プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)モンゴル学校給食導入支援プロジェクト
(英)Project for Supporting the Implementation of School Lunch Services

対象国名

モンゴル国

署名日(実施合意)

2021年6月30日

協力期間

2021年11月4日から2025年11月3日

相手国機関名

(和)モンゴル教育・科学省
(英)Ministry of Education and Science Mongolia

背景

モンゴル国(以下、「モンゴル」)は日本の約4倍にあたる156万平方キロメートルの国土に約329万人が暮らしており、そのうち学校に通っている未成年(0歳~18歳)は約123万人となっている。義務教育は中学校までの9年間であり、全国に778の公立の小中高一貫校(12年制学制(5・4・3))がある。モンゴルの子どもの栄養状況は、7.3%の初等教育課程の児童(6歳~11歳)が発育阻害、2.8%がやせ型と分類されている一方、22%は肥満とされ、低栄養・過栄養が混在した状況となっていることから、栄養バランスを確保した食事の提供が課題のひとつとなっている。モンゴル教育・科学省(以下、「教育省」)は、2006年度に軽食実施規則を策定し、同年9月より全小学校の生徒を対象に、学校軽食(パン、かゆ等)の提供を開始した。このうち、公立小学校については、2019年10月時点で、通常校で600MNT(約24円)/人/日(1日1食)、特別支援学校で2,500MNT(約100円)/人/日(1日3食)の予算措置がなされている。モンゴル国家監査室が調査した結果、軽食の提供により就学率の上昇や中途退学率の低下、学習意欲の改善といった正の効果が確認された。さらに教育省は、将来的に軽食から給食の提供へと移行することを見据え、2006年より全国にモデル校を4校設置し、順次、韓国国際協力団(KOICA)と韓国のNGOであるWITHの支援により給食施設や設備を整備するとともに、調理師等の人件費の予算措置を行う取り組みを進めた。その結果、モデル校では他校と比較して、1)身長・体重の増加、2)栄養バランスの重要性に関する認識の向上といった成果が確認された。これらの試行的取り組み結果を踏まえ、モンゴル政府は2019年5月に学校給食法を制定、2020年9月に施行した。学校給食法では、「全ての小学校に給食を提供するために、標準や技術規制に沿った施設、設備、人材を適切に整備・配置する」ことが定められており、同法の施行以降、段階的に全ての小学校の校内に給食施設を整備し、全児童に対して従来の軽食よりも栄養バランスの整った「給食」を提供し、その後2022年に中学校、2023年に高校での給食提供を予定している。

学校給食の提供を行うために、教育省が現行の軽食や寮の食堂での食事提供状況について調査を実施した結果、主な課題として以下の点が挙げられた。
・殆どの学校には調理場が無く、外部業者などに委託しており、児童生徒の健康的な成長より採算性を重視したメニューとなっているケースが多い。
・調理、保存、運搬などの過程における不適切な環境と食材の取扱いにより、異物が混入したケースがあった。
・衛生面の配慮がなされておらず、下痢を発症する児童生徒が多かった。

加えて、モンゴルでは生活習慣病の予防に対する意識が十分に浸透しておらず、栄養面においても塩分、油分が多い食事や、肉食が好まれており、生活習慣病に罹患する人が増加する一因と考えられている。そのため、幼少期からの食や栄養に関する意識改善や食育の必要性がモンゴルの教育関係者の中で強く認識されている。さらに、モンゴルでは季節的に供給が困難な葉物野菜やコールドチェーンが整備されていない乳製品について、特に地方部において季節的な供給の偏りが発生し、栄養バランスの取れたメニューの形成が困難な状況となっているまた、2020年度に実施された、「モンゴル国モンゴルの食育及び学校給食に係る情報収集・確認調査」の結果によると、モンゴルの学校給食制度導入上の課題として、1)全体の計画づくり・調整、2)安全で栄養価の高いメニューの提供、3)衛生管理・食中毒ヘの対処、4)食材の供給体制・調達方式の整備、5)調理場・資機材の整備、6)栄養士の育成と配置、7)調理員の確保、育成、及び8)食育の拡充が挙げられている。

このような背景のもと、教育省がJICAに対し、モンゴルの初中等学校で栄養バランスのとれた給食を安全に提供できる環境が整備を行うことを目的とし、1)栄養バランスのとれた給食を提供するために必要な人材育成・環境整備、2)ロジスティクスの改善を通じ、モンゴル全土の学校で給食提供を可能とするような体制整備、3)給食の提供を維持するために必要な行政機能強化、を行うための支援を要請した。モンゴル国の長期開発政策「長期ビジョン 2050」では、教育分野の目標として、「2.1.18健康的かつ安全な教育環境を整備すること」及び「2.1.19食堂を整備すること」を掲げている。これらを実現する給食の実施に向けて、教育省は上述のとおり「学校給食法」を制定し、給食提供ためのアクションプランを策定している。また、保健分野では、「2.2.25国民が、健康的なライフスタイルや規則正しい生活習慣を子どもの時から身に付けることを目的とする児童向け特別プログラムを実施する」としている。よって本事業はモンゴルの開発政策と合致している。本事業は対象地域において、入手可能な食材による栄養バランスのとれた給食を提供する環境整備、地域特性に基づく給食の提供体制の整備、安全で栄養バランスのとれた給食を提供する行政機能の強化を通じ、全国の初中等学校で安全で栄養バランスのとれた給食を提供する準備を整える。これにより、全国の小中学校で栄養バランスのとれた給食が増加することに寄与するものである。

