プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)家庭・地域保健モデル強化を通じたプライマリーヘルスケアの改善プロジェクト
(英)Project for Improving Primary Health Care through Strengthening Family and Community Health Model(MOSAFC)
(西)Proyecto de Mejoramiento de la Atención Primaria de Salud Mediante el Fortalecimiento del Modelo de Salud Familiar y Comunitario(MOSAFC)

対象国名

ニカラグア共和国

署名日(実施合意)

2020年12月11日

プロジェクトサイト

マナグア市、マサヤ保健管区、カラソ保健管区、チョンタレス保健管区、セラヤ・セントラル保健管区、グラナダ保健管区及びリバス保健管区(El Sistema Local de Atención Integral en Salud:SILAIS)

協力期間

2020年12月11日から2025年5月10日

相手国機関名

保健省保健サービス総局(DGSS)

背景

ニカラグア政府は「国家人間開発プログラム(2018-21)」において、貧困と不平等の削減戦略の下、保健サービスの拡大とサービスの質の向上を目指している。同国の母子保健に関する指標は、妊産婦死亡率は出生10万対162(2000)から98(2017)、5歳未満児死亡率は出生1000対38.5(2000)から16(2020)と改善しており、持続可能な開発目標(SDGs)の2030年までのターゲット指標(妊産婦死亡率:出生10万対150以下、5歳未満児死亡率:出生1000対17.2以下)を達成している。しかし同国の母子保健指標の改善は農村部では遅れており、国内格差に課題が残る。

加えて、平均寿命の延伸、食習慣や生活様式の変化に伴い、がんや心血管疾患といった非感染性疾患(NCDs)が全死因の76%を占めている。NCDsは保健財政への負荷が大きく、NCDsの予防や早期発見・治療につながる取組の強化が急務であるが、公的医療サービスにおけるこれらの取組は十分に整備されておらず、医療技術者の技術や知識も不足している。そのため、効果的な保健医療サービスが住民に行き届かず、治療可能なNCDsを悪化させている。

また中南米地域の各国では2005年の「モンテビデオ宣言」以降、汎アメリカ保健機関(PAHO)主導の下で、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)を基盤とする保健システム強化が推進されている。ニカラグア政府は、2007年にPHCの基礎となる地域保健サービスモデル「家庭・地域保健モデル(Modelo de Salud Familiar y Comunitario:MOSAFC)」を導入した。MOSAFCは医療サービスが十分に行き届かない地域において、地域の医療関係者をネットワーク化し、住民のニーズの把握や保健サービスへの改善を図る地域保健モデルである。しかしながら、MOSAFCは実践に必要な体系化されたモニタリングや指導の手法が確立していなかったため、JICAは技術協力「チョンタレス保健管区とセラヤ・セントラル保健管区における母と子どもの健康プロジェクト(SAMANI)」を通じ、母子保健にかかる、MOSAFCの体系的な運営・指導手法/体制を「MOSAFC強化手法(母子保健)」として実証・確立した。

本事業は同国のPHCの基盤強化を目的として、SAMANIで実証されたMOSAFC強化手法の全国普及、及びこれまでの母子保健、感染症に特化していた地域保健サービスから、NCDsを含むより幅広い保健課題に対応する地域保健サービスへ拡大するための支援である。こうした地域保健サービスの多様な保健課題への実践を伴う拡大は中南米地域においても先駆的な取り組みであり、本事業による協力成果が、将来的に中南米地域のPHCの発展的モデルとなることが期待される。

本事業は対ニカラグア国国別開発協力方針(2019年9月)における援助重点分野「社会サービスの普及・強化」に対応する協力プログラム「社会サービス強化」に位置付けられている。また対ニカラグア国JICA国別分析ペーパー(2016年3月)における主要課題「地域保健対策の推進」に位置付けられ、JICA世界保健医療イニシアティブや保健医療分野の課題別事業戦略(グローバルアジェンダ)が目指すUHCの達成に向けた取組に合致しており、特に「医療保障制度の強化」クラスターに関し、保健財政面へ影響を与えるNCD対策に取り組む観点で合致している。さらに本事業は、SDGsの達成に向けて、ニカラグアの人々の健康状態が改善することを目標として実施されるため、ゴール3「健康な生活の確保、万人の福祉の促進」への貢献が期待される。

