2016年11月の活動

2016年11月30日

1.活動写真集

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播種研修の様子(アロチャ・マングル県ラノマインティコミューン)

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地域で入手可能な竹を使用して設置した防砂柵(アロチャ・マングル県アンダインゴコミューン)

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HO AVY SOAチームのエリアマネージャーによるリソースパーソンへの植林ポット移植・山出しに係る講師育成研修(ソフィア県マンギンジャノコミューン)

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ラバカ対策の講師育成研修の実施対象となったラバカ。大型で3箇所の土砂流出口がある(ソフィア県ベアンドラレゾナコミューン)

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11月5日に実施された運営指導調査団のサイト訪問。環境省と農業省の両次官が、ローカル・トレーナーによる改良カマド作りを熱心に観察している(アロチャ・マングル県アンパシケリーコミューン)

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11月10日に開催された合同調整委員会の様子(アンタナナリボ)

2.今月の主な活動

(1)アロチャ・マングル県での活動

1)研修の実施と住民活動のフォローアップ(対象期間:2016年10月1日〜10月31日)

当初対象4コミューンでは、2015年から住民による活動の持続性の向上を目指し、エリア・マネージャーとローカルトレーナーによる住民への直接モニタリングを実施しています。牛泥棒の出没で治安が悪化しつつある状況のなかで、エリア・マネージャーは全217研修単位の9割近く(191研修単位)を訪問し、これまで本プロジェクトが普及してきた活動に関して、住民に直接助言しました。

新規2コミューンでは植林研修(播種)をはじめ、ライチ生産(ポット移植)やラバカ対策などの研修が165回実施され、参加者数は延べ2,254人(男性1,344人、女性910人)でした。研修後の住民活動に関するモニタリングも同時に実施され、エリア・マネージャーが全98研修単位すべてを最低1回は訪れ、ローカルトレーナーや住民を支援しました。

2)植林用ポットの配布(対象期間:2016年11月1日〜11月30日)

出口戦略の一環として、今年度は、DREEFとコミューンの主導で、住民への植林用ポットの配布を試行しています。PMU会議で、当初対象4コミューンにおけるポットの配布状況が報告されました。それによれば、11月上旬の時点でコミューン事務所へ植林用ポットを取りにきたのは、200世帯あまりでした。ポットを取りにくる世帯数が少ない理由としては、ポット配布を開始してからの期間がまだ短いことが挙げられますが、コミューンから住民に情報を伝える経路が乏しく、多くの住民にポット配布の情報が伝わっていないことも一因だと考えられます。今年の試行結果を踏まえ、2017年以降に再度植林用ポットを配布する場合、どのような経路で住民に植林用ポットを配布すべきか、今後もPMU会議で議論していきます。

(2)ブングラバ県での活動(対象期間:11月1日〜11月30日)

現在、ブングラバでは、以下の3タイプのサイトで、LIFEモデルが活用されています。

タイプ 対象
コミューン
モデルの適用単位 植林 カマド 灌漑稲作
1 Ambatolampy,
Tsinjoarivo
コミューン
(の一部のフクタン)
50世帯を1研修単位とし、各単位に1名のローカルトレーナー(LT)を選定。 スキーム毎にLT(リーソース・パーソンRPと呼ばれる)を選定。
2 Ambararatabe
Ankadinondry,
Ankerana nord
Fihaonana
谷内の灌漑水田と周りの傾斜地 居住区毎に1名のLTを選定。
3 Fierenana,
Bemahatazana
谷内の灌漑水田と周りの傾斜地 各スキームで一人のRPが選定され、すべてのテーマの研修を行う。

タイプ1はPRODAIREが、タイプ2と3はPAPRizが普及モデルの展開資金を負担しており、タイプにより普及活動を担う要員介入の密度や役割が異なります。

2016年11月には、タイプ1と2のコミューンで植林(播種/ポット移植)、改良かまど、PAPRiz灌漑稲作技術の研修が行われました。研修実施の定量的な情報は、来月のプロジェクトニュースで報告します。

