プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)学習環境改善を通じた初等教育退学抑止プロジェクト
(英)The Project for Promoting Positive Learning Environment for All Children

対象国名

ヨルダン

署名日(実施合意)

2021年10月10日

協力期間

2021年12月7日から2025年12月6日

相手国機関名

(和)教育省
(英)Ministry of Education

背景

ヨルダン政府は「国家教育戦略計画(2018-2022)」において、国家人材育成戦略に沿った質の高い教育を子どもに提供し、難民を含むすべての子どもが平等に教育にアクセスする機会を確保することを目指している。しかし、シリアを含めた周辺諸国からの多くの難民の流入によって、ヨルダン政府は多大なる財政負担を強いられ、二部制の導入や教師の新規雇用など各種対応を行ったものの、未だアクセスは不十分な状況にある。また、従前から試験偏重教育であったところに、過密教室・授業時間減少の影響によって教育の質が低下し、学習外活動の機会なども不足していることから結果としていじめ・校内暴力・差別、ドロップアウトなどの課題も生じている。教育省とUNICEFの調査(2020)によれば11万2千人の学齢期の子ども(6歳~15歳)が不就学の状況にある(全体の6.2%)。不就学率は特にシリア人児童で高く、2019年は約3人に1人(36%)が不就学という状況にある。ヨルダンにおける不就学率は学年が上がるごとに、特に6年生以降に顕著に上昇するが、これを抑止するためには、学習基盤が形成される初等教育段階(1年生から6年生)において早期介入・対策を取ることが必要と考えられる。

また、2020年3月以降新型コロナウイルス感染症対策として学校が閉鎖され、子どもたちの学びの環境はさらに悪化した。2021年9月、約18か月ぶりに学校が再開されたが、現場は混乱状態にあり、遠隔教育期間の教育機会の格差拡大に伴う不就学や退学の更なる増加が懸念されている。このような中、教育省は将来的な在宅遠隔学習と通学を組み合わせたブレンド教育を見据え、遠隔教育システム(Darsak)を導入した。しかしながら、2020年4月にUNICEF、UNHCR、WFP等複数の国際機関が実施した緊急調査2によれば、回答者の23%が自宅でインターネットにアクセスできる環境になく、また家庭における通信機器等の不足等により回答者の46%のみが教育省の運営するウェブサイトにアクセス可能など、脆弱層が遠隔教育導入によって学習を継続することが更に困難となっている。

これらの課題を踏まえ、教育省はJICAに対し、難民等脆弱層を含む全ての児童が学習を継続できる環境整備のための技術支援を要請した。そこで本事業では、子どもが安心して通うことができるよう、学校ベースの活動を通じて、初等教育段階における学習環境整備を目指す。

目標

上位目標

学習環境改善モデル(Positive Learning Environment(PLE)モデル)がパイロット校以外でも普及する。

プロジェクト目標

学習環境改善モデル(PLEモデル)の普及準備が整う。

成果

1.児童の就学継続を促す学校ベースの活動が特定される。
2.学習環境改善のための学校向け活動実施要領が開発される。
3.学習環境改善のための行政向け普及実施要領が開発される。
4.学習環境改善モデルが(PLEモデル)が開発される。

活動

1段階目:学校状況調査と小規模活動での施行

1-1.学校の抱える課題や現時点の取り組み、他ドナーの支援に関して情報を収集する。
1-2.既存の関連する活動をレビューする。
1-3.ワークショップを開催する。
1-4.学校ベースの活動案を取りまとめる。
1-5.活動1-4で取りまとめた活動案を小規模で試行する。
1-6.活動案の有効性と実施可能性を検証する。

2段階目:学習環境改善モデルの開発と拡大計画の策定

2-1.ベースライン調査を実施する。
2-2.学校向け活動実施要領をドラフトする。
2-3.第一次パイロット校を選定する。
2-4.第一次パイロット活動を実施する。
2-5.エンドライン調査を実施する。
2-6.活動2-5をふまえ、学校向け活動実施要領を最終化する。

3-1.ベースライン調査を実施する。
3-2.行政向け活動実施要領をドラフトする。
3-3.第二次パイロット校を選定する。
3-4.第二次パイロット活動を実施する。
3-5.エンドライン調査を実施する。
3-6.活動3-5をふまえ、行政向け活動実施要領を最終化する。

4-1.全国展開計画を策定する。
4-2.全国展開計画が国家教育政策に反映されるよう働きかける
4-3.各種実施要領、全国展開計画、国家教育政策を踏まえ一連の活動をPLEモデル化する。
4-4.PLEモデルが政府承認される。
4-5.PLEモデルがプロジェクト終了後に全国展開されるための資金と人員が確保されるよう働きかける。

投入

日本側投入

1.専門家派遣
2.本邦研修
3.プロジェクト運営に必要なコスト
4.機材供与

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
2.執務スペース、必要備品の提供
3.プロジェクトに関連する必要なデータの提供