アカシア・トルティリスという樹種

2015年10月1日

アカシアという木は、多くの詩や歌や小説の題材にされていて、その響きにはどこかロマンティックな雰囲気を感じませんか。でも、このようなアカシアのイメージは、実はニセアカシアから来ていて、本当のアカシアのそれとは全然別物なのだそうです。本当のアカシア属は約600種もあって、熱帯から温帯に分布するのだそうです。ケニアにもたくさんの種類のアカシアがありますが、たいていは恐ろしく鋭く、巧妙に動物や人間をひっかける棘をもっていて、とてもロマンティックとは言えません。

私たちのプロジェクト活動の対象樹種として、このホームページで取り上げているのはほとんど全てメリア・ボルケンシーばかりですが、このアカシア・トルティリス(以後アカシア)はもう一つの対象樹種なのです。アフリカのサバンナに頭が平たい木が立っていて、キリンが長い首を伸ばしてその葉っぱを食べている絵をご覧になったことがあれば手っ取り早いのですが、どんな木かというと、まさにそのイメージの木です。遠目には分かりませんが、近づいて見ると、枝には爪楊枝くらいの白くて鋭い棘がたくさん生えています。キリンはよくも上手にその葉っぱを食べるものだと、私たちはいつも感心してしまいます。

そのアカシアの葉っぱは、キリンだけでなくケニアで無数に放牧されているヤギたちの大好物でもあり、これをたくさん食べると乳がよく出て、肉が美味しくなると言われています。ヤギの乳や肉は、ケニア人の生活に欠かせないご馳走です。また、アカシアの枝や幹は良質の炭の原料になります。ケニアでは、総人口の約7割の人々が薪炭などの非化石燃料で煮炊きをしていますから、これまた生活に欠かせない木です。炭にしてしまわなくても、材質自体が良質なので、木材としての用途もあります。そして、この樹種も成長が非常に早く、10年もすれば立派な成木になるのです。

ということで、私たちのプロジェクトではこの樹種も、ケニア全土の約7割を占める分布地域から100系統の優良木を選抜し、その種子を植栽して実生採種園(接木や挿木などではなく種から発芽させる苗木を使った採種園)を造成することにしています。この採種園のために、キツイとキブウェジのメリア採種園の隣に、それぞれ6.1ヘクタールの面積(東京ドームの約1.3倍)を整地しました。2015年6月現在、優良木100系統の選抜を完了させ、12月初旬の第1回目植栽に向けて約30系統の種子の播種にかかるところです。メリアとともに、アカシアの生育も、どんなパフォーマンスを見せてくれるのかと楽しみです。

(なるみ)

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アカシアの葉を食べるキリン

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アカシア・トルティリスの大木

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アカシア・トルティリスの花

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アカシア・トルティリスの葉とトゲ

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アカシア・トルティリスの実

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アカシア・トルティリスの種子

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テスト植栽の成長記録(0か月)

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テスト植栽の成長記録(10か月)

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テスト植栽の成長記録(14か月)

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テスト植栽の成長記録(20か月)

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テスト植栽の成長記録(28か月)

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アカシア実生採種園の整地(2014年10月)

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【画像】キツイのアカシア実生採種園(左側赤枠内)

【画像】キブウェジのアカシア実生採種園(図面の中央部分)