プロジェクトが終了しました。

2018年3月27日

2014年1月に開始した当プロジェクトは、2018年3月27日の長期派遣専門家帰国をもって終了致しました。4年2カ月の間、皆様にご支援頂きながら、無事にプロジェクト終了の時期を迎える事が出来ました。ありがとうございました。プロジェクトニュースは今回が最終回となりますので、4年間の総括的なご報告をさせて頂きます。

背景

コンゴ民主共和国は、1991年から約10年に渡る内戦の結果、保健システムが崩壊し、保健人材の地域的かつ職種の偏在が起こり、またその質が著しく低下しました。これに対応すべく、JICAは2008年から保健省次官付顧問を派遣し、保健人材開発分野への支援を開始しました。2010年11月には保健人材開発支援プロジェクトが開始され、続いて保健人材開発支援プロジェクトフェーズ2が実施されました。

活動内容とその成果

保健人材開発分析フレームワーク「ハウスモデル」を基に、モデルの土台部分(国家計画や各種規定策定、保健人材の現状の明確化等)である保健省の組織能力強化に資する活動を行いました。また、モデルの外周部分(モニタリングや関係者調整)を強化しました。

保健人材開発分析フレームワーク「ハウスモデル」

【画像】ハウスモデルとは、保健人材開発システムを包括的に捉えるためのツール、枠組みです。このModelは、11の要素から成り、保健人材開発を様々な見地から分析する必要性を「家」に見立てて表現したものです。

その結果、国家および州保健人材開発計画が策定され、これをモニタリングする枠組み(国家および州保健人材技術委員会)を活性化し、標記計画の評価および次期計画策定のための提言を行いました。また、根拠ある計画策定を目指し、介入対象2州において保健人材データベースを設置し、現実に即した計画策定を行いました。これにより、計画を策定・実施・モニタリング評価・改善するPDCAサイクルを循環させる基盤が整備されました。さらに計画実施段階では、各種政策や人材情報等の文書化を強化し、58種類の文書を発刊しました。

【画像】第1次国家保健人材開発計画策定から、実施、モニタリング評価、改善を行いました。その後、第2次計画の策定、実施、モニタリング評価と、PDCAサイクルの循環を支援しました。

【画像】PDCAサイクルを循環させる組織「保健人材委員会」を活性化させると共に、各段階で必要な技術的インプット(保健人材データベース設置など)を行いました。

インパクトレベルの成果としては、無秩序な人材の採用が介入対象州知事の指示により停止され、また無給職員3,040名のうち36名への給与支給が新規に開始されました。さらに、2008年にはWHOとJICAのみが保健人材開発分野に協力していましたが、関係者調整強化により、2018年3月には合計9つの開発パートナーが同分野に参入し、当該プロジェクトの事業実施に係る外部資金約85,000ドルを獲得しました。その結果、国家保健人材開発計画の策定及び実施を効果的・持続的に行うために必要な基盤が保健省及び対象州において強化される、というプロジェクト目標や期待される成果指標のほぼ全てが達成されました。

謝辞

これまでご支援頂きました多くの皆様に感謝申し上げると共に、コンゴ民主共和国国民の健康改善に資する協力が継続される事を期待し、最後のご挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。

【画像】

田村チーフアドバイザーによる現地最終報告会

【画像】

現地最終報告会において保健省基礎教育局長および継続教育局長から狩野専門家への記念品贈呈

【画像】

コンゴセントラル州保健大臣へのプロジェクト終了報告

【画像】

コンゴセントラル州での国営放送による取材

【画像】

ナショナルスタッフへの業務完了証明書の授与

おまけ -業務調整員の一番心に残っていること-

コンゴ民では、当プロジェクトや他の開発パートナーが開催支援するワークショップ(WS)において、参加者に対し交通費とパフォーマンス代を支給しています。

当プロジェクトの期間、たくさんの活動がありましたが、カウンターパートと過ごす中で記憶に鮮明に残っていることは、保健人材年鑑作成のためのWSを実施したときのこと。そのメンバーの中に毎年このWSに参加している真面目に働く基礎教育局の定年を控えた職員がいました。WS初日、12時過ぎてもその職員来ず…。どうしたのかなと思っていたら、フラフラになりながら部屋に入ってくる人が…、それは待っていた職員Mr.Kayembeでした。唇はカサカサで目はうつろ、足取りはフラフラ、まさに倒れる寸前。他のコンゴ人たちも尋常でない様子を察知し、しばらく見守っていましたが、ついに上司から帰宅命令が出てしまいました。それを受け私は交通費を渡しにいきました。私:「体調どお?」K:「だめだ」私:「いつから?」K:「2日前くらいから」私:「今日はもう帰って休んだ方がいい、この書類にサインして」K:「おれはそれをもらうために来てるのではない!基礎教育局として正確なデータを共有し信頼度の高い保健人材年鑑を作るために来たんだ!」と、怒られたその言葉が一番心に残っていることです。使命とプライドを持って仕事に取り組む人たちがいて、そういう人たちと共に仕事ができたことはとても幸せなことでした。

(注)気になるKayembeの体調ですが、少し良くなったものの、病名は不明、精密検査を受けたいが余裕がなく現在に至っています。