プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)持続的森林管理・景観回復による森林セクター強化及びコミュニティの気候変動レジリエンスプロジェクト
(英)Project for Strengthening Forestry Sector Development and Community Resilience to Climate Change through Sustainable Forest Management and Landscape Restoration

対象国名

ケニア

署名日(実施合意)

2021年12月7日

プロジェクトサイト

ケニア全国(成果2の一部は半乾燥地域のパイロット・カウンティ)

協力期間

2022年2月1日から2027年1月31日

相手国機関名

(和)環境・気候変動・森林省(2023年1月に環境・森林省から改称)、ケニア森林公社、ケニア森林研究所
(英)Ministry of Environment, Climate Change and Forestry (MoECCF、2023年1月にMinistry of Environment and Forestryから改称)、Kenya Forest Service(KFS)、Kenya Forestry Research Institute(KEFRI)

背景

ケニアの有する347万haの森林(2018年、国土面積の5.9%)は、国家の経済・環境・社会面で重要な役割を果たしています。ケニアの長期経済計画「Vision 2030」(2008年)において、森林は、農業、観光、エネルギーといった一次産業を支える重要セクターの一つとして位置づけられています。しかしケニアでは、人口増加や社会開発といった間接要因や、農業を含む土地利用変化や非持続的な利用、ガバナンスの不足といった直接要因により、毎年約5.2万ha(2010~2018年)の森林を失っており、この傾向は特に国土の約8割を占め、薪炭需要の高い乾燥・半乾燥地(ASALs)で顕著となっています。これに対しケニア政府は、樹木被覆率(tree cover)の増加に向けた取組みを政策と実施の両面から進めています。
日本はケニアの森林分野の最大支援国の一つで、1985年以来、林業基盤整備や地域住民と協働した林業促進、耐乾性林木育種、第三国研修といった協力を37年間以上もの長期に渡り続けてきました。2016年から2021年までは「持続的森林管理のための能力強化プロジェクト(CADEP)」を実施し、森林政策、林業普及、耐乾性林木育種、「途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD+)」のための森林モニタリングシステムの整備、地域協力を支援しました。日本を含む国際社会からのこれまでの支援により、ケニアの森林・気候変動対策分野の能力開発は大幅に強化されてきています。
しかし、森林・樹木被覆率の回復に向けては一層の取組みが必要とされ、また、東アフリカ地域においては今後100年間で平均気温が3度上昇するとの試算もあるなど、気候変動への対応は更なる優先課題の一つとなっています。環境・気候変動・森林省(MoECCF)は、ケニア森林公社(KFS)及びケニア森林研究所(KEFRI)と共にこれらの課題に取り組んでいますが、気候変動や民間セクターとの連携など新たな課題への対応には、一層の政策強化、資金、技術支援、ガバナンスの強化が必要とされています。特に、森林データに基づく政策立案や評価プロセスの強化や、カウンティ政府が所掌となっているものの実施体制がまだ十分整備されていない民間セクター等によるコマーシャル・フォレストリーの環境整備、林木育種の次世代開発、地域協力の更なる推進が急務となっています。
このような背景のもと、ケニア政府は日本政府に対し、CADEPの後継事業として本プロジェクトを要請しました。本プロジェクトでは、森林行政に関わる中央及び地方政府の政策・実施能力をより一層強化するとともに、コマーシャル・フォレストリーの推進支援や耐乾性林木の開発・普及を通じ、樹木被覆率の増加や気候変動に脆弱な地域住民のレジリエンス強化に寄与することを目指しています。さらに地域協力を通じ、サブサハラ・アフリカ地域の林業行政強化や気候変動対策へも貢献していきます。

目標

上位目標

ケニア国の憲法2010、Vision 2030、NDCs(気候変動貢献策)の目標に沿った樹木被覆率10%以上の達成・維持に向けて持続的森林管理及び景観回復が促進される。

プロジェクト目標

ケニア国関連機関(MoECCF、KFS、KEFRI、パイロット・カウンティ政府)の持続的森林管理、景観回復、気候変動緩和・適応を促進するための国内および地域内における能力が強化される。

成果

1.持続的森林管理及び景観回復のための政策立案プロセスが強化される。
2.官民連携及び住民参加によるコマーシャル・フォレストリー促進を支援する環境が整備される。
3.在来種メリア(Melia volkensii)及びアカシア(Acacia tortilis)の生産性・耐乾性が向上し、その商業利用に向けた生産能力が高まる。
4.持続的森林管理、景観回復、気候変動緩和・適応の促進に向けたサブサハラ・アフリカ地域に貢献するための地域協力におけるKEFRI及び関係機関の能力・役割が強化される。

活動

成果1関連

1-1.持続的森林管理とランドスケープ回復にかかる優先度の高い政策・連略・計画をレビューし、策定・改訂する。
1-2.効果的な政策・計画の策定・実施に向けた、森林モニタリングとデータ管理プロセスを強化する。
1-3.プロジェクト目標の効果的な達成とその成果の普及に向けて全成果間の活動を調整する。
1-4.プロジェクト成果の拡大のためのグリーンファイナンスの利用可能性を探る。

成果2関連

2-1.コマーシャル・フォレストリー推進のための政策・戦略・計画および行政システムを強化・改善する。
2-2.パイロットサイトにおいてコマーシャル・フォレストリー促進を支援する。
2-3.メリア普及のための技術支援を強化する。
2-4.メリアの付加価値化と市場にかかる調査を行う。

成果3関連

3-1.メリア育種集団を造成する。
3-2.アカシアの次世代を開発する。
3-3.改良メリアの優良性を普及する。
3-4.改良メリアの生産と流通を拡大する。

成果4関連

4-1.林業、ランドスケープ回復、気候変動緩和・適応における地域協力を促進する。
4-2.特定のトピックに関するオン・デマンド型第三国研修を試行する。
4-3.地域協力と第三国研修のための技術と実践を文書化する。
4-4.ケニアによる地域協力の成果を国際、地域、国内レベルで発信する。

投入

日本側投入

専門家派遣

チーフアドバイザー、森林政策、森林普及、コマーシャル・フォレストリー、持続的森林管理、気候変動レジリエンス、林木育種、森林モニタリング、地域協力、業務調整等の分野。

研修員受入れ

カウンターパート本邦研修

機材供与

車両

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・案件実施のための建物、施設、設備
・現地活動費(カウンターパート旅費を含む活動費、施設・設備の運営及び維持管理費、輸入機材にかかる税及び国内輸送費)