全国経験共有・プロジェクト最終報告会(Dissemination Seminar)の開催

2021年12月10日

12月2日、全国経験共有・プロジェクト最終報告会(Dissemination Seminar)を開催しました。
報告会には全国16州の州保健局チームやGHS本部のカウンターパートやその他の部局、MOH、国家健康保険機関(NHIA)、財務省、ガーナキリスト教保健協会(Christian Health Association of Ghana, CHAG)、教育病院、WHO、UNFPA、USAID、JICAガーナ事務所など103名の関係者が参加し、プロジェクトの成果やプロジェクト終了後の持続性を目指した話し合いが行われました。

プロジェクトダイレクターであるGHS総裁パトリック・アボアジェ氏は、保健分野を超えた国家的ツールとしての母子手帳の重要性を訴え、プロジェクト終了後はガーナ政府が責任を持ってすべての妊婦に母子手帳を配布すべきと言及しました。総裁はまた、GHSとパートナーに対し、母子手帳プログラムのさらなる推進と持続可能性のために協力するよう促しました。そして、医療従事者への適切なロジスティクスと財政的支援、および継続的な能力強化が必要であると指摘しました。最後に、JICA専門家チーム、GHSカウンターパート、関係者の努力により、母子保健プロジェクトが成功裏に実施されたことに感謝の意を表しました。

国家健康保険機関NHIAの最高責任者であるLydia Dsane-Selby博士は、NHIAは母子の疾病リスクを早期に予防し、また、治療による医療財政負担を低減するUHC推進のためのツールとして母子手帳を評価していると述べました。すでにNHIAは2021年に50万冊の母子手帳を印刷しましたが2022年にはさらに印刷数を拡充する意向である、とも述べました。

JICAガーナ事務所の荒木康充所長は、母子手帳プロジェクトに尽力したMOH、GHS、その他の関係者に深い感謝の意を表しました。また、GHSとMOHがガーナで母子手帳プログラムを実施するために、強いリーダーシップとコミットメントを発揮したことを高く評価しました。JICAは、プロジェクトの成果を持続させるために、他のパートナーとともにガーナを支援すると述べました。

母子手帳プロジェクトのキャサリン・アドゥ・アサレと、萩原チーフアドバイザーは、プロジェクトの成果を報告しました。母子手帳の導入は、母親の立場を尊重し寄り添うケアを提供するためのヘルスワーカーの能力強化のきっかけとなりました。研修を受けたヘルスワーカーは母子手帳の健康栄養記録やイラストを活用して母子と栄養のカウンセリングを行うことができ、母親は推奨される行動をよく理解するようになりました。

以下にプロジェクトの成果の概要を示します。
・母子手帳を活用した質の高い母子保健・栄養サービスが全国で提供されるようになり、出生日や身体計測に基づいた母親の尊厳を重視したカウンセリングも.提供されるようになりました。特に母子継続ケアのギャップであった出産時のケアの受診とその記録が83%(プロジェクト開始前は41%)、産後ケアの記録は46%(プロジェクト開始前は24%)の施設で良好に行われるようになりました。
・全国で母子手帳の効果的な活用方法に関する研修を行った他、重点11郡では能力強化、機材供与、住民啓発の支援など、母子手帳を有効に活用して質の高い母子継続ケア、栄養サービスを提供するための投入を行いました。
・その結果、母子手帳を活用した栄養カウンセリング研修、研修後のコーチングを受けたヘルスワーカーが、全国規模でも質の高い栄養カウンセリングサービスを提供できるようになりました。全国で81%、重点地域では99%の母親が栄養カウンセリングを受け、全国、重点地域ともに9割以上の母親がカウンセリングで指導された内容を復唱できるようになりました。また、重点地域では92%の母子が産前、出産、産後ケアのサービス(COC)を切れ目なく受診することができました。
・母子手帳の成果が可視化された結果、国家健康保険組合や保健省、財務省による母子手帳印刷の増刷が検討されることとなり、中長期的には、政府予算にて母子手帳の印刷、モニタリングを継続することになりました。
・制度化のために作成した「母子手帳マネジメントガイド」は、今後の母子手帳プログラムの運営、継続に活用されます。

アシャンティ地域栄養担当のオリビア・ティンポ氏は、アシャンティ地域での経験を発表しました。GHSは、アシャンティ地域の11郡を母子手帳の普及のモデル地区として選びました。これらのモデル地区で行われた主な活動には990人の保健員に対する研修、医療施設での定期的な指導、コーチングなどが含まれます。さらに、推奨されるサービスを円滑に提供できるよう、体重計、身長計、ヘモグロビン測定器などの備品を11郡に寄贈しました。また、SBCC活動を通じて母子保健と栄養に関する重要なメッセージを住民に伝えられるよう支援しました。研修と研修後のコーチングを受けたヘルスワーカーは、母子手帳を効果的に活用した質の高い母子・栄養相談サービスを提供できるようになりました。その結果、より多くの母親や家族が母子保健や栄養に関するメッセージをよりよく理解し、COCのサービス利用率や母乳育児も改善されました。

ディスカッションの中で、参加者からは、アシャンティ州のグッドプラクティスをポリシーブリーフに記録してほしい、11郡の経験から学びたい、といった要望が出されました。 また、母子保健の継続的な提供や、医療従事者の継続的な能力向上が、持続可能性のための2大課題として議論されました。全国16州の州保健局長からは、州、郡、医療施設単位でも、母子手帳を有効に活用するための研修、オリエンテーション、モニタリング、コーチングを持続するためのコミットメントが表明されました。

コロナ禍、4年弱という短期間に全国での成果を可視化させることに成功したことに対し、プロジェクトは、ガーナ側関係者から多くの謝辞と祝辞を受け、プロジェクトの終了時を彩る会となりました。セミナーの最後には、プロジェクトの主な活動成果をまとめたプロジェクト・ドキュメンタリー動画もセミナーで公開されました。同動画はプロジェクト成果報告資料とともにUSBメモリーに格納され、参加者全員に配布されました。以下にプロジェクト・ドキュメンタリー動画を公開していますのでご覧ください。

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会場に掲示されたプロジェクトバナー

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会場の入り口に掲示されたプロジェクトバナー(注)

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プロジェクトダイレクターであるGHS総裁パトリック・アボアジェ氏による開会の辞

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JICAガーナ事務所 荒木康充所長によるスピーチ

【画像】全国16州の州保健局チームやGHS本部のカウンターパートやその他の参加者たち

【画像】全国16州の州保健局チームやGHS本部のカウンターパートやその他の参加者たち

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国家健康保険機関NHIAの最高責任者Lydia Dsane-Selby博士

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GHS栄養課カウンターパートのベロニカ・カーティ氏による母子手帳を活用した栄養カウンセリングサービスの成果報告