東日本大震災からの復興経験に学ぶ-インドネシア国中央及び地方政府関係者を東北に招き本邦研修を実施-

2020年1月16日

2019年11月5日から11月14日の10日間で、インドネシア国中央政府関係者(国家開発企画庁、土地・空間計画省、中小企業・組合省)、地方政府関係者(中部スラウェシ州、パル市、シギ県、ドンガラ県)等、合計14名を日本に招き、本邦研修を実施しました。2018年9月に発生した中部スラウェシ震災から1年が経ちましたが、依然として被災者の恒久住宅への移転が進んでおらず、多くが仮設住宅や親せきの家などで避難生活を続けるなどの課題を抱えています。その中で、現在の課題である空間整備計画策定における住民合意形成の重要性と住民の生業回復支援をテーマに掲げ、東日本大震災からの復興に取り組む東北の自治体からその経験を学びました。また、11月11日には、仙台にて開催された「第2回世界防災フォーラム2019」に参加、震災直後から本事業に協力している東松島市、釜石市とともにセミナーを実施しました。

本邦研修の一行は、津波による大きな被害を受けた東松島市、岩沼市、気仙沼市を訪問、各自治体が経験した震災復興や直面した課題について講義を受け、震災伝承館、津波対策の堤防施設整備や震災復興に取り組む市民団体や農業法人などを見学しました。
東松島市では、防災集団移転を進めるにあたり、移転する住民の合意形成がいかに大切かということを学びました。講義を担当した東松島市総務部市民協働課の難波班長は、「移転地ごとに復興まちづくり協議会を組織し、多い時には3日に1度ミーティングを開いていた。市役所と住民側とが対立してしまうこともあったが、住民代表者との事前会合の実施や情報の開示方法を工夫することで、徐々に防災集団移転について合意が形成されていった。東松島市の防災集団移転同意率は8割極めて高い。」と住民合意形成の大切さと難しさを語りました。
また、同市の農業法人アグリードなるせでは、津波被害に遭った野蒜(のびる)地区の農業再生に取り組んでいます。農業従事者の高齢化が進み、ほとんどの農家が震災を機に農業を止め、遊休農地が増加していました。アグリードなるせでは、そうした遊休農地を農家から預かり、米や野菜などを栽培するとともに、バームクーヘンや納豆などの食品加工も行い、地域産業の復興に貢献しています。また、農家の後継者不足問題にも取り組んでおり、ICTやAIを駆使したスマート農業の導入や小学生向けに農業体験を実施し、将来の農業人の育成にも寄与しています。

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自らを根っからの農業人と語る東松島市アグリードなるせの佐々木常務、津波被害のあった田畑を見事に復活させました。

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岩沼市の千年希望の丘では、震災被害に遭われた方々に祈りを捧げ、歴史を語り継ぐメモリアルミュージアムの必要性について考えさせられました。

世界防災フォーラムでは、「インドネシア中部スラウェシ地震-東日本大震災の復興経験を世界に」と題し、中部スラウェシ震災からの復興への取り組みと復興経験を世界に伝える日本の自治体の貢献が紹介されました。インドネシア国国家開発企画庁地域開発局のスメディ局長からは、同震災の復旧・復興を総括する同庁の立場から進捗状況と現在直面している課題を、また、シギ県中小企業・組合局のサミュエル局長からは、同県の生業回復、中小企業や組合への支援やコミュニティ再生活動について説明されました。日本側からは、東日本大震災からの復興に取り組んでいる東松島市復興政策部の川口主任と釜石市復興推進本部の金野係長より、各自治体での住民参加を基本とした復興まちづくりやインフラ整備について、紹介されました。

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世界防災フォーラムのパネルディスカッションでは、国家開発企画庁中小企業・組合開発局のダディン局長と中部スラウェシ州地方開発企画庁のアチョ長官を加え、活発な議論が交わされました。

本邦研修参加者からは、「行政が良い復興計画を立ててもそれがベストとは限らず、コニュニティとの対話が成功のカギとなる。」「日本とインドネシアの間には、様々な違いがあるが、震災復興成功への道は共通している。復興政策の参考となる部分は取り入れていきたい。」との中部スラウェシ震災復興への決意が語られました。

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気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館の佐藤館長によるワークショップでは、気仙沼の経験、教訓をどのように後世に伝えていくかについて考えました。

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本邦研修の終了証を手にし、「PaSiGara Bangkit!(パル市、シギ県、ドンガラ県、立ち上がれ!)」とそれぞれの役割での決意を新たにしました。