プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)法の支配発展促進プロジェクト
(英)The Project for Promoting Development and Strengthening of the Rule of Law in the Legal Sector of Lao P.D.R.

対象国名

ラオス

署名日(実施合意)

2018年3月27日

プロジェクトサイト

ラオス全土(首都ビエンチャンが中心となる)

協力期間

2018年7月11日から2023年7月10日

相手国機関名

(和)司法省、最高人民裁判所、最高人民検察院、ラオス国立大学
(英)Ministry of Justice, People's Supreme Court, Office of Supreme People's Prosecutor, National University of Laos

日本側協力機関名

法務省法務総合研究所

背景

(1)当該国における法・司法セクターの現状・課題及び本事業の位置付け

ラオスでは、法・司法セクターについて、2020年までに“法の支配”を確立するための計画として、ラオス政府は2009年に“Legal Sector Master Plan”(LSMP)を策定し、法整備を進めている。
JICAは、1999年より専門家派遣、研修員受入等によりラオスの法・司法分野への協力を開始し、その後、現在に至るまで3件の技術協力プロジェクトを実施している。
これら協力を通じて、プロジェクトで策定した教材や執務マニュアルを法務・司法関連職員が十分に使いこなせなかったことから、ラオスの抱える課題として、ラオスの法律を体系的に理解し、理論と実務の双方を考慮しながら裁判実務や法学教育を行なうことができる人材の不足が根底にあることが明らかになった。そのため、2010年7月からは、司法省、最高人民裁判所、最高人民検察院に加えてラオス国立大学を支援対象として、協力を実施している。
2014年から開始した技術協力プロジェクト「法律人材育成強化プロジェクト フェーズ2」(2014年7月~2018年7月)では、先行協力の成果を踏まえ、基礎的な法令以外の法令に関する理解向上を図ると共に、執務参考資料の作成・普及、法学教育・法曹養成研修・継続的実務研修の改善を通じて関係機関職員の能力向上と立法・行政・司法実務の改善を図ってきた。これら協力を通じ、民法典案の策定、民法逐条解説本、経済紛争解決法ハンドブック、労働法ハンドブック、捜査段階に関するQ&A、模擬事件記録教材等の成果物が得られている。
このような状況下、ラオス政府から、「法律人材育成強化プロジェクトフェーズ2」の成果を活用し、2018年10月の国会で成立予定の民法典の普及、民事・刑事の基本法の理論研究と研究成果を踏まえた実務改善の継続、法学教育・研修機関の更なる教育改善、また、これら協力の持続的な実施を目指した組織体等の検討に係る協力が要請された。
ラオスの法セクターにおける中心的な政策枠組みとして位置づけられるLSMPでは、取り組むべき主たる課題として、1)法制度整備、2)法・司法関係機関の組織能力強化、3)法・司法関係機関職員の人材育成、4)法令データベース・情報発信の強化及び市民の参加、5)基本的インフラ整備が掲げられている。本事業は、このうち1)から4)に直接資するものである。

(2)法・司法セクターに対する我が国及びJICAの協力方針等と本事業の位置付け

我が国は、「対ラオス人民民主共和国 国別援助方針(2012)」において、開発促進及び援助効果向上の観点からガバナンス面の強化の必要性に留意することとしており、「ガバナンス強化プログラム」として法の支配による市場経済化を進めていくという方向性が示されている。
また、「法制度整備支援に関する基本方針(2013年5月)」では、ラオスは重点国に位置付けられている。司法関係機関及び大学等の法教育・研究機関の人材育成の更なる強化及び実務の改善を目指すと共に、ラオス政府の援助受入態勢を勘案しつつも、ラオスの投資環境整備に関する法制度整備への支援を検討することとされている。
更に、「ラオスの持続的な発展に向けた日本・ラオス開発協力共同計画(2016年9月)」においても、法の支配の推進の重要性が横断的課題として強調され、ガバナンス強化策が不可欠である旨が示されている。

(3)当該セクター/地域における他の援助機関の対応

当該セクターでは、以下のとおり他の援助機関が活動を展開しているため、ラオス司法省の主導により協力内容の調整が検討されている。
ベトナム政府は、2018年2月‐2021年2月(3年間)、約170万ドルの協力を実施。協力内容としては、1)法律と国際条約、国際法に係る人材育成カリキュラムの開発、国際法の起草支援(具体的な法律は未特定)、2)公証分野、3)経済紛争解決分野、4)法の普及、広報に係るカリキュラム、5)判決執行、6)法曹三者の養成、としている。6)については、ベトナムの教材利用による教材開発を予定。
国連開発計画(UNDP)は、2017年8月~2021年7月(4年間)、「Rationale for support project for implementation of LSMP(SPLSMP)」の後継案件を開始。C/P機関は、司法省、外務省、内務省、国会事務局、最高裁、最高検、弁護士会。協力内容は、1)司法省の調整・モニタリング能力の向上支援、2)法の支配の確立に向けたエビデンスに基づく政策形成支援、3)国際約束の国内法化支援、4)司法アクセス強化支援、5)市民の意識向上支援、としている。
ルクセンブルク開発協力庁(LUX Development)は、2018年~2023年(5年間)、「Strengthening the Rule of Law through Legal University Education」(協力額:500万ユーロ)を実施。高等教育の質の改善のためにラオス国立大学法政治学部や国立司法研修所に対して、教材作成支援等を実施している。
ラオスにおいて法曹三者を養成する国立司法研修所については、上記ドナーの他、中国、韓国、タイがそれぞれMOUを締結して、相互訪問により交流を行っている。

