ネパール2018年経済センサスの確報結果(第二報)が公表されました

2019年9月1日

ネパール2018年経済センサス 確報結果 National Report No.1~2の概要

ネパールでは史上初めてとなる、すべての事業所(注1)を調査対象(注2)とする2018年経済センサス(事業所の国勢調査)が、2018年4月14日を調査期日として実施されました。その後、14か月に及ぶ集計期間等を経て、2019年7月1日、確報結果の第一報が公表され、続いて、同年9月1日、第二報が公表されました。主な第二報結果は以下のとおりです。

(注1)ここでいう事業所とは、固定の場所で経済活動を営み、固定的な設備を所有しているところであり、国際標準産業分類第4版(ISIC)におけるEstablishmentの定義に準じています。ネパールでは、このISICに基づいたネパール標準産業分類(NSIC)が使用されています。
一方、広義の事業所には、Fixed(固定の事業所)及びMovable(移動可能であるが、固定の場所で営業している事業所)のほか、Mobile(移動しながら営業している事業所)も含めて3種類とする場合がありますが、この結果には、Fixed及びMovableのみが含まれており、固定的でないMobileは含まれていません。

(注2)ネパール2018年経済センサスでは、次の産業に属する事業所は、国際的な実例に基づき調査対象としていないため、結果には含まれていません。農林漁業(NSIC Section A)に属する事業所のうち公的な機関に登録されていない事業所、官公庁等(NSIC Section O)、個人のホームヘルパーなどの世帯活動(NSIC Section T)及び大使館や国際機関等の外国公務の施設(NSIC Section U)。

1.ネパールの事業所数は92万事業所

2018年4月14日現在におけるネパール全国の事業所数は92万事業所となっています。これを従業者規模別にみると、大規模事業所(注3)(従業者100人以上))は1787事業所で、全体の0.19%となっており、続いて、中規模事業所(注3)(従業者50~99人)が2258事業所(同0.24%)、小規模事業所(注3)(従業者10~49人)は3万8769事業所(同4.20%)、零細事業所(注3)(従業者1~9人)は88万542事業所(同95.36%)となっており、ほとんどが従業者9人以下の零細事業所であることがわかります。
これを日本と比較すると、日本の大規模事業所は、全体の1.15%(注4)となっており、続いて、中規模事業所が1.88%、小規模事業所が19.58%、零細事業所が76.85%となっている。このことから、ネパールの事業所の構造は、大規模及び中小規模の事業所、すなわち、従業者10人以上の事業所の割合が低いことがわかる。事業所の規模が大きいほど収益性も高いという「規模の経済性」という観点から言えば、ネパールの事業所の構造は、全体的には収益性の低い構造になっていることがわかります。

(注3)本稿では、大規模事業所を従業者100人以上、中規模事業所を従業者50~99人、小規模事業所を従業者10~49人、零細事業所を従業者1~9人としています。

(注4)本稿に掲載されている日本の数字は、すべて2016年経済センサス活動調査の全国結果です。

2.ネパールの大規模事業所数は1787事業所

大規模事業所数は1787事業所で、そこで働く従業者数は49万人となっています。従業者のうち、男性が31万人(63.8%)、女性が18万人(36.2%)と、男性の方が1.76倍多くなっていることが特徴と言えます。また、1大規模事業所当たりの従業者数は、275.7人となっています。
これを日本と比較すると、日本の大規模事業所数は6万1679事業所で、ネパールの約35倍、また、日本の従業者数は1612万人で、ネパールの約33倍となっています。このことから、最も収益性の高い大規模事業所は、ネパールでは、事業所数が極めて少なく、また、全体に占める割合も0.19%と、かなり低いことがわかります。

3.ネパールの中規模事業所数は2258事業所

中規模事業所数は2258事業所で、そこで働く従業者数は15万人となっています。従業者のうち、男性が9万6千人(64.1%)、女性が5万4千人(35.9%)と、男性の方が1.79倍多くなっていることが特徴と言えます。また、1中規模事業所当たりの従業者数は、66.4人となっています。
これを日本と比較すると、日本の中規模事業所数は10万428事業所で、ネパールの約44倍、また、日本の従業者数は686万人で、ネパールの約46倍となっています。このことから、比較的収益性の高い中規模事業所をみても、事業所数は極めて少なく、また、全体に占める割合も0.24%と、極めて低いことがわかります。さらに、日本との差は、大規模事業所よりも大きくなっています。

