2021年12月20日
モザンビークベイラ市では、2019年3月のサイクロン・イダイが襲来した際に、住民は事前に避難せず、被害拡大の一因となりました。このため、本プロジェクトでは、ベイラ市役所、INGD(国家災害対策院)ソファラ州事務所、GREPOC(復興庁)、ソファラ州教育局が、避難計画ワーキンググループ(Working Group, 以下WG)を設立し、避難計画作成と体制づくりの協力をしています。
避難計画では、本プロジェクトで作成したハザードマップを参照し避難所の選定を行うとともに、サイクロンの上陸3日前から、行政や住民が取るべき行動について、「誰が」、「いつ」、「何を」実施すべきかを時間軸に沿って整理したタイムラインの策定を行い、サイクロンの上陸前(風雨が強くなる前)に十分な備えができるように、WGを中心に検討を進めてきました。
2021年6月以降は、ベイラ市内の3つの地区の地域防災協議会(CLGRD)と、それらの地区で避難所に指定されている、Macurungo小学校、Mateus Sansão Mutemba中学校、Inhamizua行政支所及びChingussura街区事務所(本プロジェクトで強靭化パイロットプロジェクトとして建物の改修を行っている建物)の避難所運営に係る関係者(学校協議会を含む)が、WGの働きかけによって、地域レベルの避難計画活動を実施するためのWGを立ち上げました。
地域レベルのWGの活動では、日本の知見がおおいに活用されました。特にWGの中心メンバーは2020年2月の第一回本邦研修において、常総市根新田町内会や葛飾区を訪問し、「マイ・タイムライン」の考え方や普及に向けた取組みを学びました。本プロジェクトにおける避難計画の検討では、WGメンバーが日本での学びを積極的に取り入れ、住民一人一人が災害を自分事として捉えて適切な避難行動を取れるようになるために、防災教育や避難訓練に取り組みました。
2021年10月22日及び29日にはMacrungo小学校において、地区防災協議会メンバー及び学校協議会メンバーに加えて、Macurungo小学校の生徒や地区内の住民が参加して、防災教育・公衆衛生教育、避難訓練を実施しました。
避難訓練では、上記の参加者に加えて警察や軍隊、赤十字の関係者も参加し、INGDの有する機材も使用して実際の状況を想定した訓練を行いました。また、要配慮者への対応の訓練のため、住民らが怪我人や妊婦役を演じ、住民の迫真の演技も手伝い臨場感のあふれる訓練となりました。
避難訓練はベイラ市行政庁(State Secretariat)の関係者や、INGDのソファラ州事務所の州代表(State Delegate)も同席の上で実施されました。INGDの州代表からは、「タイムラインを活用した避難訓練はモザンビークにとって、新しく、素晴らしいアイデアである。今までINGDが実施してきた訓練や能力強化の活動とも連動する形で活動を進めるべきである。」と、本プロジェクトによる取り組みの効果と、今後の普及に向けた活動の重要性についてのコメントがありました。
本プロジェクトでは、Macurungo地区及びMacurungo小学校において避難計画策定、防災教育・公衆衛生教育、避難訓練を含む取り組みを一通り実施し、活動のモデルを構築しました。今後、他の2つの地区での活動を実施しますが、それぞれの訓練のよる教訓を踏まえて継続的に改善し、現地に合った防災の取り組みとして自ら継続していけるように引き続き支援していきます。