自治体との連携、役割分担などを含めた都市開発管理の改善・強化が求められている。また、現在進行中のPUd策定プロセスは行政を中心に進められており、策定された計画の実効性を高めるためには住民を含むステークホルダーとの調整が不可欠である。三点目として、幹線交通網であるMRT(Mass Rapid Transit; 都市鉄道)、BRT(Bus Rapid Transit; バス高速輸送システム)に既に資金支援が決定するなどマスタープラン策定時の想定を上回るスピードで優先案件の実現が進む都市交通セクターにおいて、更なる実施促進のためには交通ネットワーク計画の更新を含めた優先プロジェクトの更新が求められている。また交通インフラの拡充のみならず、複数の公共交通システム間の連携・接続を含めた公共交通ネットワーク全体の利便性向上やサービス改善等の新たなニーズも生じている。
本プロジェクトは、係る状況から、SDUGAに沿った都市開発の実施促進・モニタリング体制の構築、地区レベルの計画策定、都市交通マスタープランの更新について、SDUGA策定を支援したJICAに対しMCLUより要請された協力を実施するものである。2020年8月より詳細計画策定調査を実施し、10月下旬に、プロジェクトの枠組みや実施体制、双方負担事項等に関しての基本合意文書であるR/D(Record of Discussions)に署名を行った。

目標

上位目標

大アビジャン圏において、SDUGAの実施促進・計画管理メカニズムの下でSDUGAに基づく持続可能な都市開発が推進される。

プロジェクト目標

SDUGAの効率的な実施のための能力が強化されると共に、持続可能な都市開発が推進される。

成果

1.SDUGA実施促進・モニタリング委員会の体制が構築され、主要な都市インフラセクター計画との調整・整合性確保が行われる。
2.SDUGA実施のための地区レベルでの都市開発管理の実効性が高められる。
3.公共交通の利便性及びアクセス向上を目的とした、都市交通計画のレビュー・更新が行われる。

活動

1-1.SDUGA実施促進・モニタリング委員会の体制構築
1-2.SDUGAの大アビジャン圏全体での実施プログラム策定支援
1-3.SDUGAと他の都市インフラセクター(給水・排水・廃棄物等)計画との土地利用・空間計画面での調整・統合
1-4.社会経済フレームワークの変容・市街地拡大状況に応じたSDUGAの更新

2-1.策定されたPUdの策定プロセス、内容、実施方策のレビュー
2-2.PUdの実効性強化のための手法・スキームについての検討・提言

3-1.SDUGAの都市交通計画のレビュー・更新
3-2.SDUGAの都市交通分野の優先プロジェクトの更新
3-3.都市交通行政におけるデータ活用に係る能力強化
3-4.公共交通のオペレーション改善に関する活動(暫定)

投入

日本側投入

1.専門家派遣(都市計画/都市交通/都市環境インフラ/組織能力開発等)
2.研修(本邦/第三国)
3.機材供与

相手国側投入

1.カウンターパート人員の配置
2.専門家執務室(執務室の電気・水道・インターネットアクセス・家具等含む)の確保