プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)気象観測及び予警報能力向上プロジェクト
(英)Project for Enhancing Meteorological Observation, Weather Forecasting and Warning Capabilities

対象国名

モーリシャス

署名日(実施合意)

2018年8月21日

協力期間

2019年5月1日から2022年4月30日

相手国機関名

モーリシャス気象局(MMS)

背景

モーリシャスは南西インド洋に位置する小島嶼国で、周辺海域ではサイクロンが頻発し、これに起因する豪雨、高潮、洪水等に加え、地すべり等の二次災害も多く発生している。国連大学の世界リスク報告(World Risk Report 2017)によると、モーリシャスは世界171カ国のなかで最も自然災害にさらされている上位15カ国の一つとされており、近年では2002年、2007年、2008年、2013年に被災死者を出す災害が発生している。そのため、モーリシャスにとって災害は人的及び経済的な側面から持続的な開発を阻害する一因となっている。

モーリシャスは、2013年に国家災害リスク軽減管理センター(National Disaster Risk Reduction and Management Centre:NDRRMC)を設立し、災害の予防と緊急時の危機管理に係る政策の諮問と策定、関係機関調整、及び計画の実施とモニタリングを行っている。また、2015年に国家災害リスク軽減管理計画(National Disaster Risk Reduction and Management Plan)、2016年4月には国家災害リスク軽減管理法(National Disaster Risk Reduction and Management Act 2016)がそれぞれ策定され、国家を挙げて防災及び緊急時の危機管理対応の実施に取り組んでいる。同法において防災の主要機関に位置付けられているモーリシャス気象局(Mauritius Meteorological Service:MMS)は同国の国家気象業務機関として、気象災害を含むあらゆる自然災害に対する予警報システムの構築や緊急対応等の責務を担っている。国民の人命・資産の保護と減災、産業の経済損失の低減には、MMSによる適時・適切な気象観測・予警報発表が必須となる。しかしながら、サイクロン監視を衛星写真に依存するため精度が十分でなく、雨雲位置特定や降雨予測等、観測の質を十分確保できない状況にある。

JICAは、無償資金協力「気象レーダーシステム整備計画」(以下「無償案件」)で気象レーダーシステム関連機材の建設と周辺機材供与に係る支援が2019年3月に完了予定となっており、レーダー観測の運用後には、同地域のサイクロン監視を含む気象観測の向上に貢献するものと期待されている。

一方、MMSにおいて気象レーダー観測、維持管理を熟知する人材の育成、及び気象レーダーシステム等の有効利用による気象観測、予警報技術の向上とモーリシャス国内の防災機関や国民への災害関連情報の効果的な発信が必要とされており、このためのMMSの能力強化が求められている。こうした状況を受け、技術協力プロジェクト「気象観測及び予警報能力向上プロジェクト」の実施が決定された。JICAは2014年2月及び2017年10月に詳細計画策定調査を実施し、その結果をもとに2018年8月21日にモーリシャス政府との間でプロジェクトの詳細を記載した基本合意文書(Record of Discussions:R/D)を締結した。

本事業はモーリシャスの防災能力に貢献することから、SDGsのゴール1「あらゆる形態の貧困の撲滅」、ゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築」、ゴール13「気候変動とその影響への緊急の対処」の達成に資するものである。

目標

上位目標

MMSの発出する気象情報が防災関係機関及び住民によって活用される。

プロジェクト目標

MMSから正確で即時性の高い気象情報が防災関係機関及び住民に提供される。

成果

成果1 MMSの気象観測能力が向上する。
成果2 MMSの気象解析・予警報能力が向上する。
成果3 MMSの気象情報伝達が改善される。
成果4 MMSが実施する啓発活動が改善される。

活動

1-1.AWS、SYNOP観測所、ドップラーレーダー等による観測現状を調査し、課題を把握する
1-2.上記活動1-1の結果に基づき、AWS、SYNOP観測所の測器構成と保守管理及びドップラーレーダー等の保守管理のための、運用・点検ガイドラインを含むマニュアル文書を作成する
1-3.上記活動1-2によるマニュアル文書に基づいた、気象機器・機材の補正・保守管理のための研修を実施する

2-1.AWSのデータを用いたレーダー観測データのキャリブレーションに係る研修を実施する
2-2.予報ガイダンスの導入及び指導を実施する
2-3.気象レーダー・気象衛星情報および全球数値予報(GPV)データを用いた解析・予警報の改善及び指導を実施する
2-4.解析・予報結果に基づき、現行の警報基準についての改善事項・課題を把握する
2-5.自治体及び防災関係機関との調整を通じて、適切な警報基準を設定する

3-1.気象情報の発信についての改善事項・課題を把握する
3-2.3-1の結果に基づき、発信される気象情報の内容を改善する
3-3.3-1の結果に基づき、気象情報の発信方法を改善する

4-1.新規気象レーダー塔の展示室の利用方法を含むMMSの気象情報に係る啓発活動計画を策定する
4-2.啓発活動のための資料を改訂・作成する
4-3.MMSスタッフの啓発活動に係る能力強化を実施する

投入

日本側投入

専門家派遣、研修員受入、機材供与

相手国側投入

カウンターパートの配置、案件実施のためのサービスや施設、現地経費