プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)国家森林モニタリングシステム運用・REDD+パイロットプロジェクト
(英)Project for Operationalization of the National Forest Monitoring System and REDD+ Pilot

対象国名

コンゴ民主共和国

署名日(実施合意)

2018年6月14日

プロジェクトサイト

コンゴ民主共和国全土及びクウィル州

協力期間

2019年4月21日から2024年4月20日

相手国機関名

(和)環境・持続的開発省
(英)Ministry of Environment and Sustainable Development

背景

コンゴ河流域はアマゾンに次ぎ世界で2番目に大きな熱帯雨林地域であり、当該地域の森林保全は本地域のみならず、地球規模の課題でもある。コンゴ民主共和国(以下、「コンゴ民国」)は、コンゴ河流域諸国の中でも最大の森林面積(1億5千万ha、世界の森林の約4パーセント)を有している。しかしながら、違法伐採を含む商業伐採や鉱山開発等により、年間約31万ha以上の森林が失われていると言われている。そのため、コンゴ民国政府は、2011年に「環境・森林・水・生物多様性国家プログラム(PNEFEB)」に基づき、木材企業や地域住民の協力を得て参加型森林管理を推進している。気候変動対策の観点からは、コンゴ民国は、2010年7月に我が国も拠出している世界銀行の「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF)」の枠組の下、アフリカ初の「REDD準備計画(R-PP)」を完成し、2012年にUNREDDの支援による「国家REDD+戦略」と同戦略の実施のための「投資計画」を策定するなど、ドナー等からの支援により、森林保全を通じた気候変動対策を進めている。なお、コンゴ民国の国家REDD+戦略投資計画の実施に必要な経費は10.4億ドルと見積もられ、そのうち、2億ドルが中央アフリカ森林イニシアティブ(CAFI)基金、6千万ドルが世界銀行の森林投資計画(FIP)基金、その他を二国間協力などによる支援を通じ実施していくこととしているが、必要な資金は未だ不十分である。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のワルシャワ・フレームワークにおいて、REDD+の実施には国全体の森林資源等を把握・管理するための「国家森林モニタリングシステム(National Forest Monitoring System:NFMS)」が必要とされているが、コンゴ民国は、森林管理の基礎情報となる森林インベントリーを1970~80年代にカナダの協力を得て約2千万haを整備して以降、更新しておらず、大半が紛失している。この状況を踏まえ、2010年に日本国政府は環境プログラム無償資金協力を実施し、コンゴ民国北西部に位置する旧バンドゥンドゥ州含む3州に対し、衛星画像データや地上調査用の車両を含む機材を供与した。また、JICAは、2012年に、開発計画調査型技術協力「持続可能な森林経営及びREDDプラス促進のための国家森林モニタリングシステム強化プロジェクト」(本要請案件の前身案件)を開始し、旧バンドゥンドゥ州(現在は、クウィル州を含む3州に分化)において、NFMSの基礎となる森林地図作成や地上調査の実施、森林参照排出レベル(FREL)の開発などを行っている(2017年12月末終了予定)。これまでの我が国及び他ドナーからの支援により、環境持続開発省(MEDD)及び関係機関がREDD+の実施や、持続可能な森林管理を促進するための能力が強化されつつある。しかしながら、広大な国土を有し、未だ人員や予算が極めて限られるMEDDや地方行政機関が、国際基準を満たすREDD+の実施や、REDD+も通じた森林管理を持続的に行っていく上では、政策面、技術面、人材育成面でのさらなる支援が求められている。このような状況を踏まえ、MEDDはJICAに対し、旧バンドゥンドゥ州での成果に基づくNFMS構築・運用と、同州から分化した3州のうちの一つであるクウィル州をパイロットサイトとした、森林減少・劣化抑制のためのREDD+事業試行のための技術協力の要請を行った。なお、本要請案件では、同じくNFMS構築のための支援を行っているFAOと連携し、UNFCCCの要件を満たす堅牢かつ透明性の高いNFMSを構築することが求められている。

