メリアの仕立てジレンマ

2017年7月18日

メリア・ボルケンシーについては、採種園と検定・展示林を整備しましたが、植栽後にはそれぞれの目的が果たせるように、適切な仕立て作業を実施しなければなりません。採種園は文字通り種を採る施設ですから、それぞれの木が枝をたくさん張って、上よりも横に伸びるように仕立てます。一方、検定・展示林はその性質を検定し、良い材を取るための見本となる施設ですから、その優位的性質を引き出し、一定の長さの節目のない材が取れるように、途中の幹に枝を付けず上にまっすぐ伸びるように仕立てていきます。

検定・展示林の仕立ては比較的単純です。4.5mの真っ直ぐな材を取ることを目標に、幹に出てきた枝の芽を、適宜芽欠きしていけば、自然に出来上がります。しかし、良い材には太さも必要ですから、あまり芽欠きし過ぎて枝や葉が減って光合成が出来なくなり、幹が太らなくなってもいけません。この辺のバランスを見極めることが一つの技術で、それを考慮しながら仕立てていきます。メリアは成長が早いので、植栽後約2年間は一定の大きさに育つまで、この作業に追われることになりますが、その後は強風や病害虫などの被害に注意していれば、比較的楽に収穫に持ち込めるのです。

一方で、採種園は適宜「断幹整枝」という作業を行いながら仕立てていくことなります。主幹の頭を切って上に伸びることを押さえ、枝の張り方を整えて、少しでも多く着果させ、それをできるだけ容易に採種できるようにする大事な作業です。切る箇所や角度、切った後の処置など、特別な技術が必要な作業ですから、日本側実施機関である林木育種センター(FTBC)の短期専門家が来訪し、ケニア森林研究所(KEFRI)のスタッフ達にその技術を直接教授しました。2シーズンほどこのような技術移転が行われた後、3シーズン目はKEFRIスタッフ達だけで実施できるようになりました。しかし、この作業には非常に悩ましい問題が付いて回るのです。通常この作業は、雨季後に成長が止まったタイミングで実施するのですが、実はこの時期、メリアの母樹にはたくさんの花や蕾、前シーズンの花が実を結んだ果実がどっさり付いているのです。これをバサバサと切ってしまうと、収穫間近の果実や、次のシーズンの実りを約束する花をみんな放棄してしまうことになります。あちらを立てればこちらが立たず、タイミングも逸することはできない、何とも頭の痛い問題です。

本プロジェクトにはそのオーバーオールゴールとして、「プロジェクト終了約3年後に、25万個の種子を生産できるようになる。」という設定があるので、そのためにもできるだけ大量の種子が生産できるように採種園を仕立てなければなりません。しかし一方で、採種園としての体裁を整備することも重要です。また、自然が相手ですから、終了後3年の間に異常気象等が発生し、それが種子生産にどんな影響を及ぼすかもしれません。このオーバーオールゴールを達成するためには、現場での慎重な観察に基づき、厳しい検討を繰り返しながら、今後の「断幹整枝」を続けることが必要です。ここに、机上の論理だけでは決して設定も判断もできない難しさがあるのです。

(なるみ・たけだ)

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メリア検定・展示林の仕立て作業の様子

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メリア採種園の枝打ち指導(FTBC短専)

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習った通りにできるかな?(KEFRIスタッフ)

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3シーズン目から自力で実施

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着果している枝を落とすのは残念だが…

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注意しないとミツバチの群れがいたり…

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カメレオンがいたり…(分かりますか?)ケニアの人はなぜかカメレオンをすごく怖がります。