障害児にもやさしい算数の教科書を!

2023年3月24日

エルサルバドルでは、毎年教育省が算数・数学の教科書と練習帳をすべての児童・生徒に配布しています。同時にウェブサイトを通じてPDF化した教材を公開しており、小学3年生以上の全児童・生徒にパソコンが配られたことも相まって、子どもたちに一定の学習環境を提供しています。その一方で、文字の読み書きができない子どもや視覚障害のある子どもにとっては、それらの教材が必ずしも使い勝手の良いものではなく、彼らは学習に大きな困難を抱えていました。そのため、プロジェクトでは教科書をより多くの子どもたちに使いやすいと感じてもらえるよう、また、興味をもって使ってもらえるように、2022年10月から算数教科書のアクセシブル教材化についての調査を進めてきました。

上述のパソコン配布により、児童・生徒はデジタル教材へのアクセスがしやすくなりました。こうしたメリットを活かし、同調査では視覚障害児を主な対象としてPCを活用した学習法を模索しました。現在、教育省が公開しているPDF版の教科書を音声化するだけでなく、図表等に「聞いてわかる」音声説明を加えて、アクセシブル教科書のプロトタイプを制作し、盲学校で試行しました。その結果、「一部の図形は音声説明困難なため、点字教材と併用すべき」、「次頁に移動することが分かる操作音を加えた方が良い」、「PCの音声読み上げソフトと干渉し合う」等、様々な意見が寄せられました。その都度修正を行って試行を進め、最終的には「授業だけでなく、家庭での自習にも使える有用な教材である」とのコメントを得るに至りました。

その後、教育省関係者を集めて報告会を行ったところ、盲学校の校長と教員から「このアクセシブル教材は小さな一歩だが、我々にとっては非常に大きな意味を持つ一歩である」との意見が表明されたことに加え、教育省各局からもその重要性についてのコメントが相次ぎ、プロジェクトの試みは高く評価されました。また、教育省から、今回の経験に基づく算数・数学のアクセシブル教材開発の継続のみならず、他教科への展開も含めて注力していきたい旨の発言がありました。

今回の調査は新たなアクセシブル教材開発のはじめの一歩にすぎません。コロナ禍に伴う対面授業や個別指導の制限等によって児童・生徒の読解力が著しく低下しており、これが全教科の学習の妨げになっているとも言われています。障害の有無に関わらず、学習に困難を抱える子どもたちの学びを保障すべく、引き続きプロジェクトでは可能な支援を続けていきます。

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教材の音声に聞き入る盲学校の小学3年生

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手作り教材(位取り板)と音声教材との併用で学ぶ児童

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調査結果報告会の様子

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全盲者である盲学校教員の意見表明(アクセシブル教材の意義を一使用者として表明)

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