プロジェクトのキックオフ

2017年3月28日

本プロジェクトのフェーズ1では、JICAは道路維持管理における期間契約(Term Contract)の導入を支援し、同時に性能規定型契約(PBC)が導入されることとなりました。従来、ケニアの道路公社はスポットの工事契約による調達主流であり、調達業務が膨大であることと、自然災害等の緊急時においても調達手続きを取る必要があり、迅速な対応が困難な実情がありました。期間契約を導入することにより調達業務が減少し、また日々の道路管理における対応速度も改善を図ることが可能となりました。フェーズ1は、1)標準積算方法の導入、2)期間契約、3)標準契約図書の整備、4)簡易道路平坦性計測器(DRIMS)の導入等、道路維持管理サイクル全体を意識した業務円滑化を支援する活動が実施されました。

フェーズ2は2013年11月から開始されましたが、PBCの拡大に伴い、PBCの実施円滑化に重点を置いた活動がなされました。PBCを適正に実施するためのガイドライン作成、研修コースの設置、講師の育成等がなされました。

フェーズ3(本プロジェクト)は、既往フェーズの成果の全国展開と持続性の確保を目標に、2016年12月に開始されました。本プロジェクトは、既往フェーズで構築した維持管理の手法を全国的に展開することと、これにより道路維持管理状態が現状より改善されることを、長期的な目標として掲げています。また、プロジェクト目標としては、1)道路公社の積算能力の向上、2)PBCによる維持管理能力の向上、3)PBCに関する訓練能力の向上(民間企業への訓練含む)、4)道路維持管理におけるDRIMSの活用促進、を掲げています。

これらのプロジェクト目標の達成に向けて、(株)建設技研インターナショナルと阪神高速道路株式会社によるプロジェクトチームが岡本チーフアドバイザー(JICA長期専門家)とともに現地で活動を行っています。プロジェクトチームはカウンターパートであるMinistry of Transport、Infrastructure、Housing and Urban Development(MoTIHUD)、Kenya Roads Board(KRB)、Kenya National Highways Authority(KeNHA)、Kenya Urban Roads Authority(KURA)、Kenya Rural Road Authority (KeRRA)、Kenya Wildlife Service(KWS)、Kenya Institute of Housing、Building and Technology(KIHBT)、Kenya Construction Authority(NCA)、Public Procurement Regulatory Authority(PPRA)と、合同作業部会等を設置し、各課題に取り組んでいます。また、経験を持つ若いケニア技術者をチームのメンバーに加え、プロジェクトの全体を運営しています。

さて、第33回National Working Group会議(NWG)が2月8日に開催され、本フェーズのワークプランについて説明を行い内容の確認、修正がなされました。これらの議論を踏まえ、第8回Joint Coordinating Committee(JCC)会議を2月16日に開催しワークプランについて合意を形成し、現在は実際の活動を展開しています。

道路維持管理おけるPBCの展開に伴い、様々な課題が明らかになってきています。主な課題は1)道路管理者の育成、2)新公共調達法への標準契約図書の適合、3)施工業者の育成、4)研修機関の能力強化、5)地方自治体に対するPBCの啓蒙、等を上げることができます。

上記の5)に示した地方自治体に関して、2010年に採択された新憲法に基づき着手された地方分権化にともない、権限が47の地方自治体に徐々に委譲されており、国と地方自治体の両行政体がケニアの行政をつかさどる体制に固まりつつあります。これらの地方分権化は交通分野においても変化をもたらしており、地方道路(Class D、Eおよび未規格道路)、道路照明、交通規制、駐車場、公共交通、フェリー、港等が地方自治体への移管対象となっています。地方道路に関しては2016年には地方道路公社(KeRRA)が136,067キロメートルの道路を管轄しておりましたが、2017年には、うち約127,000キロメートルの道路が地方自治体に移管されています。これに伴い、KRB基金(道路維持管理予算)も全体の10%が地方自治体に移管されています。このようなことから、カウンターパートは地方自治体の道路維持管理能力向上を喫緊の課題と認識しており、PBCの啓蒙活動等に取り組むべき準備を開始している状況です。

表1 道路公社別の道路管理延長とKRB基金の配賦状況
道路公社 道路種別 Kms
(2016まで)
KRB基金の配賦率(%)(注1) Kms
(2017)
KRB基金の配賦率(%)
KRB     10%   10%
KeNHA A, B, and Superhighway 13,687 40% 18,522 37%
KeRRA C 130,067 32% 21,415 29%
KURA A-urb, B-urb, C-urb, D-urb, E-urb, F-urb, G-urb 12,549 15% 13,265 13%
KWS Access to National parks and circuits within the parks 4,583 1% 4,583 1%
County D, E, F & G なし - 121,486 10%
その他     2%    
合計     100%   100%

(注1)Kenya Road Act 2007
(注2)JICAチームの調査による
(注)urbはUrbanを意味する

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積算 SWG会議の様子 2017年2月23日

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PBC契約の月例検査の練習

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第8回JCC会議 2017年2月16日

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数量調査の練習

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第33回NWGの開催 2017年2月8日

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KIHBT主催によるPBCトレーニングの現場実習の様子

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KIHBTウゴングキャンパスにおける施工業者対象のPBCトレーニング

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JICAプロジェクトチームとの合同写真(ウゴングトレーニング後)