目標

上位目標

ラオスの法務・司法関係機関、法学教育機関において、法理論研究、同理論に基づく運用・執行、法令・実務の改善が持続的に行われるとともに、機関相互の連携による効果的な人材育成が持続的に行われる。

プロジェクト目標

ラオスの法・司法分野の中核人材が、基本法令の法理論の研究、同理論に基づく運用・執行、法令及び実務の改善の各能力を身に付け、研究成果を同分野の関係者に共有するとともに持続的な活動実施体制を具体化し、法学教育・法曹等養成の担当者が質の高い法律実務家を育成する能力を身に付ける。

成果

成果1:民事法及び民事訴訟法等に関する法理論の研究が行われ、その研究結果が取りまとめられるとともに、それが法律実務家及び研究者に共有される。
成果2:刑事分野の法理論研究と実務上の問題点の分析・検討が行われ、それを基にした執務参考資料が作成されるとともに、刑事手続を適切に運用するために活用され,実務家の法令等の理解が促進される。
成果3:法学教育、法曹養成研修、継続的実務研修が相互に連携し、一貫性のあるカリキュラムが整備されるとともに、効果的な教材と教授方法が研究され、活用される。

活動

1-1.民事法SWGが、民法典案の国会審議を踏まえて、必要な法案修正を行い最終化する。成立後の民法典についてリサーチペーパーを作成する。
1-2.民事法SWGが、民法典起草において抽出された論点を中心に、新民法典の趣旨、主要な原理とその例外、各規定の適用範囲と条文相互の整合的な解釈、適用事例を研究する。研究結果を踏まえて、新民法典の理解・運用に必要な参考資料を作成し、あるいは、これまでのプロジェクトで作成した参考資料を改訂する。
1-3.これまで作成された参考資料や新たに作成・改訂される参考資料、及び民法典草案作成やこれらの参考資料作成過程における研究結果を活用しつつ,主に実務家を対象として新民法典に関するセミナーや講義を行う。
1-4.民事法SWGが、民事法及び民事訴訟法等に関する運用や執行状況、法令間の整合性確保,実効性確保等のために必要な項目を調査する。
1-5.民事法SWGが、1-4の結果をもとに、1)現行法の運用で対応可能なものについて執務参考資料を作成し、2)(運用で対応できないものについては)法改正や関連法制度の整備・改善に向けた提言をとりまとめる。
1-6.プロジェクト活動が持続的に実施される体制を民事法SWGが検討する。

2-1.刑事法SWGが、法理論及び実務を分析・研究し、適正な刑事手続に資する執務参考資料を作成する。
2-2.刑事法SWGが、これまでのプロジェクトおよび2-1で作成した執務参考資料を活用して,捜査機関や弁護士会等の関係機関とも協力しつつ、セミナーや講義を行う。
2-3.刑事法SWGが、これまでの執務参考資料作成および普及活動を通じて抽出した法制度及び実務上の問題点を改善するため、刑事法SWGの活動計画や関係機関への提言を取りまとめる。
2-4.2-3の結果について、関係機関と共有し、刑事法SWGの活動計画を実行する。
2-5.プロジェクト活動が持続的に実施される体制を刑事法SWGが検討する。

3-1.教育・研修改善SWGが、法学教育、法曹養成研修、継続的実務研修の連携と役割分担に配慮しながら、カリキュラムと教育・研修活動の現状を調査し、各科目の目的を明らかにするとともに、改善点を抽出する。
3-2.3-1の結果を踏まえ、教育・研修改善SWGが、民事法SWG、刑事法SWGの活動と連携しつつ、法理論の研究と実務の分析を踏まえた効果的なモデル教材を作成する。
3-3.3-2で作成された教材について、教育・研修改善SWGが指導要領を作成する。
3-4.教育・研修改善SWGが、作成した教材や指導要領を、地方を含めた関係機関に配布し,同教材等に基づきTOTを行う。
3-5.3-1~3-4までの活動を踏まえ、毎年、各教育機関のカリキュラムの見直しがなされ,必要に応じて改善が図られる。
3-6.プロジェクト活動が持続的に実施される体制を教育・研修改善SWGが検討する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣(合計約240M/M):長期専門家4名(法曹実務家3名、業務調整1名)
2.研修員受け入れ:民事、刑事、法学教育/研修
3.国内支援委員会:民法アドバイザリーグループ、教育・研修改善アドバイザリーグループ

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
・プロジェクト・ダイレクター、プロジェクト・マネジャー
・3つのサブワーキンググループのメンバー
2.案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供