目標

上位目標

モンゴルの初中等学校で安全で栄養バランスの取れた給食の提供が増加する。

プロジェクト目標

全国の初中等学校で安全で栄養バランスのとれた給食を提供する準備が整う。

成果

1.入手可能な食材に基づいた、栄養バランスのとれた給食を提供できる環境(人材育成、栄養摂取基準、献立等)が整備される。
2.地域特性に基づいた給食を提供するための体制が整備される。
3.安全で栄養バランスのとれた給食を提供するための行政機能が強化される。

活動

1-1.学校栄養士 養成短期コースの支援
1-1-1.現在実施が予定されている学校栄養士養成短期コース(学校医対象、食物分野の学士号取得者対象、その他学士号取得者対象)についての調査、分析を行う。
1-1-2.短期コースのカリキュラムの改善案を作成し、改善案を検証するためのパイロット研修をオンライン等で実施する。
1-1-3.1-1-2のパイロット研修結果をふまえて短期コース改善案を完成させ、MESの認証(大臣令等)を得る。
1-2食事状況調査をふまえた栄養摂取基準の作成と献立の改善
1-2-1.ウランバートル市およびパイロット地域において、児童の食事状況調査を実施する。
1-2-2.1-2-1の実施とともに、保健省、教育省、公衆衛生センター等が今後独自に食事状況調査を実施できるよう、能力強化を行う。
1-2-3.1-2-1の調査をふまえ、既存の児童の栄養摂取基準を分析し、改善案を提示する。
1-2-4.1-2-3の実施とともに、教育省、保健省等が今後独自に栄養摂取基準を改定できるよう、能力強化を行う。
1-2-5.1-2-3の栄養摂取基準の改善案に基づき、献立案を作成する。
1-2-6.1-2-5で作成した献立案に基づきパイロット地域で給食を提供し、教訓を得る。
1-2-7.1-2-1から1-2-6までの流れに基づき提供された給食献立を、栄養面から評価し、改善案を提示する。
1-2-8.1-2-7で確立した栄養摂取基準・献立を、GASIによる給食の検査項目に追加する。
1-2-9.児童・保護者への栄養に関する啓発活動を行う。

2-1.日本の給食食材調達方法について理解を深めるための研修を行う。
2-2.首都における給食食材の調達方法について評価、分析する。
2-3.2-2に基づき、改善案を提案する。
2-4.ドンドゴビ県、ウブルハンガイ県をパイロット地域とし、給食の調達方法を評価、分析する。
2-5.2-4に基づき、改善案を策定する。
2-6.パイロット地域にて改善案に基づいた食材の調達を実施し、教訓を得る(調達した食材をもとに1-2-6の活動を行う)。
2-7.パイロット地域で収穫できる野菜や果実等を使って給食の栄養バランスを補えるかどうか調査、分析する。
2-8.2-6の教訓をもとに、地方における食材の調達方法に関する改善案を提言する。

3-1.現行の学校給食法とアクションプランをレビューする。
3-2.行政機関関係者に対し、学校給食を提供するために必要な知識を伝える本邦研修を実施し、モンゴルで給食を提供するうえでの課題を抽出する。
3-3.成果1、2の活動をもとに、学校給食を提供する際の行政関係者、学校給食栄養管理を行う人材の役割分析を行う。
3-4.分析をもとに、学校給食を提供するための行政機関の実施体制案を作成する。
3-5.GASI作成の既存の衛生基準、1-2-3で改善した栄養摂取基準に基づく検査の実施、検査結果の分析及びフィードバック方法について、評価・改善する。
3-6.行政機関の実施体制、調達方式、衛生基準、栄養摂取基準、献立案、調理場整備その他必要な情報を含んだ「学校給食実施ガイドライン」案及びアクションプランの改善案を作成し、給食委員会の承認を得る。

投入

日本側投入

専門家派遣

1)チーフアドバイザー/行政能力強化、2)栄養摂取基準・献立作成支援、3)食材調達制度改善、4)人材育成/業務調整

国別研修

給食実施のための中央・地方行政制度、政策、学校給食における食材調達・契約方法、栄養接種基準の改定プロセス、日本の学校で働く管理栄養士の業務等

機材供与

プロジェクトサイトの初中等学校で必要な調理器具、等

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供