(和)沿岸警備隊能力拡充プロジェクト フェーズ3
(英)The Project for Capacity Development of Djibouti Coast Guard Phase III
ジブチ
2019年8月18日
ジブチ市及び周辺海域
2019年10月14日から2026年3月13日
(和)ジブチ沿岸警備隊
(英)Djibouti Coast Guard
海上保安庁
ジブチ沖のアデン湾は、スエズ運河に接続する紅海の入口であるバブ・エル・マンデブ海峡の東側に位置し、年間約1,600隻の我が国に関係する船舶が通航(「2020年海賊対策レポート」(2021年3月))する、アジアと欧州を結ぶ海上交通路の要衝となっている。他方、2000年代以降、海賊被害が多発し、ピーク時の2011年には237件の被害が発生(「2020年海賊対策レポート」(2021年3月))した。海賊被害件数は年々減少傾向にあるものの、海賊の背後にあるソマリアの犯罪組織は壊滅しておらず、引き続き船舶航行の安全に対する脅威となっているほか、対岸のイエメンではテロ集団も多く存在している。このような状況から、ジブチ沖の海上の安全の確保は、国際的な課題となっており、各国が護衛活動等を行い、我が国もジブチに自衛隊の活動拠点を設置し、欧米諸国等と共に海賊対策に取り組んでいる。
2010年12月、ジブチ政府は、海上安全・警備を所管し、海賊や難民・移民、密輸・密漁等の問題に対処する海上法執行機関として、インフラ設備省傘下にジブチ沿岸警備隊(Djibouti Coast Guard。以下「DCG」という。)を設立した。DCGは、年々組織を拡大しており、設立当初100人程であった人員が2021年には約1,970人にまで増員したが、訓練体制の構築が追い付いていない。これまで、JICAは、技術協力「沿岸警備隊能力拡充プロジェクト」(2013年~2016年)及び「沿岸警備隊能力拡充プロジェクト フェーズ2」(2016年~2018年)を実施し、DCGの海上保安における基礎的な能力が向上したものの、地域の安定化に資する海上保安機関として、より高度な法執行能力や海事技術の習得が必要とされる。加えて、巡視艇の維持管理に関して、国内及び周辺国の代理店での対応には限界があり、DCGが自ら修理等の維持管理を実施できる範囲を拡大する必要がある。エンジン類の定期的な整備にかかる計画も存在しないため、今後エンジンの重大な故障を引き起こし、ひいてはDCGの法執行業務に重大な影響を及ぼすことなどが懸念される。
これら事情を受け、本事業は、DCGの法執行にかかる技術及び訓練能力並びに巡視艇の運航・維持管理にかかる能力のさらなる強化を図り、DCGの法執行にかかる現場対応能力の向上を支援するものである。
ジブチ領海域、アデン湾及びバブ・エル・マンデブ海峡における治安が維持される。
ジブチ沿岸警備隊(DCG)の法執行にかかる現場対応能力が向上する。
1.法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる訓練能力が向上する。
2.船艇の運航能力が向上する。
3.船艇(巡視艇・小型船)の維持管理能力が向上する。
1-1.法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる個別訓練および総合訓練の年間計画を策定する。
1-2-1.高速小型船・巡視艇を用いた停船・移乗訓練を実施する(海事部・特殊部隊)。
1-2-2.高速小型船・巡視艇を用いた停船・移乗に係るSOP(英・仏)を策定する。
1-3-1.立入検査訓練を実施する(法執行部・海事部)。
1-3-2.立入検査にかかるSOPを策定する。
1-4-1.制圧術訓練を実施する(海事部・特殊部隊)。
1-4-2.制圧術訓練マニュアルを策定する(特殊部隊)。
1-5-1.法執行(停船措置、立入検査、制圧)にかかる総合訓練を実施する。
1-5-2.指導官育成のための、法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる個別訓練及び総合訓練を実施する。
1-6.法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる個別訓練がDCGの指導官によって実施される。
1-7.法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる総合訓練がDCGの指導官によって実施される。
1-8.法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる個別訓練及び総合訓練内容がDCGによって見直され、改訂される。
1-9.法執行(停船・移乗、立入検査、制圧)にかかる個別訓練及び総合訓練がDCGによって再度実施される。
2-1.船艇乗組員の訓練の年間計画を策定する。
2-2.船艇乗組員育成のための中、上級者研修を実施する。(デッキ上の作業(ロープワーク、消火訓練、曳航等を想定)、BRM訓練、追跡訓練等)
2-3.年間訓練計画に基づいて訓練がDCGによって実施される。
2-4.航海に係る適切な第三国研修を分析・選択し、実施する。
3-1.既存の船艇の年間メンテナンス計画を分析し改善する。
3-2.巡視艇乗組員への指導官候補者に対する研修を実施する(船外装備品の保守点検(JICA専門家による現地研修)、主機・ウォータージェット・発電機・減速機(メーカーでの研修))。
3-3.小型船の船外機のDCGの維持管理能力を分析し、研修を実施する(現地代理店を活用した研修)。
3-4.機関に係る適切な第三国研修を分析・選択し、実施する。
3-5.指導官候補者に対して定期点検(ドック入渠時)、日常点検の実践訓練を行う。
3-6.3-5で育成された指導官による、他乗組員への定期点検(ドック入渠時)、日常点検のOJT訓練を実施する。
3-7.年間メンテナンス計画に基づき、必要なスペアパーツを調達する。
3-8.船艇のスペアパーツの用途の理解促進及び倉庫管理の改善に係る研修を実施する。
チーフアドバイザー、業務調整/訓練計画策定補助、追跡訓練、停船措置・立入検査・制圧・逮捕、船体維持管理、船艇機関維持管理、第三国研修企画調整、航海訓練
主機・ウォータージェット・発電機及び減速機にかかるメーカーでの維持管理研修、第三国での航海科・機関科長期研修、その他第三国での研修(必要に応じて)
巡視艇の維持管理研修に必要となる交換部品・工具、法執行研修に必要な資機材
プロジェクトディレクター、プロジェクト管理委員会
プロジェクト事務所(机、椅子、インターネット回線を含む)、訓練に必要な船舶、供与機材の維持管理費