第8号「ブラジル第三国研修と本邦研修の実施」

2019年4月1日

本プロジェクトでは、保健医療人材養成の持続的なシステム構築に貢献するため、1:現職の医療従事者の研修システムの構築、2:母子保健看護師における現職研修システムの普及、3:保健医療人材養成のモニタリングシステム及び全国教育評価の構築と実施、という3つの分野における支援を行ってきました。

3分野への支援の一環として、協力機関であるブラジルのサンパウロ大学、ソフィアフェルドマン病院、日本の長崎大学病院などが中心となって研修を企画し、毎年第三国研修や本邦研修を実施しました。

サンパウロ大学では、大学病院を訪問して、病院内での現職研修の仕組みを学んだり、大学内の科学技術調査部門の協力を得て、保健医療人材養成に必要な視聴覚教材の作成について、更には、試験問題作成・実施・採点分析といった一連の活動プロセスの概念を確認するなど、評価に関する知識・技術を学びました。この研修はこれまでに4回実施され、保健省研修局職員12名が参加しました。帰国後はプロジェクト活動の各種マニュアル開発や規定づくり、教材作成などの中核人材として活躍し、現在は全国への制度施行・普及活動も行っています。

ソフィアフェルドマン病院は、帝王切開などの医療介入を極力避けるために女性の産む力,生まれてくる子供の力を活かす試みといった、いわゆる人間的出産を実施しているブラジルの代表的な病院であり、中南米・カリブ地域およびポルトガル語圏アフリカ諸国から「人間的出産・出生コース」の第三国研修の受け入れ実施をしています。このような実績のある病院の協力を得て、第三国研修プログラムを組み、保健省研修局、医療サービス局、公衆衛生局の職員、更に公立医療機関の母子保健看護師を派遣しました(計3回、全12名が参加)。こうした活動の結果、モザンビークにおける母子保健看護師の継続研修の研修プログラムの中に人間的分娩のためのケアと、自然分娩におけるリスク対策のための看護技術が組み込まれ、保健省内の各局が連携して技術の普及に努めており、より安全な分娩の実現と分娩時の死亡例の削減に寄与しています。

また長崎大学では、保健省研修局局長をはじめとした中央、地方の保健医療分野の現職研修における方針・戦略策定の責任者を対象として、日本の保健医療システムや現職研修制度の実施方法などに関する研修が全3回実施されました。研修を通じ、日本の体系的なシステムを学び、モザンビークにおける縦割り行政の弊害と各部署の連携の重要性を再認識し、公衆衛生・医療サービス部門と研修部門が一丸となって技術普及を行うシステムの構築とその普及・定着に貢献しています。

これらの研修を通じ、参加者の知識や技術の向上だけではなく、モザンビークでの研修では得ることのできない改善された医療現場やシステムを目の当たりにすることで、今後取り組んでいくべき課題を明確にし、中長期的な視野を身につけ、当地の保健分野を改善していく中核的人材になることも参加者には期待されてます。

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サンパウロ大学病院にて現職研修の計画・実施についての意見交換の様子(左からSevene, Fatima保健省研修局職員とKarina大学病院看護師)

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ソフィアフェルドマン病院にて、人間的ケアに関する意見交換の様子(Alia保健省公衆衛生局職員)

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長崎大学病院にて、臨床実習室での現職研修体験の様子(Paulino保健省研修局長などの研修員と大学病院看護師)