RCAによる医療安全の体制強化と意識向上

2021年10月8日

2021年10月8日、プロジェクトでは医療安全の強化と病院スタッフ一人ひとりの意識向上を図ることを目的に、根本原因分析(RCA:Root-Cause-Analysis)手法を用いたインシデント対策ワークショップ(第2回目)を開催しました。

新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限が続く中、プロジェクトでは現場から上げられた「ヒヤリハット・インシデント報告」をもとに、オンライン形式で院内のリスク管理状況の把握に努め、管理体制への指導を行ってきました。継続的な指導の結果、インシデント報告と対策のための体制が整いつつありますが、今後さらにスタッフの意識向上を図るため、月に1回程度、RCAワークショップを実施していくこととしました。

RCAでは、発生頻度の高い事例や重要度の高い事例を取り上げ、インシデント発生に至る出来事の中で「なぜそうなったのか」という問いを重ねて根本的な要因を探り、対応策を検討します。今回のワークショップでは、「認知症を持つ入院患者の誤薬」に関するインシデント報告を事例として取り上げ、リスク管理部長とリスク管理マネージャーによるファシリテーションのもと、主治医、当直医、看護師3名、薬剤師、清掃係など事例に関わりのある多職種のスタッフが参加してディスカッションを行いました。

モンゴルでは、インシデントが発生した際に、問題の原因を作った当人を批難してしまう傾向があり、そのような意識を変えていくことが重要な課題です。第1回目のワークショップでは、参加者が多かったこともあり、互いを責め合うような議論の軌道修正を図ることが難しく、実践的な対応策を導くには至りませんでした。その後、進行の仕方やディスカッションへの介入方法についてファシリテーターと話し合いを重ね、また、参加者人数を絞るなどの工夫をして、今回のワークショップに臨みました。

ワークショップでは活発な議論が行われ、その結果、認知症患者への誤薬が生じた根本的な要因としては、担当医師間の申し送りが不十分であったこと、主治医が患者の情報を十分に把握していなかったこと、薬剤師が薬を一度に複数回分まとめて患者に配布したこと、看護師が薬をきちんと確認しなかったことなどが挙げられました。これらの要因に対して、今後とるべき対策としては、薬を1回分ずつ個装して配布すること、認知機能に問題を抱える患者については家族と密に連絡をとること、医師どうし・看護師どうしの情報共有を徹底することなど、より具体的な対応策が挙げられました。

患者に関わる様々な職種が、インシデントの責任を互いに押しつけ合うのではなく、互いの仕事を理解して、同じ事故を繰り返さないためのより良い方法を考えられるよう、RCAワークショップを通じて少しずつ意識改革を図っていきます。また、それにより、日本式の患者を中心とした医療が浸透していくものと信じています。

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看護・患者管理専門家による指導の様子

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ワークショップでのディスカッションの様子