目標

上位目標

家庭・地域保健モデル(MOSAFC)強化手法が普及された地域において、PHCサービス利用者の健康状態が改善する。

プロジェクト目標

対象地域において家庭・地域保健モデル(MOSAFC)が強化されPHCサービス利用が向上する。

成果

1.DGSSのMOSAFC強化手法の実践に必要な能力が強化される。
2.SILAISチョンタレスおよびSILAISセラヤ・セントラルにおいて、MOSAFC強化手法(NCDs)の試行を通じて、高血圧と糖尿病の保健サービスが向上する。
3.DGSSによるMOSAFC強化手法及びモニタリング・運営指導がパイロットSILAISに拡大される。
4.優良事例や教訓の他地域への共有を通じて、MOSAFC強化手法の全国普及への準備が進められる。

活動

成果1関連

1-1.DGSSが、関連省令や既存の研修教材のレビュー、およびMOSAFC運営指導の現状確認を行う。
1-2.DGSSが、SAMANIで作成されたMOSAFC強化手法(母子保健)の教材・手法を標準化する。
1-3.DGSSが、パイロットSILAISにおいて、MOSAFC強化手法(母子保健)を実施する。

成果2関連

2-1.SILAISチョンタレス、SILAISセラヤ・セントラルにおいて、MOSAFCで取組むNCDsテーマ(糖尿病、高血圧、過栄養など)を選定する。
2-2.SILAISチョンタレス、SILAISセラヤ・セントラルでの高血圧と糖尿病の保健サービス提供における課題や研修のニーズに基づき、MOSAFCが取り組む保健サービスの活動内容を策定する。
2-3.高血圧と糖尿病の保健サービス提供・強化に係るガイドラインや研修教材を整備・作成する。
2-4.高血圧と糖尿病の保健サービス提供の進捗を測るモニタリング指標を設定する。
2-5.SILAISチョンタレス、SILAISセラヤ・セントラルの1次レベルの保健医療施設において、MOSAFC強化手法(NCDs)を試行する。
2-6.DGSSがモニタリング指標を使用して、評価・運営指導を行う。
2-7.MOSAFC強化手法(NCDs)による保健サービス内容を見直し、普及のためのガイドラインや研修教材の標準化案を提案する。

成果3関連

3-1.DGSSがMOSAFC強化手法を指導・実施するパイロットSILAISを決定する。
3-2.パイロットSILAISに対し、DGSSがMOSAFC強化手法を指導する。
3-3.DGSSおよびパイロットSILAISがモニタリング・運営指導計画をそれぞれ策定し実施する。

成果4関連

4-1.優良事例や教訓の抽出や分析のために、ベースライン(・ミッドライン)・エンドライン調査を実施し、結果を取り纏める。
4-2.DGSSがプロジェクトの優良事例や教訓を他のSILAISへ共有することを目的とした研修・セミナーを行う。
4-3.DGSSがMOSAFC強化手法の全国普及計画案を策定し、実施する。

投入

日本側投入

専門家派遣

総括/地域保健、副総括/地域保健、NCDs対策/母子保健、研修管理/業務調整、保健政策、ローカルコンサルタント3名

プロジェクト活動費

研修、ワークショップ、ツール開発、その他活動費

本邦研修/第三国研修、現地国内研修

資機材供与

新型コロナウイルス感染症対策資機材、母子保健と非感染性疾患対策のPHC活動に不可欠な資機材

相手国側投入

カウンターパートの配置

プロジェクト・ディレクター:保健大臣、プロジェクト・マネージャー:DGSS長、プロジェクト・コア・メンバー:DGSSのMOSAFC課長・病院課長・看護課長、SILAISマサヤ長、SILAISカラソ長、SILAISチョンタレス長、SILAISセラヤ・セントラル長、SILAISグラナダ長、SILAISリバス長

DGSS、SILAIS(チョンタレス・カラソ)の執務スペースと必要な資機材

プロジェクト活動費

プロジェクト実施に必要な運営費、出張旅費等