(3)中央での活動(対象期間:11月1日〜11月30日)

1)マニュアル委員会の開催

2016年10月に実施された関係各省でのマニュアル発表会でのコメントに基づき、11月16日に開催された第3回マニュアル委員会では、以下のような最終ドラフトの改定方針が決定されました。

  • 「1-2モデルの成果」を5章とし、モデルの実施組織がNGOの場合と県局の場合、双方の成果をマニュアルに記載する。
  • 項目1-2は「モデルの有効性」とし、モデルの特徴とそれを示す数値を簡潔に示し、読者をひきつける。
  • 普及体制の構築に時間を要するというイメージを与えないため、各ステップに必要な日数や人的資源を表にまとめて示す。
  • PRODAIREがモデルを展開している地域の地理的特徴やモデルの実施組織の違いに応じて、植林やラバカなどの活動単価も異なる。このため、それぞれの単価をXX〜XXX アリアリと幅を持たせて示し、プロジェクトの活動予算を積算するとき、参考にできるようにする。
  • 一般的なプロジェクトでは、住民に現金を支払って植林させる場合が多いため、環境省のスタッフにとって、LIFEモデルが提唱する住民の発意による植林という概念は理解しにくい。各活動に対して、プロジェクトからのインプットと住民からのインプットを表にまとめて示す。
  • NGOを活用する場合に、県局が担う役割を記述する。

今後の予定では、12月初旬に最終ドラフトを両省の中央局や県局、ドナーなど関係者に質問紙付きで送付し、彼らから質問やコメントを取り付けます。回答済みの質問紙の回収は12月末とします。質問紙の回答を踏まえ、1月中旬のマニュアル委員会で、マニュアルの最終稿を完成させます。

2)合同調整委員会の開催

11月10日にプロジェクト合同調整委員会(JCC)を開催しました。議題は、1)プロジェクトの活動と成果の発表、2)JICAの運営指導調査団によるプロジェクトの終了時評価の結果発表、3)プロジェクトの今後の活動の確認とプロジェクト終了後のモデルの普及戦略についての議論でした。
議題3)のモデルの普及戦略に関しては、環境省次官より「LIFEモデルを他地域で展開することについては、NGOやコンサルタントのような民間の組織が、他のプロジェクト等から(資金など)十分な資源を得て、PRODAIREのノウハウを生かして、植林などを進めていくのがよい」との発言がありました。

(4)他ドナーや他のプロジェクトとの連携

1)アンバトビー鉱山会社との連携

アロチャ・マングル県アンダインゴコミューンにおいて、LIFEモデルを活用したマングル川流域の保全活動をアンバトビー鉱山会社と共同で実施しています。フクタンレベルでの啓発活動や、植林播種・ポット移植および改良かまどの講師育成研修が終了し、同2テーマの住民レベルでの研修が進められています。また、ラバカ対策研修の講師育成研修は第3段階(注)まで終了し、育成された講師による住民向けの研修が開始されました。
活動自体は順調に進む一方で、現場での課題が明らかになってきました。最大の課題は、同地域で別団体によって実施された過去のプロジェクトの影響から、住民が研修への参加やその後の実践に対して金銭を受け取ることに慣れてしまっていることです。このため、住民活動に金銭を支払わないLIFEモデルとの違いに戸惑っている住民が少なくありません。こうした状況に拍車をかけているのが、本活動でエリア・マネージャーとして関わる地域住民が、過去のプロジェクトに研修講師として関わっていた事実です。住民の立場からすれば、同じ人と働いているにもかかわらず、以前は現金がもらえ、今はもらえないという違いが腑に落ちないようです。
こうした状況を改善していくためには、エリア・マネージャーとローカルトレーナーによるフォローアップや研修の際に、住民に対してLIFEモデルのアプローチを繰り返し説明していくことが肝要です。

