JICAとボゴール農科大学(IPB)がバイオリスク管理に関する技術研修を実施

2022年1月14日

ボゴール、2022年1月10日~14日

JICAとボゴール農科大学の共催で、Badan POM(インドネシア医薬品食品監督庁)(注)の実験室に所属する20名の科学者の技術力を高める目的で、5日間のバイオリスク管理研修を実施しました。ボゴール農科大学、インドネシア大学、農業省及び保健省から13名の講演者及び講師らがプログラムに参加しました。講演者は全員、インドネシアにおけるバイオリスク管理に携わる国際バイオセーフティー学会連盟(IFBA)認定専門家です。

本プログラムでは、BSL実験室におけるバイオセーフティとバイオリスク評価・管理に関する包括的な講義と実践的なグループ演習が行われました。また、PPE(個人防護具)と個人衛生、バイオスピル消毒に関する様々なデモンストレーションと実践、実験室での事故に関する卓上演習、標準作業手順書(SOPs)の作成、BSL2及びBSL3実験室訪問などが行われました。

JICAは、ボゴール農科大学獣医学部および霊長類研究センター、国立感染症研究所バイオセーフティ管理・研究部門と協議し、COVID-19検査に携わる中級・上級研究者およびBSL-2/3実験室勤務者に必要な内容を盛り込んだプログラムを策定しました。

本プログラムで得た知識や経験は、安全対策の実践を通じて、研究者の保護や周辺環境への感染予防の観点から、研究所の技術力や管理体制の向上に活用することができます。

講師らは、インドネシアでより良いバイオリスク管理システムを開発するため、実験室で働く科学者がこの種のプログラムを定期的に受講する重要性を改めて強調しました。実験室でのバイオリスク管理システムに関するガイドラインやポリシーの策定を通じて、一貫して実験室業務を行うためのバイオセーフティとバイオセキュリティの概念を広く普及し、これらの概念を定着させることが期待されます。

野生動物や環境由来の感染症に関する研究・調査には、BSL-2/3実験室を使用する必要があります。JICAはボゴール農科大学と長年の協力関係にあり、2015年から2020年にかけてJICA/JSTのSATREPSプログラムを通じて獣医学部内にBSL-3実験室を建設しています。

JICAは、SARS-CoV-2やCOVID-19などの有害な生物学的病原体による健康被害を確実に防止するためには公衆衛生分野での分析能力が不可欠と考え、実験室分析を強化するとともにこの分野での協力を継続していきます。

(注)20名の実験室所属の科学者は以下の組織から参加。
・Badan POMのPPPOMN(国立医薬品食品試験開発センター)。
・Balai Besar POM の実験室(メダン、スマラン、バンジャルマシン、プカンバル、パランカラヤ、サマリンダ、バンダランプン、バンダアチェ、ジャヤプラ)
・Balai POMの実験室(タラカン、マノクワリ、クパン、ソフィフィ、マムジュ、パンカルピナン、ベンクル、パル)

【講演者・講師一覧】
「ボゴール農科大学獣医学部」
1.Dr Drh Joko Pamungkas MSc
2.Drh Ni Luh Putu Ika Mayasari, PhD
3.Dr drh Ronald Tarigan, MSi
4.Drh Supriyono MSi, PhD
「インドネシア大学医学部微生物学教室」
5.Dr dr Budiman Bela SpMK(K)
「インドネシア大学医学部ウイルス・癌病理学研究センター(PRVKP)」
6.Aroem Naroeni DEA PhD
「ボゴール農科大学霊長類研究センター(PSSP LPPM-IPB)」
7.Dr Drh Diah Iskandriati
8.Dr Silmi Mariya SSi MSi
「PTバイオメディカルテクノロジー インドネシア-ボゴールライフサイエンスアンドテクノロジー-IPB大学」
9.Ms Reza Kristiyana SSi
「インドネシア農業省獣医科学研究センター(IRCVS)」
10.Dr Drh Susan M Noor MVSC
11.Drh Indrawati Sendow MSc
「保健省生物医学・健康基盤技術研究開発センター」
12.dr Ni Ketut Susilarini MS
13.Ida Susanti ST MSi

【画像】Dr.Budmanの講義にて、バイオリスク管理に関する規制の枠組みについて理解を深めた。

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Dr. Drh Joko Pamungkasは、実験室で必要とされるバイオセーフティとバイオセキュリティの原則を概説した。

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Dr.Diah Iskandaratiは、リスクの可能性とリスクアセスメントの結果の双方を考慮することの重要性を強調した。

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Dr. Susan M Noorが動物実験施設での必要な実践を紹介した。

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Dr. Indrawatiは、実験室内感染を防ぐために、除染と廃棄物管理について繰り返し実習することの重要性を強調した。

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Ms Ida Susantiの講義では実験室のバイオリスク管理をサポートするための実験施設と設備に焦点を当てた。

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Dr Silmi Mariyの講義では実験室のバイオリスク管理をサポートするための実験施設と設備に焦点を当てた。

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Dr.Ni Ketut Susilariniは、労働安全衛生と除染、廃棄物管理について重要なポイントを説明した。また、基本的な生物学的流出対処キットを使用した生物学的流出事故の清掃手順のデモンストレーションを指導した。

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Dr.Aroem Naroeniは、労働安全衛生と除染、廃棄物管理について重要なポイントを説明した。また、基本的な生物学的流出対処キットを使用した生物学的流出事故の清掃手順のデモンストレーションを指導した。

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殺菌剤を使用した生物学的流出事故時における洗浄の手順。

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殺菌剤を使用した生物学的流出事故時における洗浄の手順。

個人用防護具(PPE)の着用と脱着、および個人の衛生管理

【画像】手袋に粉体ローションを塗布した後、PPEを取り外すところ

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手や体にローションが検出されるかどうかを確認する。感染の可能性のある物質による汚染防止を見るために、視覚化が有効である。

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手や体にローションが検出されるかどうかを確認する。感染の可能性のある物質による汚染防止を見るために、視覚化が有効である。

実験室の訪問

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Dr. Drh. Ni. Luh Putu Ika MayasariがBSL-2実験室でバイオセーフティキャビネットの使用方法を説明する様子。

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Dr. Drh. Ni. Luh Putu Ika MayasariとDrh SupriyonoがBSL-3実験室の入退室について指示を出している場面。

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Drh Ronald Tariganは、IPB大学獣医学部のBSL-3実験室を紹介した。

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Drh Ronald Tariganは、IPB大学獣医学部のBSL-3実験室を紹介した。

クロージングセッションの様子

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Mohamad Kashuri, S.Si., Apt., M.Farm, Head of PPPOMN, Badan POM

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(左)Prof. Drh. Deni Noviana, Ph.D., DAiCVM, Dean of Veterinary Medicine, IPB大学、(右)佐野喜彦 JICAプロジェクト チーフアドバイザーが出席しています。

【画像】参加者全体写真