研究航海を実施しました

2022年4月13日

当プロジェクトでは、これまで、メキシコ側研究代表機関であるメキシコ国立自治大学の海洋調査船「EL PUMA」を用いて長期型海底圧力計・GPS音響結合方式(GPS/A)・地殻変動観測装置等の観測機材を設置してメキシコ沿岸部で最初の海底地震・測地観測網を構築しました。

「海底観測」では、定常プレート運動・地震およびスロースリップに伴う上下地殻変動の観測や地震活動や地下構造を詳細に調べています。さらには海底堆積物調査を実施して、過去の巨大地震の活動履歴も調査しています。

これまで回収した記録については、日本・メキシコ側でのデータ共有のためのデータサーバ(京都大学設置)を準備し、データの共有をしています。また、当プロジェクトで独自に開発した分析手法を用いて、データを分析した結果、メキシコ沿岸部で初となる「スロー地震」の検出に成功をしています。

しかしながら、2020年3月に発生したコロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、2年間の間はデータ回収するための調査航海ができずにいました。

海底観測に用いられる自己浮上式海底地震計は、「海の底で起きる地震を海の底で観測する」ための機材ですので、観測を開始する際には海底地震計は海底に沈めます。そして、海底地震計を回収する際には、船上から音波を発信して、その音波信号をキャッチした測器が自ら錘を切り離すことで浮上します。しかし、海底地震計の電池にも寿命があり、それは2年ほどと言われています。現在、ゲレロ州沖にある海底地震計は2019年末に設置されているため、海底地震計の回収はプロジェクトの最重要課題の一つでした。

今回行われた調査航海では無事に3台の海底地震計を回収することができました。得られたデータを解析することで、小繰り返し地震を含む通常の地震活動やプレート境界近傍の地下構造(地震波速度・減衰構造および異方性)を詳細に調べることで、沈み込み帯の地震の発生様式の解明が期待されます。

当プロジェクトは2022年5月に終了しますが、引き続き、メキシコ側研究機関を中心に観測が継続される予定です。

当プロジェクトは、日本・メキシコ両国の類似性・相違性を理解することを一つの目標としております。このことは、日本の南海トラフで発生すると見込まれる巨大地震・津波の本質的理解にもつながり、将来の大震災から生命および財産を守る社会の持続的発展の実現に貢献することが期待されます。

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海底から浮上した地震計

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回収された海底地震計

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海底地震計のデータを回収する様子