REDD+準備段階におけるFRLレポートのUNFCCCへの提出

2021年5月19日

2021年2月

REDD+(注1)は、途上国において森林減少・劣化の抑制や保全などの活動を行い、それにより温室効果ガス排出を削減あるいは吸収量を増加すれば、その成果量に応じてクレジットや資金など経済的なインセンティブ(報酬)を得るという仕組みが特徴です(2015松本(注2)。REDD+に取り組む途上国は、(a)国家REDD+戦略(NRS)、(b)森林参照レベル(FRL(注3)、(c)国家森林モニタリングシステム(NFMS)、(d)セーフガード情報システム(SIS)、の開発が求められます。
CADEP-SFMでは、上記のうち、FRL設定とNFMS構築の支援を行ってきました。このうち、FRLについては、カウンターパート及びREDD+ TWG(注4)メンバーと共にFRL設定に必要な条件等の検討を行い、条件に従ってケニア国のFRLを設定してFRLレポートに取りまとめました。2020年1月にFRLレポートはケニア国からUNFCCC(注5)へ提出されました。提出されたレポートはUNFCCCの技術評価を受けます。例年は都市ボンで技術評価員による集中審議を受けますが、COVID-19の影響で今回は全てオンライン会議やメールベース等での審議となりました。最終的に、技術評価を経て修正されたFRLレポートが2020年8月にUNFCCCに提出され、技術評価の最終レポートが12月に公表されました。2021年2月現在、ケニア国FRLレポートは次のHPで閲覧が可能です。

【画像】

REDD+ TWG会議の様子(2019年7月)

将来的に、FRLの基準値をベースラインとして、ケニア国が森林減少・劣化の抑制等の活動によって温室効果ガス排出を削減することで、経済的なインセンティブを獲得することが期待されます。プロジェクトでは引き続きREDD+要件の一つである(c)NFMSの構築を支援するとともに、他ドナーが支援する(a)NRSの策定、(d)SISの構築と連携を図り、ケニア国のREDD+準備に貢献していきます。

【画像】REDD+の温室効果ガス排出削減量の考え方(引用:2015松本)

(注1)Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries;途上国における森林減少・森林劣化からの排出削減、および森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積強化の役割
(注2)REDDプラスの現状とこれから, 松本光朗, 海外の森林と林業No.92(2015)
(注3)Forest Reference Level; 森林参照レベル
(注4)REDD+ Technical Working Group; REDD+技術作業グループ
(注5)United Nations Framework Convention on Climate Change;気候変動に関する国際連合枠組条約

ケニア国FRLとFRL条件(概要)
FRL 52,204,059tCO2/年
森林定義 樹冠被覆率15%以上、森林面積0.5ヘクタール以上、樹高2.0メートル以上
スケール 国レベル
対象ガス CO2
参照期間 2002年~2018年(2002,2006,2010、2014,2018年の5時点を使用)
対象活動 森林減少、森林劣化、持続可能な森林経営、森林蓄積量の強化
計算方法 4年毎の過去排出量の平均