目標

上位目標

コンゴ民国における国家森林モニタリングシステム(NFMS)の運用によるREDD+及び持続可能な森林管理の実施と、クウィル州におけるREDD+事業も通じた持続可能な森林管理が促進される。

プロジェクト目標

REDD+事業実施を通じた持続可能な森林管理のための環境持続開発省(MEDD)およびクウィル州関係者の能力が強化される。

成果

成果1-1:森林減少・劣化からのCO2排出量の削減測定のためのNFMSが構築される(CAFI-NFMS運用プログラムと連携して実施)。
成果1-2:クウィル州でのREDD+活動効果の評価によりNFMSが改善され、REDD+投資計画や関連政策に参照情報として提供される。
成果2-1:CAFI-REDD+クウィル州統合プログラムが実施される(注)CAFI資金で実施)
成果2-2:CAFI-REDD+クウィル州総合プログラムへの追加活動が実施される(注)JICA資金で実施)

活動

1-1-1.各森林保有地域において、活動データが利用可能となり、森林減少・劣化をモニタリングするための参照排出レベルが提出される。
1-1-2.森林と炭素を調査するための国家森林インベントリーが構築される。
1-1-3.国レベルで大規模な森林減少の事由をモニタリングするためのシステムが導入され、機能する。
1-1-4.MRV/NFMSプロセスが関係者に周知され、MRV情報の公表によりREDD+活動の結果が関係者に利用可能となる。
1-1-5.NFMS構築・運用に関わるパートナー間の調整が効果的となる。
1-1-6.コンゴ民国における単一の堅固かつ透明性のあるNFMSの構築・運用に向けた諸活動の調整のためのNFMSプラットフォームを機能させる。

1-2-1.NFMSの目的・スケジュール・方法論等を記したNFMS文書を作成する。
1-2-2.成果2における活動の成果を踏まえてNFMSを改訂する。(REDD+政策および措置(PAM)の評価など)
1-2-3.活動1-2-2による知見を投資計画の改訂や緑の気候基金(GCF)を含む関連プロポーザル作成に反映させる。

2-1-1.REDD+事業実施のための州の政策及び体制を強化する。
2-1-2.コンセッション業者・農家の参加を通じてアグロフォレストリーおよび森林保護を実施する。
2-1-3.村落住民の参加を通じ地域の自然環境を保護する。
2-1-4.自然資源管理と森林被覆の役割に関し村落住民に啓発活動を行う。

2-2-1.REDD+実施に関係するクウィル州の開発計画及び土地利用計画などの関連政策や法令をレビューする。
2-2-2.REDD+資金オプションを検討する(本案件終了後のパイロットの普及・拡大や成果払いのための外部資金)。
2-2-3.成果2-1の活動成果に基づくクウィル州REDD+パイロット事業ガイドラインを作成する。
2-2-4.パイロット地域の森林減少・劣化要因を特定し、導入するアプローチ(対策・技術等)を検討する。
2-2-5.REDD+活動に伴うCO2排出削減量の測定とモニタリングに関する研修を実施する。

投入

日本側投入

・専門家派遣:短期専門家(総括、NFMS、REDD+パイロット活動、業務調整、その他)
・供与機材:車両、バイク、マウンテンバイク、その他活動に必要な資機材
・本邦研修

相手国側投入

・C/P人材の配置:プロジェクト・ダイレクター(持続的開発局(DDD)局長)、テクニカル・ダイレクター(森林インベントリー管理局(DIAF)、園芸植林局(DHR)、森林管理局(DGF)各局長)、プロジェクト・マネジャー(DDD気候変動課長)、州プロジェクト・ダイレクター(州知事)、州プロジェクト・マネジャー(州プロジェクト・ダイレクターの指名する者)
・執務スペース及び設備(キンシャサ及びクウィル州での執務室)