プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)効果的なREDD+資金活用に向けた持続的森林管理能力強化プロジェクト
(英)The Project for Enhancing Sustainable Forest Management in Collaboration with REDD+ Programs and REDD+ Funds(F-REDD2)

対象国名

ラオス人民民主共和国

署名日(実施合意)

2021年7月15日

プロジェクトサイト

ビエンチャン、サバナケット県

協力期間

2022年2月2日から2027年1月31日

相手国機関名

(和)農林省
(英)Ministry of Agriculture and Forestry

背景

ラオス国では、人口の増加、農地の拡大、気候変動、違法伐採や密猟、さらには持続可能性を考慮しない資源開発等によって生物多様性や環境が脅威にさらされています。中でも、森林が受けてきた影響は大きく、1940年代には70%以上であった森林率は、2010年には約40%にまで低下しました。この急速な森林率の減少を受けて、ラオス政府は森林率70%の回復を目標とした「森林戦略2020」を策定するとともに、森林減少および劣化などに由来する温室効果ガスの排出を削減する仕組みであるREDD+(注)を有効な手段として、2008年以降、JICAをはじめとするドナーの支援を得ながら、その準備・実施に取り組んできました。その結果、2015年には森林被覆率が57.4%まで回復し、2015年~2018年の間にラオス全国で総計1,280万tCO2eqの二酸化炭素の排出削減、吸収を達成しました。農林省では国家REDD+戦略を2021年5月に採択しており、ラオスにおいて戦略的にREDD+を推進していくこととしています。さらに、ラオス政府は「森林戦略2020」に続いて「森林戦略2035」を策定中であり、同戦略案では引き続き森林率を70%まで回復させ、回復した森林を継続的に管理および開発し、生物多様性、流域保全、環境の質の向上、地球温暖化のインパクト軽減等を成し遂げることをビジョンとして掲げています。
こうした中、REDD+の実施において中心的役割を果たす農林省や県農林事務所における体制は未だ十分ではなく、森林セクター担当行政官の能力強化のほか、今後想定される多額の外部資金の投資計画策定・運営管理・モニタリング等の実施支援も必要とされています。また、REDD+におけるラオス全国規模の森林情報(衛星画像解析と地上調査に基づく正確な森林区分図や区分ごとの森林炭素蓄積データ、排出係数など)については、日進月歩の技術を加味し、国際基準に見合った堅牢で透明性の高い情報システムの整備が必要とされています。REDD+の成果支払資金や他ドナーからの資金を適切に管理するため、ラオス政府は、この分野で長期的な支援と専門的な知見を提供してきたJICAが引き続き技術支援を行うことを希望していました
JICAはラオスの森林セクターに対して森林政策・REDD+制度構築支援・ドナー調整、森林情報整備・REDD+に関する技術開発、参加型森林管理・REDD+現場パイロット活動において支援を行ってきており、中央から地方、政策支援から森林情報整備や現場活動支援まで幅広い取り組みを相乗効果を伴って推し進めてきました。そこで、緑の気候基金からの資金の獲得、および同資金による事業実施を支援しつつ、ラオス森林セクターの今後の優先課題である森林戦略2035の実施体制の強化及びREDD+関連活動のさらなる推進・強化を通じて、ラオスにおける持続的森林管理の能力強化することを目的とした「ラオス国効果的なREDD+資金活用に向けた持続的森林管理能力強化プロジェクト(F-REDD2)」が、ラオス政府より要請されました。

(注)REDD+:途上国での森林減少・劣化による温室効果ガスの排出を緩和することに対して経済的なインセンティブを国際社会が提供する仕組み。

目標

上位目標

REDD+プログラムと活動を通じてラオスにおける持続的森林管理が促進される。

プロジェクト目標

REDD+プログラムおよびREDD+資金との連携のもと持続的な森林管理の能力が強化される。

成果

1.森林戦略2030の実施のための政策および制度が整備される。
2.国家REDD+および国家森林モニタリングシステム(National Forest Monitoring System:NFMS)ロードマップの実施が促進される。
3.サバナケット県においてREDD+準備が促進される。

活動

成果1.森林戦略2030の実施のための政策および制度が整備される。

1-1.森林戦略2030の効果的な実施に向けて優先的に取り組むべき政策や制度を整備する。
1-1-1.森林戦略2030において優先的に取り組むべき政策や制度を特定する。
1-1-2.活動1-1-1で特定された優先的な政策・法規制を策定する。
1-2.森林サブセクター作業部会(FSSWG)等のプラットフォームを通じたセクターコーディネーションを推進する。
1-2-1.半年に1回のFSWWGの開催を支援する。
1-2-2.森林戦略2030実施に関するドナー調整(情報共有や意見交換等)を支援する。

