第五年目の活動まとめ

2017年7月18日

2016年7月から2017年7月10日までが、本プロジェクトの第五年目になりますが、プロジェクトの最終年として、総括と引継ぎを行う年となりました。
この年にしたことは、
1)改良メリア管理・流通システムの構築
2)Forest Farmer Field School(FFFS)の実施
3)全サイト管理システムの整備
4)TICAD VIのサイドイベント等への参加
5)KEFRIキツイ地域拠点への「改良メリア管理・配布ユニット」の設置
6)国際コンフェレンス(成果発表会)の開催
というような活動でした。

第4年目からの本プロジェクトの主活動は、研究から普及へとシフトしてきていて、改良メリアの管理・流通システムの整備がこの年の重要課題となりました。理屈としては改良メリアと一般のメリアの違いは理解できても、改良メリア自体がまだ検定途上であり、目に見えて明確な差が確認されていない以上、これを厳密に区別して管理・流通させるというのは本来かなり難しい作業です。ですから、管理・流通システムの整備というのは、長い目で見ながら段階的に実施するという作業になります。こういう場合、形から入るというのも一つの戦略で、本プロジェクトでは「改良メリア管理・配布ユニット」という部門をケニア森林研究所(KEFRI)のキツイ地域拠点に開設し、2ヶ所のメリア採種園で採取された改良メリアの全種子をこのユニットで一元的に管理することにしました。そして、この種子を扱うための研修やワークショップを各地の苗畑業者や各カウンティの担当者を招いて実施しました。この活動は、今後KEFRIによって引き継がれて、より充実した普及システムが整備されていくことになります。

将来実際に改良メリアのユーザーとなる農家の皆さんを対象に、第4年目から1ヵ所で試行的に実施していたForest Farmer Field School(FFFS)を、3カ所に拡大して本格的に実施しました。この活動では、もう一つのカウンターパート機関であるケニア森林公社(KFS)と協力し、1ヵ所約20人の農家をグループ化して、実際に改良メリアと一般のメリアを育成しながら、その違いを実感して改良メリアに関する認識を深めてもらいました。このFFS(Farmer Field School)という普及手法は、もともとFAOが農業用に開発したものですが、以前JICAが実施した『半乾燥地社会林業プロジェクト』(2004年3月〜2009年3月)がこれを林業に導入し、FFFSとしてケニアで確立しました。本プロジェクトとしては、過去のアセットの活用として利用し、一定の効果を上げつつあります。

2016年6月から『持続的森林管理のための能力開発プロジェクト』(CADEP-SFM)が立ち上がり、本プロジェクトの活動の大部分が、このプロジェクトに引き継がれることになりました。そのために、少々複雑だった本プロジェクトの管理・会計業務等を整理して、なるべく簡単に運営できるようにする体制作りを終了半年前から始めました。また、ケニア側と日本側とのリエゾン役となる人材の育成も進め、抜擢した人材には管理・会計業務全般をマスターしてもらいました。育種という息の長い仕事を考えれば、本プロジェクトは必要な施設を整備して、その端緒を付けたに過ぎません。引継ぎ後には、この体制がうまく機能して、更なる成果の積み上げが順調に進むように願っています。

2016年8月には、ナイロビでTICAD VIが開催され、これに伴うサイドイベントが林業分野でもいくつか開催されました。これは日本国外で開催された初めてのアフリカ開発会議で、ケニア国内でも非常に注目され大きな成果が期待されています。REDD+やサブサハラの旱魃レジリアンス関係の活動を主とする上記の『持続的森林管理のための能力開発プロジェクト』も、このTICAD VIに合わせて開始され、「干ばつレジリエンス強化のための砂漠化対処アフリカイニシアティブ」が高らかにうたわれました。一方、本プロジェクトの主題は気候変動対応ですが、この地球規模の問題にケニアからアプローチするプロジェクトとして、サイドイベント等に参加して広報活動を行いました。

5年間のプロジェクトの総括として、2017年2月に成果発表を目的とした国際コンフェレンスを開催しました。全4日間の日程で、前半はKEFRI本部大ホールでのプレゼンテーション、後半はキツイとキブウェジのメインサイト視察という日程で、エチオピアやタンザニアからも研究者を招き、約70名の林業セクター関係者の参加を得ることが出来ました。ケニアの環境・天然資源大臣や、駐ケニア日本国大使のご臨席も賜り、本プロジェクトの全ての活動を総括し、一定の評価を頂く場となりました。また、日ごろから多くの協力をして頂いていたにもかかわらず、プロジェクトの全貌がなかなか実感してもらえなかった遠隔地のサイトの関係者も招いたので、相互交流やサイト視察などを通してプロジェクトに対する理解を深めて頂く場ともなりました。

(なるみ・たけだ)

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改良メリア普及ワークショップ

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改良メリア種子取扱い業者向け研修

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改良メリアの業者研修受講証明書授与

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改良&一般メリアを比較するFFFSメンバー

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FFFS活動で学ぶ将来の改良メリアユーザー

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2016年8月27日TICAD VIサイドイベント

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改良メリア管理・流通ユニット除幕式

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除幕されたユニットの看板