(注)第1段階:対象とするラバカの選定、第2段階:ステークホルダーによる予備会議、第3段階:防砂柵設置、第4段階:維持活動

2)UNDP/GEFプロジェクトMRPAとの連携

同プロジェクトとの連携として、以下のような活動が2016年11月に実施されました。

  • 11月14日〜17日に、MRPAのコーディネーターと会計担当者が、アロチャ・マングル県のPRODAIREサイトを訪問し、LIFEモデルの有効性やインパクトを確認しました。同時に、PRODAIREの終了後も継続してLIFEモデルの展開に係るノウハウを移転するNGOのHO AVY SOAの能力評価を行いました。
  • 11月12日〜23日に、HO AVY SOAとPRODAIREのメンバーで、ソフィアへの合同ミッションを実施しました。目的は、TPFとのこれまでのやり取りで決められた事項が、現場レベルで適用され、研修やモニタリングなどの活動が順調に実施されているかどうかを確認することと、2017年に予定される活動のインパクト評価調査の実施方法を設計することです。

ミッションの結果概要

全体としては、ほぼ計画どおり活動が展開されてきたものの、担当するソーシャルオーガナイザー(SO)の能力や性格の違い、地域へのアクセス条件の違いなどから、地域間でLIFEモデルの理解度や活動の進捗に差が現れています。以下では、ミッションの拠点地であるベアラナナを基準に、2016年に対象とする14フクタンを西側6フクタン(1人のSOが担当)と東側8フクタン(別の1名が担当)に分けて進捗状況を示します。
西部6フクタンのうち5フクタンでは、リソースパーソンの選定、改良かまど研修と植林播種・移植・山出し研修のための講師育成研修(ToT)、ラバカトレーナーの選定が終了していました(残り1フクタンの情報は確認できず)。また、改良かまどと植林播種については、既に住民向け研修が開始されていました。西側のフクタンはベアラナナからの距離が近く、SOによるフォローアップが機能しているため、これまでのところ活動は順調に進んでいます。
東部8フクタンのうち、ベアラナナに近い2フクタンでは、リソースパーソンの選定、全テーマのToT、ラバカトレーナーの選定が終了しており、住民向けの改良かまど研修と植林播種研修がはじまっていました。北東部に位置し、アクセスの悪い5フクタンのうち、情報を得られた3フクタンでは、リソースパーソンの選定、改良かまど研修と植林播種研修のToTが済み(ラバカ対策の講師育成研修は未了)、住民向け改良かまど研修と植林播種研修をすでに開始している研修単位が多くありました。しかし、SOによるフォローアップの頻度が低いことから、リソースパーソンやローカルトレーナーのなかには、LIFEモデルと自らの役割に関する理解が不十分な研修単位もみられました。こうした研修単位では、ローカルトレーナーが住民向けの研修を実施していませんでした。このように、東側のフクタンではLIFEモデルにおける普及員自らの役割の理解が不十分で、一般的に活動が遅滞しています。
上記のように、アクセスが悪い地域ではSOによるフォローアップの頻度が低いことが、活動の進捗を制限する一つの大きな要因です。また、SOは両名ともPRODAIREとの連携に充当できる時間が限られているため(5日/月が目安)、アクセスに時間が掛かる東部フクタンでは必然的にフォローアップの頻度が低くなり、その結果、リソースパーソン/ローカルトレーナーの理解不足による活動進捗の遅滞を生み出しています。
こうした状況を踏まえ、稼働日数の限られたSOに大きな役割を課すのではなく、彼らの役割を可能な限りリソースパーソンに移行していくことが現実的です。具体的には、住民へのフォローアップとローカルトレーナーの能力強化は、SOがいなくともリソースパーソンが担っていける体制を目指します。SOがフォローアップに来られない雨季の間も、住民に対する研修やフォローアップが遅滞なく実施されるためには、雨季が本格化する前にリソースパーソンの能力を最大限引き上げることが必須です。このため、12月中旬から下旬にかけてHO AVY SOAチームによる雨季前の出張を予定しています。

