プロジェクト活動

プロジェクト紹介

本プロジェクトは、平成27年度の「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)」として採択された案件です。SATREPS(サトレップス)とは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で実施している、地球規模課題解決と将来的な社会実装に向けて日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3〜5年間の研究プログラムです。

インドネシアでは、熱帯天然林伐採跡地に発生する、主にアランアランと呼ばれる雑草からなる広大な荒廃草原において、農地・林地への転換が困難な状態が続いています。本プロジェクトでは、最新のゲノム技術を用いて環境土壌中の微生物群を網羅的に明らかにし、効率的な施肥を行って生産農地への転換および生物多様性の回復と維持を目指しています。同時に、樹木の数倍のバイオマス生産量を示す高リグニン(注)含量の大型のイネ科植物を開発し、それらを用いた低環境負荷型木質材料と、燃料ペレットの開発および実用化に取り組んでいます。この成果が世界の天然林伐採跡地における環境保全、バイオマス成分の高付加価値利用方法の開拓に役立つことを目指しています。

(注)リグニンは高等植物の木化に関与するフェノール性高分子化合物で、リグニン含有率を高めることで効率の良いバイオマス生産が可能となります。

バイオマス植物生産のための施肥技術の確立

植物を効率的に栽培するためには、必要な栄養分を肥料として与える必要があります。その際、どのような肥料を与えるとよいか、また与えた肥料が実際に効果的だったか等を、土壌中の微生物の種類や数、また植物の代謝変化を通じて判断する方法を開発しようとしています。それらの方法を用い、生物多様性や環境保全に配慮しつつバイオマス植物を栽培するための施肥法の確立を目指します。

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アランアラン草原の植生回復

カリマンタン島中部のモデルサイトで、大型イネ科バイオマス植物を栽培する現地試験を行います。特に、バイオマス植物と他種作物を一緒に栽培する間作について検討し、荒廃草原を生産農地に転換する実際的なプロトコルの提案を目指します。

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高発熱型リグニンイネの作製

アランアラン草原を活用したバイオマス生産に適する大型イネ科バイオマス植物を作出することを目的とし、代謝工学によるイネのリグニン量の増強、および高発熱型リグニンへの改変を行っています。また、高発熱型リグニンを高含量で有するソルガム品種の選抜を行っています。

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イネ科植物を原料とした低環境負荷型木質材料の開発

ソルガムバガスなどのイネ科植物を原料とし、クエン酸といった天然系接着剤を用いた環境に優しい木質材料の開発を行っています。また、ソルガムを用いたペレットやバイオエタノールの開発も行い、それぞれの製造条件を確立するとともに、実用化を目指しています。

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