4.ネパールの小規模事業所数は3万8769事業所

小規模事業所数は3万8769事業所で、そこで働く従業者数は69万人となっています。従業者のうち、男性が44万人(63.2%)、女性が25万人(36.8%)と、男性の方が1.71倍多くなっていることが特徴と言えます。さらに、1小規模事業所当たりの従業者数は、17.8人となっています。
これを日本と比較すると、日本の小規模事業所数は105万事業所で、ネパールの約27倍、また、日本の従業者数は2043万人で、ネパールの約30倍となっています。このことから、ネパールの小規模事業所をみても、事業所数は、かなり少なく、また、全体に占める割合も4.20%と、かなり低いことがわかります。

上述2及び3から、産業及び生活の基盤であり、なおかつ、経済社会を支える存在であるべき中小規模事業所、すなわち、SME(Small and Medium Establishments)(注5)は、ネパールでは、事業所数が少なく、また、全体に占める割合も、かなり低いことがわかります。

(注5)SMEは、通常、Small and Medium Enterprisesであるが、ここでは、Establishmentsを代用しています。

5.ネパールの事業所の7割以上が、従業者数1人または2人

従業者が1人のみの事業所数は34万6千事業所で、全体の37.5%を占めており、また、従業者が2人の事業所数は32万8千事業所(同35.5%)となっています。したがって、従業者が2人以下の事業所のみで、67万4千事業所(同73.0%)と全体の4分の3近くに達しています。
これをカンボジアと比較すると、カンボジアでは、従業者が1人のみの事業所数は22万2千事業所(注6)で、全体の44.0%を占めており、また、従業者が2人の事業所数は17万6千事業所(同34.9%)となっています。したがって、従業者が2人以下の事業所のみで、39万8千事業所(同78.9%)と全体の8割近くに達しています。このことから、ネパールにおける従業者が2人以下の事業所が占める割合は、カンボジアよりも、5.9ポイントほど低いことがわかります。

(注6)本稿に掲載されているカンボジアの数字は、すべて2011年経済センサスの全国結果です。

6.大規模事業所の中では、製造業が最も多い

大規模事業所を産業別にみると、製造業(レンガ製造業等)が732事業所と最も多く、41.0%を占めています。次いで、教育業が266事業所(同14.9%)、健康・社会福祉事業(病院等)が191事業所(同10.7%)、金融・保険業が166事業所(同9.3%)となっています。

7.中規模事業所の中では、教育業が最も多い

中規模事業所を産業別にみると、教育業が845事業所と最も多く、37.4%を占めています。次いで、製造業(レンガ製造業等)が459事業所(同20.3%)、健康・社会福祉事業(病院等)が160事業所(同7.1%)となっています。

8.小規模事業所の中では、教育業が最も多い

小規模事業所を産業別にみると、教育業が15,414事業所と最も多く、39.8%を占めています。次いで、製造業(レンガ製造業等)が3,884事業所(同10.0%)、金融・保険業が3,631事業所(同9.4%)、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が3,275事業所(同8.4%)となっています。

9.従業者1人の事業所は、3分の2が非登録

公的な機関に登録している事業所を従業者規模別にみると、大規模事業所は97.5%(注7)が登録しており、続いて、中規模事業所が96.1%、小規模事業所が94.8%と、従業者10人以上の事業所は、ほとんどが登録をしています。一方、従業者が1人の事業所は33.0%と、登録は3分の1にも満たない状況で、また、従業者が2人の事業所も47.9%と、半数も満たしていません。このことから、従業者が2人以下の事業所において、登録している割合が、かなり低いことがわかります。

(注7)登録している割合の算出に当っては、分母から登録・非登録の状況が「不詳」の事業所を除いています。

2018年経済センサスの結果は、中央や地方政府における各種政策や計画の立案に利用されるほか、大学や研究所における学術研究、民間部門における経営戦略や市場調査等に利用されることが期待されています。
また、この結果の英語版は、次のネパール中央統計局(CBS)等のページから参照可能です。