豊かな実りは、良質な種子から-種子生産への支援-

2019年11月6日

プロジェクトでは、目標である「ポン灌漑地区における農業生産の増加」の達成に向けて、様々な活動が行われていますが、その内の一つに、コメの優良種子生産への支援があります。
ガーナ政府は輸入米に対抗できる品質の高いコメの生産量をあげることを目標として掲げており、そのためには改良品種の優良な種子を利用することを推奨しています。農業食糧省では優良な種子を以下のとおり定義しています。
・異品種の混入がなく遺伝的に純度が高いこと
・病害虫などに侵されておらず健全なこと
・発芽率が高いこと
・水分が適正であること

ガーナにおける種子生産のしくみは、以下の3段階からなっています。
・育種家種子(Breeder seed):品種を導入・育成した研究者等によりその品種を維持する目的で研究所や試験場で増殖・生産されます。
・原原種種子(Foundation seed):育種家種子から生産される種子で、保証種子の元となります。原則として、研究所や試験場など、一定以上の管理ができる圃場で生産されることとなっています。
・保証種子(Certified seed):原原種種子から生産される種子で、保証種子生産者として登録された民間会社や農家の圃場で生産されます。この保証種子が、一般の農家の圃場で種子として使用されます。

しかし、保証種子生産に必要となる原原種種子の供給元であるガーナの研究所および試験場では、職員や予算が限られていることや灌漑施設が整備されていないことから、優良な原原種種子を安定して生産・供給できる体制になっていません。ポン灌漑地区でも、以前から保証種子の生産農家が活動をしていますが、供給される原原種種子に異品種が多く混入しているため、種子生産農家から異株抜き作業の労力が多大であるとの苦情が届いていました。
こうした課題を受けてプロジェクトでは、ポン灌漑地区の種子生産農家がより多く、質の高い保証種子を一般農家に供給できるよう、原原種種子のポン灌漑地区事務所による灌漑を利用した生産を支援しています。2019年4月にはポン灌漑地区事務所は農業食糧省・種子審査課へ原原種種子生産者としての登録手続きを完了、5月には研究所および試験場より育種家種子を入手し、プロジェクトが管理する圃場において育種家種子が播種・移植されました。プロジェクトは、研究所および試験場では必ずしも徹底できていなかった隔離距離の確保、除草、特に出穂期から成熟期・刈り取りまでの集中的な異株の抜き取りを行うとともに、生産の各ステップで農業食糧省・種子審査課による圃場審査を受けました。その結果、作付された3品種は原原種としての基準を満たすことが認証されました。種子生産農家からの評価も非常に高く、「この品質の種子であれば使いたい」という声が多く聞かれています。
2019年10月には、初めて、ポン灌漑地区で原原種種子が収穫されました。ここで収穫された原原種種子は、次のシーズンに保証種子生産に使われ、その後、一般の農家が種子として使うこととなります。優良種子の生産・普及を通して、より質が高く、生産性・収益性の高いコメ作りができると、期待されます。

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種子生産短期専門家による異株抜き取りに関するデモンストレーションと技術指導

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農業食糧省・種子審査課による最高分げつ期頃の圃場審査

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種子生産農家も参加して農業食糧省・種子審査課による成熟期の圃場審査

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出穂期の前後には増殖品種より早くまたは遅く出穂する異株を見つけて抜き取り

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成熟期には穂の特徴(籾の色や大小、芒の多少や長短等)を見て異株の抜き取り