プロジェクトが始まりました!

2015年2月12日

ケニアでは、2010年の憲法改正に基づく地方分権化が2013年から本格化しています。地方分権には、国の行政機能を地方が代行するdelegation(委任)、国が地方に支部・支所を設けて物理的に権限を分散するdeconcentration(分散)と、国の権限を完全に地方に移譲するdevolution(委譲)の3種類がありますが、ケニアの保健セクターにおける地方分権は、devolution(委譲)です。ケニアの多様な自然・社会環境に応じた適切な保健医療サービスを提供すること、また、これまでの部族間対立の悲劇を繰り返さないためにも、思い切った委譲という形での分権化は考え方としては正しいのだと思いますが、かといって、地方分権をしたからと言って、すぐに医療サービスが改善するということは期待できません。そればかりか、今までは中央の指示に従っていればよかった地方行政が、これからは自分たちで考えて決めていかなければならないという、大きなチャレンジに直面しているといえます。

この状況において、私たちのプロジェクトは、分権後のカウンティ政府の保健行政能力の向上を支援するために、2014年の11月から活動を開始しました。具体的には、「中央政府とカウンティ政府間、またカウンティ政府同士の調整機能の改善」「カウンティ政府の保健局の役割・責任の明確化」「カウンティ政府の職員を対象にした行政能力向上のための研修プログラムの改善」そして「カウンティ間の相互学習機能の確立」の4つの分野において支援するという内容です。これを、日本人専門家7人とケニア人スタッフ4人の合計11人という体制で、5年間の予定で実施します。

保健分野では、これまで多くの援助機関が支援してきており、分権化に伴って、彼らもまた、様々な形で新しい保健行政の確立を支援しています。ですので、私たちのプロジェクトが単独で完結したものとなるのではなく、他の様々な関係者との調整の中で私たちの役割を見つけ、明確にし、関係者と相互に協力しながら進めていく必要があります。また分権化の過程はまだ始まったばかりで、中央政府とカウンティ政府はお互いに気を使い合いながら多く課題に取り組もうとしています。この分権化の進捗にも目配りしながら、柔軟に対応していくことも求められるでしょう。様々な意味で、チャレンジングなプロジェクトだといえますが、ケニアの新しい保健行政を作っていく場面において、重要な役割を担う機会を得たことは、非常にありがたいことだと思います。

この案件が形成されるまでには、JICA本部とケニア事務所の担当者の皆さんに加え、過去のJICAプロジェクトや個別専門家の方々の多くのご尽力があります。また、実は私たちがケニアに来るにあたって、「やっと始まるのか」とケニア側も待ち焦がれていたという反応が多くあったと聞きます。これまでの多くの方々の努力と、ケニア側の大きな期待に応えるべく、チーム一丸となって全力で取り組んでいく覚悟です。

地方分権下におけるカウンティ保健システム・マネジメント強化プロジェクト
チーフアドバイザー
伊藤毅

【画像】

プロジェクトマネージャーのDr. Kiimaと