エルサルバドルで初めて作成された市民憲章-チランガ市での地域社会開発モデル構築への取り組み-

2022年5月13日

プロジェクトの支援により、ついに、対象市の一つであるチランガ市において、エルサルバドルで初めての生活改善アプローチに基づいた市民憲章が策定されました。

去る4月27日の市民会議において、市民委員代表により、市民憲章についての発表会が行われました。市民憲章(市民アジェンダ)とは、その意義、市の現状と将来のあるべき姿、目指すべき将来像、目標と具体的課題、そのための対応策、ステークホルダーや協力アクターの役割把握などについて、広範な市民が集い、描き、アイディアを共有しつつ、合意された一つの正式な宣言文として市民社会が取り纏めたものです。

チランガ市の場合は、市民憲章に沿って5年間で実施するべき具体的なアクションプランも同時に作成され、7つの主要課題への取り組みが謳われています。1)市民への十分な食糧確保、2)保健、3)家計改善(小口貯蓄促進、家内経営の起業支援)、4)地方経済振興(地場産業支援、伝統的な地元産品、食文化の復興、伝統的文化財の補修と文化遺産を巡る観光振興)、5)家族及びコミュニティとの連帯、6)環境(特に、水資源の保全及び持続的農業開発)、7)道路アクセスの改善です。生活改善アプローチに基づいた集落開発計画(PACO)の策定とその実施、モニタリング評価における参画住民の知見と経験を踏まえ、市役所の職員チームが主導して、市民の多様な意見を集約したものです。

そもそも、チランガ市は(注)、他の対象市に比べて、市の計画策定や実施監理のプロセスでの住民参加が活発であり、社会開発モデルに基づいた市政運営への参加・協働促進、住民の組織化において、基本的に好ましい環境と素地がありました。

現在まで、市民憲章策定のために技術的に協力してきた組織間連携会議においても、本市民憲章が共有されています。今後は、市議会での採択、そして広範な市民、支援組織での認知と合意を取り付けて、市民憲章のアクションプラン(項目ごとに指標策定)に沿った市開発計画の作成を、市民会議が中心となり、組織間連携会議の支援を得て進める予定であります。ちょうど、チランガ市では、現存の市開発計画(PEP)が今年で終了するために、新たなプランを作成することが急務となっています。

チランガ市での市民憲章の制定は、中央政府による各市への地方交付金の大幅な削減により、従来からの予算ありきの計画策定方法が意義を失っている中で、住民の主体性、当事者意識を醸成し住民と行政の協働を促進する生活改善のアプローチを踏まえた新たな計画行政の導入と地域社会開発マネジメント、いわゆる社会開発モデルの構築に向かって大きく前進したことを意味しています。

プロジェクトは、すでに、終盤を迎え、終了まで残り8カ月となりましたが、生活改善アプローチによる住民の生活の質の向上に資する社会開発を目指して、

地域の課題について関係者全員でその対応策を考え、解決していくために協働でアクションを起こし、その振り返りを次のアクションにつなげるという一連の開発プロセスを構築して、対象市の多くが、地域マネジメントを持続的に運用できるように積極的に支援していくことにしています。

(注)チランガ市での地域社会開発モデル構築のための取り組みについては、2021年12月27日付ホームページ記事参照

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市民会議での市民委員代表による市民憲章の説明

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市民会議での参加メンバーと中村専門家

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市民会議での参加者署名済みの協議録

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策定した市民憲章