プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)初中等算数・数学教育における学力評価に基づいた学びの改善プロジェクト
(英)Project for the Improvement of Mathematics Learning based on the result of evaluation process in Primary and Secondary Education

対象国名

エルサルバドル

署名日(実施合意)

2021年1月19日

プロジェクトサイト

全国

協力期間

2021年4月26日から2025年4月25日

相手国機関名

(和)エルサルバドル共和国教育科学技術省
(英)Ministry of Education, Science and Technology

背景

エルサルバドル共和国(以下、エルサルバドル)では、これまで教育の質の向上を重点政策目標の一つとして掲げてきたが、国際学力テストである、国際数学・理科教育動向調査(Trends in International Mathematics and Science Study:TIMSS)の2007年の調査(エルサルバドルが参加した最新のもの)において、4年生の算数学力が330点、8年生の数学学力が340点と国際平均(500点)を大きく下回るなど教育の質に課題を有してきた。このため、現政権(2019年~2022年)が掲げる教育政策文書「クスカトラン計画」でも、教育の質の向上が国際競争力強化と経済発展に資することを強調している。
JICAはこれまでに「初等教育算数指導力向上プロジェクト(2006年~2009年)」や「初中等教育算数・数学指導力向上プロジェクト(ESMATE)(2015年~2019年)」を実施し、第1学年から第11学年までの教科書や教師用指導書の開発・改訂、教職課程と現職教員研修の整備・充実等を通じ、一貫して算数・数学教育の質の向上に取り組んできた。ESMATEでは全公立校の児童・生徒に学用品(文房具、制服等)を配布する「制服、靴、学用品配布プログラム」の配布物品に本プロジェクトで開発した教科書と練習帳を組み込み、同財源を活用して教材の継続的な全国配布の体制を確保することを実現した。また、インパクト評価では、ESMATEで開発された算数・数学教科書の使用を中心とした小学校2年生の児童・担当教員等への介入の結果、学力が改善(1年間で介入群の学力平均が標準偏差0.7向上)した成果をあげていることが示されている。
このように同国ではESMATEにて支援したカリキュラム、開発した教科書等の教材(以下、ESMATE教材)を使用した学習が学校現場で広がりを見せている。その一方で、一連のカリキュラム改革とESMATE教材の導入効果を子どもの学習状況や学力というレベルで適切に評価する制度的な仕組みが整備されていない。具体的には、学習状況や学力を定点的に把握する学習状況調査は存在するものの、学習評価から得られる科学的データに基づいた調査結果を活かしたカリキュラムや教科書の改訂、指導法の導入、授業や学習の改善が教育システムの中で一貫性を持って行われていないことが課題となっている。これを改善するため、評価の仕組み整備のための技術的な課題を抱えるエルサルバドルは、これまでの教科書開発を通じた実績のあるJICAに対し、本事業を要請した。

成果

・初中等教育課程の児童・生徒の算数・数学科における学習状況を評価する全国学習状況調査が実施される。
・ESMATE教材(教科書、練習帳、教師用指導書等)が学習状況調査のプロセスやその結果に基づいて改善される。
・ESMATE教材の効果的な活用により算数・数学科の授業が改善される。
・他国のニーズに応じてプロジェクト経験が共有される。

活動

0-1.ベースライン調査を実施する。
0-2.エンドライン調査を実施する。
0-3.ベースライン・エンドライン調査の結果と関連情報を教育関係者と共有する。

1-1.教育省本省内に学習状況調査チームを形成する。
1-2.初中等教育課程児童・生徒の算数・数学科における学びに関する全国学習状況調査の内容(テスト、アンケート、授業観察等)を設計する。
1-3.教育省サーバー内にテスト問題のアイテムバンクを構築する。
1-4.パイロット校において、テスト問題、アンケートの質問、授業観察ツール等を試行する。
1-5.テスト、アンケート、授業観察等の実施に向けて、あらゆる側面のロジスティクスを整備しつつ、全国学習状況調査を計画する。
1-6.1-5の計画に基づいて全国学習状況調査を実施する。
1-7.全国学習状況調査にて収集したデータ及び情報を処理する。
1-8.本省及び県レベルで全国学習状況調査結果を分析する。
1-9.分析結果を多様な教育関係者と共有する。
1-10.1-8と1-9の結果に基づき、全国学習状況調査戦略の内容を修正する。

2-1.全国学習状況調査や学校レベルの学習評価(単元テスト及び期末テスト)、エルサルバドルが参加した中南米地域の学力国際比較調査や国際学力調査、その他のテストの算数・数学科の結果を分析する。
2-2.年度当初の伝達講習、学校訪問時の随伴指導(授業観察と教員との面談)、学期間の教員の振返り活動等、県教育委員会との協働活動の結果を分析する。
2-3.2-1と2-2で得られた分析結果を基に、意見交換・協議を通じて改善案を作成する。
2-4.2-3の提案にある改善点を含めてESMATE教材を改訂する。
2-5.全国配布に向けて確認あるいは改訂したESMATE教材の最終稿を提出する。

3-1.全児童・生徒の学習を保障するため、彼らに配布される算数・数学教材(教科書、練習帳、方眼ノート、分度器・コンパスを含む文具セット、その他必要な教材教具)の規定に則り、「制服、靴、学用品配布プログラム(通称:学校パッケージ・プログラム)」と調整する。
3-2.算数・数学教育に関連する教育省の他局と県教育事務所の活動を促進するための支援計画を作成する。
3-3.ESMATE教材改訂版の印刷プロセスを支援する。
3-4.毎年の学校カレンダーに、年度当初の伝達講習、学期間の教員の振返り活動、随伴指導を組入れる。
3-5.各県の算数・数学教育に関する活動、研修チームの編成、ファシリテーター研修の計画に関して、県教育事務所を支援する。
3-6.算数・数学教育に関する伝達講習、随伴指導及び教員の振返りを行うため、県教育事務所を支援する。
3-7.ESMATE教材の効果的な使用を促進するためのビデオ教材を制作する。
3-8.成功事例の全国的な共有を目的として算数・数学大会を開催する。

4-1.各国のニーズに応じて、ニカラグア、ホンジュラス及びグアテマラのフォローアップ計画を支援する。
4-2.全国学習状況調査(やその他)の経験を、他の中南米諸国と共有する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣
2.国別研修
3.機材
4.在外事業強化費

相手国側投入

1.カウンターパートの配置

・プロジェクトディレクター、プロジェクトマネージャー、プロジェクトチームメンバー等
・教材改訂のためのDTPオペレーター、校正者

2.運営コスト

・学習状況調査費
・国内セミナー開催費
・算数・数学教材印刷配布費
・算数・数学教育に係る技術者雇用費
・プロジェクト活動のためのC/Pの移動費(燃料費含む)及びその他必要な経費

3.施設機材

・執務スペース、机・椅子、光熱費、通信費(電話、C/Pのインターネット経費)