ハバナ近郊農業組合視察

2017年9月14日

2017年4月

これまでの日本の農業協力は首都ハバナから離れたキューバの中央部の稲作地帯を対象エリアとしていましたので、プロジェクト実施機関の穀物研究所(ハバナから車で約30分)があるアルテミサ県の農業がどうなっているのかを知る機会があまりありませんでした。2017年1月から開始された「基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト」はコメに加え、フリホール豆とトウモロコシも対象作物とするため、4月19日(水)〜21日(金)に穀物研究所の近隣の6農業組合(3クレジット・サービス農業組合(CCS)(注1)、3農業生産組合(CPA)(注2))を訪問しました。ハバナ首都圏に近いということもあり、野菜、果物の生産が中心で穀物はフリホール豆とトウモロコシも栽培していますが、その規模は小規模で、コメはほとんど作っていません。各農業組合の会員数は200〜400人です。

まず驚いたのは、勢いのあるクレジット・サービス農業組合(CCS)は既に大手外資系ホテル(例えばメリア・ホテル)と契約を結び、直に出荷しているということです(組合長の話によると全国で4つのクレジット・サービス農業組合CCSのみ許可されているとのこと)。また、クレジット・サービス農業組合(CCS)事務所には小さなジュース・ジャム加工場を併設しているところもあり、移動式のピボット灌漑施設(注3)や輸送トラックも所有し、売り上げの一定比率を組合に積み立て、農業生産・輸送の効率化に積極的に取り組んでいる印象でした。

今後も海外からの観光客が増え、新鮮で品質の良い農産物の需要が高まれば、さらなる規制緩和が予想されますが、社会主義国のキューバではこのようなホテルと直接契約を結ぶ農業組合は例外(または試行)であり、新規参入は慎重に検討されるものと思われます。

穀物にしろ、野菜にしろ、農業組合関係者が一様に言っているのは、良質な種子が手に入いりにくいということです。人参、キャベツ、ブロッコリーあたりは農業公社を通じて日本の種子(サカタ種苗、トキタ種苗)を購入している農家もあり、その品質に満足しているとのことでしたが、キューバにおける農業普及の基本は、栽培技術と合わせ、優良種子がいかに広く農家の手に渡るかということだと再認識した視察となりました。(チーフアドバイザー:北中 真人)

(注1)政府からの融資や農業資機材の供与を受け入れるための組織。組合員である個人農家はそれぞれ、個人所有の土地で営農している。
(注2)共同で農業生産を行おうとする小規模農家が土地およびその他の生産手段を出し合って構成された組合。土地を協同組合で所有し、組合が共同作業を行う大規模集団農場の形態をとっている。
(注3)中心に回転する散水用アームの軸を置いて、中心から伸びる散水器(スプリンクラー)がゆっくり回りながら、水を円形の耕地に供給する灌漑方式。

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視察時には、カウンターパートたちによる、質問表を活用した聞き取り調査も実施された。
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム

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農業組合(CCS)に併設された食品加工施設。
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム