フブスグル県病院で初めて指導医養成研修が実施されました

2023年5月19日

2023年5月17~19日、フブスグル県で初めての指導医養成研修(TOT研修)が実施されました。

このTOT研修は、現プロジェクトの前フェーズにおいて、日本の厚生労働省が主導して実施している臨床研修指導医講習会をモデルに、モンゴルに導入されたものです。保健大臣令によって、TOT研修の内容や参加できる医師の要件が定められており、現在は保健開発センターが研修の企画、運営を担当しています。またこの研修を指導するファシリテーターのグループが組織されており、研修内容をアップデートに合わせて勉強会を実施するなど、研修の質を維持するための取り組みも行われています。

今回のTOT研修は、2023年秋から総合診療研修を開始することを目指しているフブスグル県病院が、研修病院として国の承認を受けるために、大臣令で規定されている指導医を育成する必要があり、企画されました。

今回のTOT研修は、2つ点で重要な意味を持っています。ひとつは、地方の県病院で初めて実施されるTOT研修であるということ、もうひとつはプロジェクトのモデルサイトであるオルホン県地域診断治療センター(RDTC)からもファシリテーターと受講生が参加したことです。

これまでも、地方の比較的規模の大きいRDTCではTOT研修を実施してきました。しかし県病院レベルでは、研修を実施するキャパシティに限りがあるため、なかなか実行できていませんでした。そこで今回は、モンゴルにシャトル型チーフアドバイザーとして派遣されている井上医師が、日本国内からオンラインでフブスグル県病院のOyunjargal院長と面談し、またその面談に保健開発センターの担当者にも同席していただき、TOT研修を実施する必要性、また準備すべきこと等を説明しました。その結果、Oyunjargal院長から「ぜひ自分たちのところでTOT研修を実施したい」と強い意思表示があったため、開催に踏み切りました。

また、TOT研修を指導するファシリテーターは、指導経験の豊富なコアファシリテーターが3名ウランバートルから出張し、そこにオルホン県RDTC内におられるTOT研修のファシリテーター2名に加わっていただきました。また24名の参加枠のうち、9名はオルホン県RDTCに勤務する指導医候補に参加していただきました。これはすでに総合診療研修を開始している施設が、周辺県の総合診療研修の実施を支援する、つまりモンゴル国内で教え合うモデルを作る意図がありました。また研修中は、実際に研修医のためのカリキュラム作成や研修指導の練習をしますが、普段から総合診療研修で研修医に関わっているオルホン県RDTCのファシリテーターや参加者から、リアルな情報を共有してもらうことで、これから研修を開始するフブスグル県病院の参加者たちが、よりクリアに研修医育成に対するイメージを持つことができることも企図していました。

TOT研修の開会式には、Iderbayasgalan県知事やTuushinbayar保健局長がわざわざ挨拶に来てくださいました。冒頭での挨拶では、フブスグル県において総合診療研修を開始することに対し、県として期待していること、そして継続的に支援をすることが語られ、参加者たちの研修に対する意気込みも高まりました。

また研修中は両県の参加者が混ざり合い、共に「良い医師を育てる」という共通の目標のため、ときには激しく議論をしながら学びを深めていきました。研修の最終日には、両県からの参加者がお互いにたたえあい、今後も続けて交流を深めていくことを約束しておられ、あえて両県の合同開催にしたことが活かされたこと実感しました。

研修最後の振り返りのミーティングでは、「今回の研修を受けて、指導医の役割がよく理解できた」、「この研修を受けて、自分の考え方が大きく変わり、人を育てることにやりがいを感じるようになった」などの発言が参加者からありました。現在、モンゴルのすべての県病院で総合診療研修が実施することをモンゴル保健省は計画しています。今後は、さらにモンゴルの方々が主体的にTOT研修を必要とされる各地に展開できるよう、プロジェクトの立場での支援を継続したいと考えています。

モンゴル国 医師及び看護師の卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

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全体の集合写真

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Oyunjaral院長(中央ブルーの服)も受講生と共に積極的に研修に参加しておられました。

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オルホン県RDTCから参加したファシリテーターが研修の準備をしている様子。研修実施前の2日間、ベテランのファシリテーターから指導スキルのチェックを受け、練習を重ねたうえでTOT研修に臨んでいました。