パートナー・カウンティ支援:ケリチョー・カウンティでのモニタリング・評価計画策定

2016年9月13日

「保健システムマネジメント/カウンティ保健計画」担当団員:齊藤佳央里

本プロジェクトの2年目から、保健省との中央での活動に加え、2か所のパートナー・カウンティで、現場での支援活動を実施しています。一つは、お茶の生産で有名なケリチョー・カウンティ、もう一つは、お米の生産で有名でケニア山の麓に位置するキリニャガ・カウンティです。「パイロット」カウンティではなく「パートナー」カウンティと呼んでいるのは、地方分権後のカウンティ政府の自主性を尊重してということと、カウンティでの活動を通じて得られた実務的教訓や成功体験を通して、他のカウンティも学ぶことができる先進事例をともに作っていくことを共通の目的とする、という背景からです。パートナー・カウンティでの活動を機会として、ケニアの全カウンティが本プロジェクトの成果を享受し、各カウンティでのマネジメント能力の強化に貢献できることを目指しています。

カウンティ保健局のマネジメント能力強化の第一歩として取り組み始めたのは、「中期支出枠組み(Mid-Term Expenditure Framework、MTEF)」の計画・管理能力の強化です。地方分権化によりカウンティ政府も、保健予算を自ら割り当てなければならなくなりました。それぞれのカウンティで開発の優先分野は異なるので、カウンティ予算に占める保健関連予算の割合は、数%のカウンティもあれば、30%を越えるカウンティもあり、ばらつきが大きいのが現状です。また、地方分権によって中央保健省からの指示がなくなったことにより、年間保健活動計画書を策定していない、あるいは、策定するのがかなり遅いカウンティが存在することが、本プロジェクトの第1年次で実施した現況調査から判明しました。そのため、現実的で説得力のある活動計画書を策定し、カウンティ政府からより多くの予算を獲得することを目指して、ケニアにおける予算策定の共通枠組みであるMTEFのマネジメント強化に焦点を置くことにしました。

これに関連して今回は、ケリチョー・ウンティでの保健モニタリング・評価計画の策定支援についてご紹介します。

モニタリングは、策定した計画の最終的な目的を達成するために不可欠な管理活動で、活動が計画通りに進んでいるか、計画通りに目標の達成に近づいているかを確認し、もし計画通りでなければ、原因は何か、どうすれば期待通りの目標を達成できるかを話し合い、必要な対策を実施する、という一連の活動を定期的に行うものです。一方、評価は、実施した活動が実際にどのような価値を生み出したかなどを判断し、そこからの学びを次の計画策定に活かしていきます。

ケニアの保健分野では、保健サービスがどの程度提供されているか、保健状況はどうか、などの保健指標のレビューは比較的行なわれていますが、モニタリングと評価の違いについては必ずしも理解されておらず、特に計画書に記載されている活動の実施状況とそれによる具体的な成果の達成の確認については十分な注意が払われていません。そのため、事業実施の経験からの教訓などを適切な形で抽出することができず、その年の経験が次の年の保健活動計画の策定に活かされず、毎年、自分たちがやりたいことを詰め込んだ非現実的な計画が繰り返し策定されているという状況です。

ケリチョー・カウンティでは、モニタリング・評価強化の第一の活動として、2016年6月から、モニタリング・評価をしっかり実施するためには何をしなければならないかを示す「評価枠組み」と、それに基づいたモニタリング・評価の実施計画を含む「ケリチョー・カウンティ保健モニタリング・評価計画」の策定を始めました。保健サービスや保健状況などの保健指標は、カウンティと国の両方がデータを集計しなければなりませんので、モニタリング・評価の方法は、国とカウンティの間で一貫性を確保しなければなりません。そこで、保健省の「保健セクターモニタリング・評価枠組み」を参考にして策定を進めています。

次に、具体的なモニタリングの仕組みですが、まず、数多くの保健指標の中から、四半期ごとのモニタリングでの優先指標を、ケリチョー・カウンティが行っている優先的保健サービスに基づいて選ぶことにしました。中央の保健省は現在も保健指標の再整理を行っている最中ですが、改訂中の指標マニュアルにある指標の数は300を超えています。その全ての指標を全員でレビューしようとすると、指標の確認だけで膨大な時間がかかってしまい、目標達成の見通しや対策についての話し合いができずに終わってしまいます。そのため、優先指標を選定するのですが、これがなかなか簡単にはいきません。カウンティ保健局の職員の多くは、母子保健、HIV/エイズ、マラリア、結核、環境衛生などの個別のプログラムを担当しており、ドナー側も個別のプログラムを支援しています。そのため、自分たちの担当プログラムに関連する指標を優先指標に入れたいと考えており、優先指標に関する議論はかなり白熱しています。

それでも、カウンティ保健局のモニタリング・評価の能力強化への意気込みは高く、2016年9月の末までに完成させる予定です。完成後、本プロジェクトは引き続き、モニタリング・評価の実施を支援していきます。

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「ケリチョー・カウンティ保健モニタリング・評価計画」策定ワークショップにおけるグループ作業

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「ケリチョー・カウンティ保健モニタリング・評価計画」ドラフトへのインプットを得るためのステークホルダー会議

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「ケリチョー・カウンティ保健モニタリング・評価計画」策定のための中心メンバー