日本の土地管理、都市・インフラ開発から学ぶ:本邦招へい報告

2022年12月20日

1.本邦招へい実施の概要

2022年10月、土地空間計画省(ATR/BPN)の官房長をはじめとする幹部職員11名の本邦招へいを実施しました。本招へいの目的は以下のとおりです。
1.ATR/BPN幹部が都市・インフラ開発における日本の法制度、計画策定、実施手法、技術にかかる理解を深める
2.都市再開発実施機関、都市空間を高度に活用した公共事業実施機関、地域開発実施機関等の関係者との意見交換によって制度構築から計画策定、実施に至る課題等を把握することで、今後の土地行政に係るプロジェクトの実施に役立てる
3.TODやスマートシティなどの複合的都市開発に対する日本の理念、開発事例を伝えることで、今後の技術支援の拡充と協力の方向性を共有する

参加者は、法務省、首都高、東京メトロ、UR、東京都道路整備保全公社、東京都主税局、海外農業開発協会、JICA本部などを訪れ、講義・ディスカッションに参加し、事業視察を行いました。

2.招へいの内容

訪問先、講義・視察内容の概要は以下のとおりでした。

日付 訪問先 講義・視察内容
10/15(土)   来日
10/16(日)   オリエンテーション
東京駅 土地の上下空間利用
10/17(月) 法務省本省 土地権利制度
さいたま地方法務局 土地登記
首都高速道路 日本橋区間地下化事業における区分地上権について
10/18(火) 東京メトロ 複合都市開発と区分地上権
UR木更津 木更津金田東特定土地区画整理事業
10/19(水) 東京都道路整備保全公社 公共事業の用地買収の流れ
東京都主税局 固定資産土地評価(路線価方式)の概要
10/20(木) UR横浜 土地有効利用事業概要と事例紹介
横浜みなとみらい現地視察
10/21(金) 海外農業開発協会 農用地管理政策、農地バンク
JICA本部 JICA小野寺理事表敬
プロジェクト成果報告
10/22(土)   離日

各訪問先では、日本の土地管理や土地開発にかかる法整備、行政や民間の取り組みについての講義と、土地利用や土地開発の事例視察を行いました。各講義、視察では、多くの質問が出て、活発な議論がなされ、予定時間を越えることもありました。約1週間、非常に忙しくはありましたが、充実したプログラムとなりました。

3.招へいの成果

(1)都市・インフラ開発における日本の法制度、計画策定、実施手法、技術にかかる理解を深める、という目的に対しては、法務省での講義、首都高速道路の日本橋地下化プロジェクトの講義と視察、東京地下鉄の虎ノ門駅複合開発の視察、UR都市機構の木更津土地区画整理および横浜みなとみらい地区開発の視察を通して、大きな成果が得られました。参加者は日本の複数の開発事例を実際に見て、それにかかる法制度、計画策定、実施手法、技術についての講義を受け、講師の方々に積極的に質問し、議論を行いました。特に首都高速道路の講義では、開発による土地の上下空間の制限とその補償の具体的な事例および補償額の算出方法を学びました。このことは、今後のインドネシアでの土地開発にかかる土地管理行政に大きく貢献すると思われます。

(2)都市再開発実施機関、都市空間を高度に活用した公共事業実施機関、地域開発実施機関等の関係者との意見交換によって制度構築から計画策定、実施に至る課題等を把握することで、今後の土地行政に係るプロジェクトの実施に役立てる、という目的に対しては、首都高速道路、東京地下鉄、UR都市機構による講義と視察において、十分な成果が得られました。開発事例の各視察現場では、講師の方々と時間をかけて意見交換を行い、インドネシアと日本のそれぞれの開発にかかる課題とその解決策について議論しました。また、インドネシアの開発にかかる土地行政において喫緊の課題である土地収用の効率化や公平な地価評価の手法に関しては、東京都道路整備開発公社および東京都主税局による講義によって、参加者にとって大きな学びがあったと思います。これらの知見は今後のインドネシアでの土地開発プロジェクト実施に大きく貢献すると思われます。

(3)TODやスマートシティなどの複合的都市開発に対する日本の理念、開発事例を伝えることで、今後の技術支援の拡充と協力の方向性を共有する、という目的に対しては、現地での視察を踏まえた参加者と専門家との協議や、JICAでのプロジェクト成果報告と評価の場における意見交換において、今後の技術協力にかかる議論をすることができました。インドネシア側からは、土地開発やランドバンクにかかる技術協力の希望が挙げられました。また、海外農業開発コンサルタンツ協会による講義は、将来の両国間の技術協力のための基礎知識としてとても有意義な講義であったと思われます。

4.参加者からの評価

参加者からは、招へいの目的に応じた講義と視察が綿密に計画され、各訪問先で多くの知見が得られたという評価をいただきました。ただ、全体的にスケジュールがタイトで、各訪問先での議論の時間をもっと十分に取りたかったとの声もありました。日本訪問の貴重な機会に、多くの場所を訪れていただきたいとの主催者側の考えがありましたが、各所での議論の深堀、余裕のあるスケジュールというのは今後の要留意事項です。
参加者は、訪問先でのおもてなしやきめ細やかな準備と説明対応に対して、感謝を示されながらインドネシアに帰国されました。今般の招へいで持ち帰っていただいた知見がインドネシアの土地管理、都市・インフラ開発に活用されることが期待されます。

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法務省赤レンガ棟前での集合写真

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浅草での日本文化視察

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UR木更津視察(バス内での説明)

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東京都主税局の講義

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JICA小野寺理事表敬

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JICA受付前での集合写真