改良メリアの普及

2017年7月18日

本プロジェクトでは、開始直後の2012年からキツイとキブウェジという町に2ヶ所のメリア採種園を整備してきましたが、早くも植栽後第3年目から収穫ができるようになりました。プロジェクト終了間近の現在、既に4,900kgもの実の収穫が有りました。これらの実から取り出される種子は、ケニア全土から選定した優良木のDNAを受け継いでいる「改良メリア」の第1世代であり、一般のメリアとは違います。今後、第2世代、第3世代と改良は続き、更に付加価値の高い種子が得られることになりますが、せっかく開発したこの改良メリアを正しく取り扱い、正しく流通させるシステムの整備は、種子の改良と同様に重要です。本プロジェクトでは、その初期的システム整備として、「管理・流通ガイドライン」や「種子取扱業者向け普及教材」などを作成しました。

2016年11月には、ケニア森林研究所(KEFRI)のキツイ地域拠点に「改良メリア管理・配布ユニット」を開設して、改良メリア専用の種子保管機材一式を整備しました。この開所式に合わせて、「改良メリア管理・流通ガイドライン」や「種子取扱業者向け普及教材」もケニア政府環境・天然資源省の代表によって、正式に公表されました。2ヶ所の採種園で収穫されたメリアの実は、それぞれの現場で皮を取り除いてナッツ状に下処理された後、このユニットに運ばれて一元的管理を行うことになります。そして、必要に応じてこのナッツから種子を取り出します。ナッツ1個から大体2〜3個の種子が取れます。取り出された種子は、1kg当たり6,000シリング(大体1シリング=1.1円)という価格で種子のまま販売するか、発芽させて1本約50〜60シリングという苗木にしてから販売するかの2通りです。種子と苗木のどちらを購入する方が得なのかというと、お薦めは苗木の購入です。何故かというと、メリアをうまく発芽させて苗木にするには結構なコツが必要で、経験を積んでこれを習得するか、きちんとトレーニングを受けて習得しなければまず失敗します。苗木にしたものを購入すれば、後は適切な時期に適切な場所に植えれば、ほぼ確実に活着して成長を始めます。

また、改良メリア流通システムでは、改良メリアを一般メリアと区別して取り扱うために、その取り扱い方法の研修を実施して、その受講者にのみ販売することとしました。本プロジェクトでは、そのための研修やワークショップを、各地の苗畑業者と林業行政担当者を対象に2回ずつ実施しました。この活動には延べ約80人の受講者が参加し、それぞれの参加者が、その流通システムに関する知識を学んだり、改良メリアの知識やその取扱いなどを最終消費者(農民など)に正しく伝達できるように、フリップチャート式の教材の説明方法を学んだりしました。改良の途上にあるメリアは、今後代を重ねながら更に優秀な種子が開発されることになりますが、これを適切に取り扱うことを通して、効果的な優良種子の普及システムがケニアに構築されることを願っています。

(なるみ・たけだ)

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それぞれのメリア母樹から分別採種

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どのメリア母樹の種子かメモを付けておく

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個別にデータを取った後系統別にまとめる

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メリアはナッツの状態で保管すると長持ち

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改良メリア管理・配布ユニットの室内

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改良メリア管理・配布ユニットで一元管理

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ガイドラインと普及教材を公表

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改良メリア普及研修を実施

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ガイドラインや研修教材作成のサポートを頂いた短期専門家