成果2.国家REDD+および国家森林モニタリングシステム(National Forest Monitoring System:NFMS)ロードマップの実施が促進される。

2-1.NFMSロードマップに沿ってNFMSを更新、改善、実施する。

測定・報告・検証(Measuring,Reporting and Verification:MRV)

2-1-1.MRV計画を策定する。
2-1-2.森林区分図を作成し活動量を算出する。
2-1-3.国家森林インベントリーを実施する。
2-1-4.排出吸収係数を算定する。
2-1-5.森林および林地からの温暖化ガス排出・吸収量を推計する。
2-1-6.I-GFLLプログラム対象地域(フェーズ1)(注1)から参照地域(ラオス全土)までのリーケージ効果を評価する。
2-1-7.国全体の温暖化ガス排出削減と炭素蓄積の増大を関連機関に報告する。
2-1-8.FCPF炭素基金のEmission Reductions Payment Agreement(ERPA)においてER(注2)支払い資金にアクセスするために北部6県の温暖化ガス排出削減および炭素蓄積の増大の報告と検証を支援する。

森林モニタリング

2-1-9.他ドナーによる森林モニタリングの取り組みを調整する。
2-1-10.対象県(注3)において県森林減少モニタリング(PDMS)を展開するために、同システムを改良・改善する。
2-1-11.I-GFLLおよび他プログラム/プロジェクトと協力して対象県(注3)においてPDMSの実施を促進する。

NFMSウェブポータルとデータベース

2-1-12.新しいニーズや技術を考慮して、NFMSウェブポータルを運用・更新する。
2-1-13.システムの運用、更新、保守をラオス側で実践できるよう能力を強化する。

NFMSロードマップ

2-1-14.NFMSロードマップを更新する。
2-2.国家REDD+のコーディネーションを促進する。
2-2-1.国家REDD+タスクフォースに対して技術的なアドバイスを提供する。
2-2-2.NFMS技術作業グループに対して技術面・運用面の支援を提供する。
2-2-3.温暖化ガス排出インベントリーに関してDOFと天然資源省気候変動局(Department of Climate Change:DDC)間のコーディネーションを促進する。
2-2-4.REDD+実施に関するドナーコーディネーションを支援する。
2-2-5.GCF成果支払いの資金提案書の提出に向けた技術支援を提供し、GCF事務局との調整を支援する。

成果3.サバナケット県においてREDD+準備が促進される。

3-1.サバナケット県におけるREDD+実施体制を構築する。
3-1-1.(県REDD+タスクフォースなどの)REDD+の担当機関を設置する。
3-1-2.県REDD+タスクフォースメンバー、PAFO・DAFO職員等のREDD+実施に必要な能力を強化する。
3-2.ランドスケープレベルにおける保護・保全林の森林管理を促進する。
3-2-1.森林保護・保全に関するランドスケープ管理を推進する担当機関を設置する。
3-2-2.選定した村において自然資源・社会経済調査を実施する。
3-2-3.森林法にしたがって、ランドスケープ管理計画の方向性を決め、国家保全林地域(National Conservation Area:NCA)および国家保全林地区(National Protection Forest Areas:NPtFAs)のゾーニングを含めたプロトタイプとなる管理計画を策定する。

(注1):ルアンプラバン県、ファパン県、サヤブリ県(GCF funding proposal(FP117 in GCF/B.24/02/ADD.03))
(注2):ER:Emission Reductions
(注3):PDMSは、現行プロジェクトの支援によりルアンプラバン県とウドムサイ県に導入済みであり、また、I-GFLLプログラムの財政支援も得てファパン県とサヤブリ県に導入済みである。本事業では、これらの県において引き続き技術支援を提供するとともに、GFLLとの連携の下、北部のルアンナムター県とボケオ県と、GFLL-SLプロジェクト(JICA/GCF成果支払いプログラム)と連携の下、南部地域の県(アッタプー、チャンパーサック、サラワン、サバナケット、セコン)に、さらにその他の森林事業やREDD+関連プロジェクトが対象としている県においてPDMSを導入する予定である。

投入

日本側投入

短期専門家派遣、ローカルスタッフ配置
本邦への研修員受入
資機材

相手国側投入

カウンターパート配置
プロジェクトオフィス等の施設及び機材