【画像】MRPA連携 対象地マップ

インパクト評価調査の設計

MRPAプロジェクトでは、2017年5月頃を目途にインパクト評価調査の実施を予定しています。11月24日にMRPAコーディネーターと面談し、先方が同調査で期待することを改めて確認しました。面談結果をもとに、インパクト評価調査の設計、質問表調査の草案作成、予算の積算を進めています。また同調査の実施チームは、ソフィア県森林局(DREEF)の職員によって編成されることが決定しました。

3)CIとのJSDFプロジェクトに関する連携

世界銀行の日本社会開発基金(JSDF)を活用してLIFEモデルを展開するため、NGOのConservation International(CI)と引き続き調整しています。JSDFに申請するプロジェクトのコンセプトノートを世界銀行や環境省、JICA、日本大使館などの関係者と共有しました。今後もフォローアップを継続するとともに、関係者と調整しつつプロポーザルの作成を進めます。

4)GEF/UNEPのプロジェクト

環境省の外郭団体である環境活動協会(Association nationale d’actions environnementales:ANAE)が実施するGEF/UNEPの”Participatory Sustainable Land Management in the Grassland Plateaus of Western Madagascar”プロジェクトは、2017年1月から4年間にわたって実施される予定で、対象県はブングラバ県、想定される活動内容は以下のとおりです。

  • 予定される活動は、(灌漑・天水)稲作支援とその流域の管理活動支援(植林、ラバカ対策、改良かまど)で、対象となる谷内の田圃を決定し、そこでdiagnosticを行い、住民参加型で活動計画を策定する。
  • 大学やFOFIFAと連携し、それらの組織で開発された「高度な技術」を住民に普及する(例えば、5年間壊れない改良かまど作りの研修には10日間かかる)。
  • 普及方法としては、対象となるフクタンで、プロジェクトにより養成された住民講師から「やる気のある」25名の住民に技術を移転し、その25名がボランティアベースで他の住民5名に技術を移転する。

環境省次官はANAEを、LIFEモデルを引き継ぐべき組織と考えています。モデルの引継ぎの観点から、ブングラバのGEF/UNEPのプロジェクトについて、以下の点をANAEに提案し、原則合意を得ました。

  • 普及アプローチはLIFEモデルと類似点が多いので、CDR-ローカルトレーナーを活用したLIFEモデルを活用して、植林、改良かまど、ラバカ対策の活動を普及する。
  • PAPRizとの連携を強化し、PAPRizは灌漑稲作圃場、周辺の傾斜地の土壌保全はGEF/UNEPプロジェクトで活動を普及する。

5)世銀PADAPへのLIFEモデルの売り込み

11月14日〜16日に、PADAPのマダガスカル側の責任者である農業省のオリバ氏が、アロチャ・マングル県のPRODAIREサイトを訪問し、土壌保全や村落開発活動への住民の自発的な参加や持続性の高さを現場で見聞し、LIFEモデルのPADAPへの適用を再度検討することを確認しました。

6)EUのプロジェクトAFAFI NordへのLIFEモデルの売り込み

11月9日にEUの環境セクション責任者のTom LEEMANS氏、ならびに同プログラムの案件形成でマダガスカルにきている詳細設計チームと話し合いました。冒頭、LEEMANS氏より、環境省と農業省の次官より、AFAFI NordでLIFEモデルを活用することを奨励されたとの発言がありました。AFAFI Nordの概要説明の後、PRODAIRE側からLIFEモデルを説明し、その後活発な質疑応答がありました。同プログラムでのLIFEモデルの活用についても、可能性をさらに検討するとの意向が示されました。

(5)JICA運営指導調査の受け入れ支援

10月26日〜11月11日に、終了時評価のための運営指導調査が実施されました。11月4日〜6日に実施されたアロチャ・マングル県のプロジェクトサイトへの訪問には、環境省と農業省の両次官、森林総局長、農業総局長なども参加しました。これら高官がサイトで本プロジェクトの成果を確認し、LIFEモデルに対する理解を深めました。