プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)アディスアベバ上下水道公社無収水削減管理能力強化プロジェクト
(英)The Project for Strengthening Addis Ababa Water and Sewerage Authority's Management Capacity of Non-Revenue Water Reduction

対象国名

エチオピア

署名日(実施合意)

2020年9月2日

プロジェクトサイト

アディスアベバ市

協力期間

2021年8月25日から2025年7月24日

相手国機関名

(和)アディスアベバ上下水道公社
(英)Addis Abeba Water and Sewerage Authority

背景

エチオピア国政府は、2016年に国家5カ年計画である成長と構造改革計画II(2016年~2020年)(Growth and Transformation PlanII。以下「GTPII」という。)を策定し、2020年までに国内全体で安全な水へのアクセス率を83%(都市部:75%、村落部:85%)まで改善する目標を立て、水資源開発及び給水事業を実施している。エチオピア全国の安全に管理された水源へのアクセス率は4.5%(2000年)から11.4%(2017年)に改善されつつあるものの、依然としてサブサハラアフリカ諸国平均の26.9%(2017年)と比較して低い状況にある。

特に都市部においては急激な人口増加に対して水道整備が追い付いていない。エチオピアの都市人口の約25%が集中する首都アディスアベバ市では年間3.8%の増加率で人口が増加しており、これに伴って水需要も急増している。アディスアベバ市の水道事業を担うアディスアベバ上下水道公社(Addis Ababa Water and Sewerage Authority。以下「AAWSA」という。)は、2011年に策定した「BUSINESS PLAN 2011-2020」において2020年度の計画給水量を76.3万立方メートル/日とし、急増する水需要に対応すべく新規水源開発及び浄水場建設に着手するとともに、既存の水源を最大限活用するため、市全体の無収水率を20%まで削減することを目標とした。しかしながら、予測を上回る人口増加によって2020年現在の水需要は80万立方メートル/日を超えていると推計される一方で、大規模な水源開発事業は未だ計画策定段階にあり、浄水施設能力は48.6万立方メートル/日程度と、足下の需給逼迫に対応できていない。また、無収水率も2020年時点で約40%と高止まりし、そのうち、およそ7割が物理漏水として有効活用されていない。

エチオピア水セクターにおける国家最上位政策である「Water Resources Management Policy」において、水道事業は水道料金によってフルコスト・リカバリーが達成されることが原則とされている。AAWSAは漸次的なフルコスト・リカバリーの達成と、水道施設の建設・整備に必要な財源の25%を経常利益から捻出することを2020年までの経営目標として掲げているものの、過去11年間の資本的支出の約80%をアディスアベバ市の補助金に依存している。現在の料金徴収率は約92%であるものの、水道料金が約6円/立方メートル~85円/立方メートル(利用水量に応じた逓増性)と低水準に抑えられており、フルコスト・リカバリー達成のためには水道料金値上げが必要である。しかしながら、間欠給水や水圧不足に代表される低サービス水準によって、計画されていた水道料金値上げを実現できず、市の財政に依存した水道事業経営が行われている。

本事業は無収水対策を通じて既存の水資源を有効活用することで逼迫する水需要に対応し、GTPIIで重点分野とされた都市水道事業における給水サービスの改善へ貢献するために、AAWSAの無収水対策の実施・管理能力を強化することを目標として実施するものである。また、AAWSAは本事業によって策定する費用対効果を踏まえた無収水削減計画に沿って合理的な無収水対策事業を実施することで経営効率を高めるとともに、給水サービスの向上を通じて水利用者の支払い意思を高めることで収益基盤を強化し、もって健全な水道事業経営の実現が期待される。なお、AAWSAは無収水率を20%に低減することを経営目標として掲げており、本事業内容と整合するとともに、水道事業はフルコスト・リカバリーの原則の下で運営されることを規定するエチオピア国の国家政策にも合致する。

目標

上位目標

アディスアベバ上下水道公社において、無収水削減事業の費用対効果を踏まえた水道事業経営が行われる。

プロジェクト目標

プロジェクト目標

アディスアベバ上下水道公社の無収水対策の実施・管理能力が強化される。

プロジェクト中間目標

パイロット支局において蓄積された無収水対策の実施・管理能力を他支局に移転する体制が整備される。

成果

1.パイロット支局において無収水率を測定する体制が構築される。
2.パイロット支局における無収水対策の実施・管理能力が向上する。
3.パイロット支局における無収水対策の費用対効果の分析能力が向上する。
4.AAWSA本部並びに支局において、無収水対策に係る技術及び経営マネジメント能力が向上する。
5.パイロット支局に蓄積された無収水対策に関するノウハウが他の支局に移転される。

活動

成果1の活動

1-1.パイロット支局を1つ選定する。
1-2.GISマッピング及び水理解析データをレビューする。
1-3.現地調査を行って流量計・水圧計の設置位置を確認し、水理的分離計画を策定する。
1-4.流量計・水圧計を調達し、設置する。
1-5.支局レベルで無収水率のモニタリングを行い、モニタリングデータをAAWSA本部が集約する。
1-6.パイロット支局における主要業績指標(KPI)を可視化、ベンチマークする。

成果2の活動

2-1.パイロット支局の現状を、既存図面・顧客台帳等のレビューや現地踏査等を通して把握する。
2-2.パイロット支局の給配水管情報(布設年度、管径、管材、漏水補修記録等)を収集・整理し、活動2-3及び2-4に必要な基礎情報を整備する。
2-3.上記2-2の結果を踏まえ、パイロット支局の「配水管網更新計画」を作成する。
2-4.パイロット支局の無収水削減対策(漏水探知・漏水管補修・メーター不感知の削減・検針データ入力ミスの削減、不法接続の削減等)に係る「活動計画」を策定する。
2-5.活動2-4で策定された活動計画の実施に必要な作業チームを編成する。
2-6.物理的水損失対策(漏水探知、漏水管補修、給水装置の設置等)にかかるOJTを実施する。
2-7.商業的水損失の削減にかかるOJTを実施する。
2-8.活動2-4で策定された活動計画に従って、無収水削減対策を実施する。
2-9.活動結果をAAWSA経営層にフィードバックするとともに、セミナー等を通じてAAWSAの全支局に共有する。

成果3の活動

3-1.パイロット支局の財務状況(収入・費用)を把握する。
3-2.無収水対策に関する費用対効果指標を選定する。
3-3.費用対効果(評価指標)を定期的にモニタリングする。
3-4.活動3-3の結果を、パイロット支局内の無収水活動計画に反映する。
3-5.活動結果をAAWSA経営層にフィードバックするとともに、セミナー等を通じてAAWSAの全支局に共有する。

成果4の活動

4-1.AAWSA経営層に対して無収水管理に係る研修を実施する。
4-2.技術者層に対して無収水管理に係る研修を実施する。
4-3.プロジェクト活動の進捗と成果を定期的にAAWSA経営層に報告する。

成果5の活動

5-1.支局間Twinningを行う支局を選定する。
5-2.成果2、3に係る知識と技術がTwinning活動を通じてパイロット支局からTwinning支局に移転される。

投入

日本側投入

・専門家派遣
・機材供与:漏水探知・補修機器、無収水対策に必要な機材等
・本邦研修・第三国研修

相手国側投入

・カウンターパート職員の配置
・案件実施のためのサービスや施設、機材、現地経費の提供
・機材提供時の労働力と技術者の提供
・専門家用オフィスの提供