活動状況報告(2021年9月)

2021年10月14日

ネパール国「教育の質の向上支援プロジェクト」(通称IMENプロジェクト)は、初等低学年児童の算数の基礎学力の向上を目指して、2019年から開始されました。新型コロナウイルス感染拡大の影響によりプロジェクト専門家がネパールに渡航できない状況が長く続いていましたが、2021年9月にようやく渡航が叶い、現在は、自宅用学習教材の開発や各種研修の準備等を行っています。以下に9月に実施した主な活動をご紹介します。

自宅用学習教材の開発・配布

ネパールでは、2020年3月から7月にかけてロックダウンが実施され、ロックダウンの解除後も各種行動規制が緩和されながら継続的に課される状況が続いています。学校も8~9か月もの間閉校となり、2020年の年末に一端再開されたものの、2021年4月の感染再拡大により再度閉校を余儀なくされました。
学校閉鎖が長期化する中、プロジェクトがパイロット活動を行う4つのLocal Government(LG)内でヒアリングを実施したところ、教員が独自に自主学習教材を開発して児童に配布している学校がわずかに存在している一方、多くの学校では主に予算不足が原因でそうした教材を児童に提供することができていない状況であることが分かりました。
このような状況を受けて、ネパール側とも協議した結果、プロジェクトは、子どもたちが自宅でも算数の学びを継続することが出来るよう、小学1~3年生向けの自宅用学習教材を開発し、パイロットLG内の全ての小学1~3年生(約7,600人)に配布することを新たに決めました。これらの教材は、これまでプロジェクトの支援を受けつつ、カウンターパート機関であるカリキュラム開発センターが開発してきた算数のワークブックに準拠した内容となっています。一刻も早く、子どもたちに教材が配布できるよう、急ピッチで開発を進め、現在は印刷・配布を行っているところです。

2021年9月現在、4つのパイロットLGでは、対面授業がようやく再開されつつありますが、本教材は学校の再開後の自習や宿題用としても使用できるように開発したため、学校再開後も教材を活用してもらえるよう、メディアを通じた発信やLGへの働きかけ等を通して促していきます。本教材には保護者や教員が使用するフィードバックシートも含まれており、これらのやり取りを通して、これまでネパールではなかなか難しかった、保護者と教員間のコミュニケーションが活発になることも期待されます。
また、今後の感染状況は見通せず、いつまた閉校になるかは予想がつかない状況であるため、今後再度閉校せざるを得なくなった場合にも本教材は活用できると考えています。

【画像】

自宅学習用教材(小学1年生用)のページ

算数教育啓発プリントの配布

プロジェクトでは、児童や保護者がより算数に興味をもてるよう、パイロットLG内の小学1~3年生の児童とその保護者に定期的にプリントを配布することを決め、これまでコンテンツの開発を進めてきました。プリントには、算数の概念・考え方に関する解説、算数トリビア、算数クイズ、保護者への啓発メッセージ(家庭学習の重要性、子どものやる気の伸ばし方、など)等が掲載されます。
この算数教育啓発プリントの初回版は、上記自宅学習用教材の配布に合わせて配布される予定です。

【画像】児童・保護者向け定期配布物のサンプル

MEP(Municipality Education plan)研修の実施

2021年9月上旬、プロジェクトではMEP策定に必要な基本的な知識と技術を、LG の教育担当者が身に付けることを目的として、5日間のオンライン研修を実施しました。研修には対象郡内の各LGから3名ずつ、計111名が参加し、教育計画の理論的枠組みや教育計画策定プロセス等を学びました。
本研修では、Zoomのブレイクアウト機能を活用し、グループワークを多く取り入れ、MEPのサンプル案を作成する際には同じLGからの参加者が、ディスカッションや共同作業ができるように工夫しました。参加者からは、本研修で計画策定の全体を網羅的に学ぶことができた等、研修が役立ったという評価を得ました。

【画像】研修の様子

対面研修への制限や遠隔での業務等、コロナ下ならではの難しさもありますが、プロジェクトでは今後も出来得る限りの対策を立てつつ、支援を続けていきます。

文責:大津璃紗(株式会社パデコ)