中部スラウェシ州被災地の生計回復、コミュニティ再生を推進するマニュアル普及セミナーを開催-日本の東日本大震災からの復興の経験を伝える-

2021年2月4日

2021年1月20日に、本プロジェクトで作成した「被災後の生計回復・コミュニティ再生支援マニュアル」のWebセミナーが開催されました。

本プロジェクトでは、重要な活動の柱の一つとして、生計回復・コミュニティ再生の支援をインドネシア国国家開発企画庁(Bappenas)や関係省庁、被災自治体と共に実施しています。支援の現場で実証した取組みのポイントや留意点などをまとめた自治体職員向けのマニュアルが2019年12月に作成され、2020年はそのマニュアルを活用した実際の事業で得られた知見や経験を反映して、マニュアルの改訂が行われています。改訂マニュアルのより一層の普及と効果的な活用に向けた本セミナーには、インドネシアと日本から合わせて85名がオンラインで参加しました。首都ジャカルタからは組合中小企業省などの関連省庁、中部スラウェシ州からは、州政府やパル市、シギ県、ドンガラ県の自治体職員、また中部スラウェシ州の復興支援に参加したNGO等が参加しました。日本からは、本プロジェクトの国内支援委員であった東松島市および釜石市の自治体職員の方々やJICA本部関連部署の関係者が参加しました。

セミナーでは、本プロジェクトのパイロット事業に参加したグループが、災害での液状化地滑りで被害を受けた後、避難所で食堂事業を開始し、恒久住宅に移転後も活動を継続している事例が紹介されました。同グループのリーダーであるラマワティさんからは、本プロジェクトを通じた機材支援と会計研修、パル市組合中小企業局やNGOからの資金支援を受けての食堂事業活動の報告と、「今後事業を拡大して周囲の女性達にも仕事を提供できるようにしていきたい!」という希望にあふれたメッセージが、伝えられました。

パネルディスカッションでは、自治体とコミュニティや国との連携について協議されました。その後の質疑応答では、東日本大震災からの復興に取り組んでいる東松島市、釜石市職員の方々が、中部スラウェシ州や自治体の職員であったなら、今何をすべきかなど、経験をもとに話されました。このパネルディスカッションの最後には、復興活動の先達として日本側パネリストよりインドネシアの自治体職員の方に対して、「より良いものを築くという意識を持って自治体の職員の方がモチベーション高く復興に取り組むよう、頑張ってもらいたい」、「復興はマラソンであり、遠い先を見据えて歩みを止めないことが重要である」、「震災前よりも、より良い中部スラウェシとなる新しい価値観を作っていくためにも、若い力を震災復興の原動力にしていってほしい」というメッセージが伝えられました。

本プロジェクトは、2019年から東松島市、釜石市の自治体職員の方との現地セミナー開催や、インドネシア側の政府職員が日本の復興現場に訪れて研修を受ける機会を提供するなど、交流が続いています。それらの活動を通じて、実際に復興業務に関わったインドネシア政府職員から「日本の社会的弱者に寄り添う支援の経験はインドネシアにとって参考になるものだった」とのコメントがありました。

JICA平林国際協力専門員からは「被災者中心の復興が着実に進められ、他の地域のモデルとなることを期待します。また、この経験をインドネシア関係者と東北自治体の方々の協力を得ながら世界に発信していきたい。」とのメッセージが伝えられました。これに対して、本プロジェクトのカウンターパートである国家開発企画庁(Bappenas)より「参照マニュアル作成は、日本とインドネシアの協力の一つではあるが、お互いの心と心の関係からできたものであり、これを本地域以外でも活用していきたい」との心強い決意が表明されました。

プロジェクトの活動としての生計回復・コミュニティ再生支援は終了しますが、復興現場の知見を整理して、プロジェクトが作成支援したマニュアルがインドネシア国内に普及し、中部スラウェシや他地域の復興を後押しすることを心から願っています。

【画像】オンラインセミナーの様子

【画像】セミナー集合写真

【画像】セミナー集合写真

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プロジェクトで支援したグループの食堂(当日放送されたインタビュービデオより)(避難シェルター)

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プロジェクトで支援したグループの食堂(当日放送されたインタビュービデオより)(移転後の住居前店舗)