〆の乾杯

2017年7月18日

さあ、いよいよ本プロジェクトニュースの最終回となりました。もしも、この40本のニュースを全部読んでくださった方がいらっしゃるのなら、ここに心から御礼を申し上げます。振り返れば、この5年間、この場に書ききれないほどいろいろなことがありました。もちろん楽しいことばかりではありません。戸惑ったこと、腹が立ったこと、がっかりさせられたこと、正直に言って、このようなマイナスの思い出の方が多いかもしれません。それでもここまで頑張って来られたのは、やはり苦楽を共にし、一緒に汗をかいた「仲間」(カウンターパートとか、関係者とか、同僚とか、そんな言葉で呼びたくありません。)の優しい気持ちに、ことあるごとに癒され、支えられたからだと思います。

プロジェクトを計画通りに遂行することは、時として非常な困難を伴います。資金的にも人材的にも十分な準備がない場合、それを克服するために、各スタッフは手弁当で何人分もの仕事をしなければならない状況に直面します。プロジェクト期間中最大の山場の作業にさしかかったときにも、このような事態がいきなり発生しました。元来ケニア側負担である作業関係経費が、突然ショートしてしまったというのです。こちらとしてみれば、納期を厳守しなければならない中小企業の経営者のような状況ですから、作業を計画通りに開始するよう、彼らに相当の無理を言わねばなりませんでした。「手当なしでそんなハードな仕事はちょっと…。」と、最初は困惑するばかりでなかなか首を縦に振ってくれませんでしたが、最終的には納得してその無理を聞いてくれました。こちらも必死でしたが、彼らもその気持ちを分かってくれたのだと思います。一旦現場に出たらそこはプロ、厳しい作業条件の中、彼らは黙々とノルマをこなしてくれました。

2013年9月のある週末に、ナイロビのショッピングセンターでテロが発生し、多くの犠牲者が出た事件がありました。その時、事件発生直後に誰よりも早く安否を気遣って電話をくれたのは、プロジェクトで雇用しているドライバーでした。日本人もよくそのショッピングセンターに行くことを知っていたこのドライバーは、自分の身内や友人よりもまず我々日本人専門家のことが心配になったそうです。幸い私たちは別の場所にいて難を逃れましたが、もし本当にそのショッピングセンターに居たら、「これから助けに行くから!」というような電話口の勢いでした。また、このドライバー達は、3日で約1500キロメートルもの距離を走破するハードな出張を、プロジェクト後半のほぼ毎週、文句も言わず無事故で成し遂げてくれました。

上から下まで全てのレベルの仲間の協力が結実して、プロジェクトの完了が迎えられます。誰一人として欠かすことはできない仲間でした。だから最後は、「このプロジェクトを皆でやって本当に良かったね!」と笑顔で喜び合いたいのです。〆の乾杯は、やっぱりキリっと冷えたタスカービールでしょうか?

(なるみ・たけだ)

【画像】キブウェジ検定林から、採種園越しに見たキリマンジャロ(2015年10月)