第3回合同調整委員会会議(Joint Coordination Committee Meeting)開催

2019年12月17日

2019年12月17日、首都アクラにて、Ghana Health Service(GHS)の関係各部署、JICA関係者、日本大使館から28名の参加を得て、第3回合同調整委員会会議(JCC会議)を開催しました。2018年10月の第1回会議の記事にあるように、合同調整委員会は、プロジェクトの主要な関係者が集まり、活動の成果を確認し今後の活動計画の承認を得る大切な会議です(プロジェクトニュース「第1回合同調整委員会会議開催」参照)。今回の会議では、第2回JCC会議を開催した2019年5月以降の活動の進捗を確認したうえで、プロジェクト後半の活動計画及びプロジェクト終了後を見据えた持続性の担保について話し合いました。

はじめに

会議冒頭、2019年11月にGHS総裁に就任し、プロジェクト・ディレクターとなったパトリック・アボアジ氏は、「日本政府のガーナ保健セクターへの継続的な支援に謝意を表すとともに、日本側とガーナ側両者が協働することで、母子手帳プロジェクトが既に様々な成果を生み出していることにとても満足している。」と述べました。保健省政策計画モニタリング評価局局長のエマニュエル・オダメ氏は、「UHC達成に向けて母子保健は核となる分野であり、母子継続ケアの推進はガーナの全ての人々の健康と幸福の鍵である。母子手帳が国家プログラムとして継続するよう尽力していきたい。」と述べました。さらに、JICAガーナ事務所小澤真紀次長は、GHSの強いリーダーシップのもとプロジェクトは大きな成果を上げており、特にこの半年は、アシャンティ州11郡において、州、郡の関係者とともに精力的に活動が進められてきたことを受け、州関係者に謝意を表しました。また、プロジェクト期間も中盤に入り、終了時期を見据え、プロジェクトの経験を広く共有していくとともに、どのようにプログラムを継続させていくかを検討すべきタイミングであると述べました。

【画像】会議の様子

プロジェクト活動の進捗と成果

冒頭挨拶に続き、GHS家族保健局栄養課課長エシ・アモアフル氏が、この6か月の活動の進捗と成果について説明しました。母子手帳プロジェクトには、1)母子手帳の全国展開、2)アシャンティ州の重点11郡における母子手帳有効活用、3)母子手帳の制度化、と大きく3つの活動の柱があります。1)の母子手帳全国展開においては、2019年1-3月に実施された第1回モニタリングスーパービジョン(M&S)の提言を踏まえ、主要病院における保健医療従事者への研修を開始しました。第1回研修はアシャンティ州で開催され、7病院から37名の保健医療従事者が3日間の研修を受講しました。また、保健医療従事者が自己学習できるよう映像教材の作成も進めています。プロジェクトでは、母子手帳の紹介方法・身長計測方法・カウンセリング方法等の8種類の台本を作成しました。そして、GHS内で各種教材作成の承認を担っているSBCC委員会(Social Behavior Change Communication Committee)この台本を提出し審査を受けています。同時に、プレテスト・撮影に向けた準備を進めています。2)の活動については、ベースライン調査・現状調査実施後、ガイドラインや研修教材作成過程を経て、重点11郡において母子手帳、栄養カウンセリングサービス、リスペクトフルケアの研修を進めています。(詳細後述)3)母子手帳の制度化については、5月に関係者を集めたワークショップを開催し、管理運営ガイドラインの加筆、修正作業を行いました。

【画像】全体写真

アシャンティ州重点11郡での活動

プロジェクト全体の活動進捗報告に続き、アシャンティ州の州栄養士のオリビア・ティンポ氏が、重点11郡での活動について報告しました。重点郡では、2019年7月にベースライン調査及び現状調査を実施しました。(プロジェクトニュース「アシャンティ州でのベースライン・現状調査の実施)参照)その後、9月に教材確認ワークショップおよび郡講師33名を育成したうえで、10月初旬から、11郡の保健医療従事者向け研修を開始しました。(プロジェクトニュース「栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)教材確認ワークショップと郡講師育成研修実施」「アシャンティ州11郡の保健医療従事者研修開始」参照)12月までに25研修実施し826人の保健医療従事者が研修を修了しました。そして、2020年1月に5研修を実施することで、全30研修990人への研修を完了することとなります。実技練習を多く取り込んだ研修では、研修参加者が、母子手帳記載、身長計測、カウンセリング技術等を習得していく過程をひとつずつ確認することができます。また、研修時に実施している事前事後試験では、100点満点中、平均で30点以上の改善が見られていることからも、保健医療従事者が研修を通してしっかりと知識、技術を身につけられていることが分かります。

今後のプロジェクト活動計画案

本プロジェクトの萩原チーフアドバイザーが、1)母子手帳の全国普及、2)アシャンティ州の重点郡における母子手帳有効活用、3)母子手帳の制度化と持続性の確保の3分野における2020年の活動計画案を発表しました。1)の全国展開の活動として、引き続き主要病院の保健医療従事者研修を実施し、2019年度中に247名の保健医療従事者が研修を受講する予定です。また、2回目の全国M&Sを実施し、母子手帳全国展開の状況を確認するとともに、現場で直接保健医療従事者に、母子手帳記載方法、計測方法、カウンセリング方法等の技術補完指導を行います。映像教材作成では、作成した台本をもとに一般視聴者が理解しうるかどうかを確認するプレテストを実施した後に、いよいよ撮影に入ります。2)のアシャンティ重点郡での活動では、重点11郡において研修実施に引き続きM&Sを行うことで、研修参加者が学んだことをスムーズに現場で実践できるよう支援します。また、妊婦さん、お母さん、子どもたちが健やかな日々を過ごすための食行動、保健行動を検討し発信する、コミュニティ啓発活動も実施する予定です。さらに、3)の母子手帳の制度化については、運用規定の最終化を図るとともに、これまでプロジェクト内で検討していた母子手帳管理にかかる事項を、他の既存の技術委員会が引き継いでいけるよう準備を進めます。更に、プロジェクトの経験、教訓を国内外の関係者に広く共有するための、現地視察、経験共有セミナーの開催についても大枠が議論されました。

母子手帳の持続性の確保

冒頭でGHS総裁、JICAガーナ事務所次長が触れているように、母子手帳の継続性の確保は本会議の需要な議題の一つであり、活発な議論が行われました。先に、母子保健課課長イザベラ・サゴエ・モーゼス氏が、これまでの管理運用規程の作成経緯および母子手帳改訂、印刷に関する基準・手順及び物品管理規定等、合意内容を紹介しました。母子手帳はいかなる配布場所においても無料であることを引き続き周知していくこと、印刷、保管、分配、管理を州レベルで実施していくこと、母子手帳印刷について州政府や民間企業からの支援を促進することなど、議論は多岐に及びました。特に母子手帳印刷費の資金調達は急務であり、GHS内で薬調達管理を行っている部署を介し民間資金調達仲介会社を利用し、国内の複数民間企業からの資金協力を得るといった具体的な方法についても話が広がりました。

これから

本プロジェクトは、活動期間の後半戦に入りました。今後は、これまで実施してきた研修の知識・技術の定着を目指し、全国、そしてアシャンティ州重点11郡において、モニタリング・スーパービジョンに力を入れていくこととなります。また、プロジェクト終了後もしっかりと母子手帳が活用され続けるよう、管理運用規定を最終化するとともに、知見を共有し、地方自治体、国際機関、民間企業等との連携を強めていかなければなりません。カウンターパートとともに、本会議で話し合ったことを一つずつ確実に実施することで、プロジェクト目標の達成を目指します。